公的年金はいくらもらえるものなのか?
公的年金は、老後の生活資金の原資としてはどうやら不安視されているようだが、ではいったいいくらもらえるものなのか、ご自身で把握しているだろうか?多くの方が意外と無頓着という印象がある。
厚労省は、40年間、平均的な会社勤めの夫と専業主婦の妻というモデル世帯の公的年金月額は約23万円と試算している。この試算はあくまでも参考データとして捉えて欲しい。ここで大切なのは「自分はいつから、いくらもらえるのか?」を把握することだ。当然、公的年金の受取額は、国民年金の保険料納付済月数、厚生年金の勤続期間、及び現役時代の給与により異なってくる。
ご自身の予想年金額を調べるには、日本年金機構から毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を参考にする方法がある。また年金事務所に直接に問い合わせすることでも可能だ。是非、この機会に確認していただきたい。
年金以外の収入源として給与はあてになる?
「生命保険文化センター」の調査によると、「ゆとりある生活資金」の希望平均額は約35.4万円。前述の厚労省のモデル世帯の年金受取月額23万円でみた場合、公的年金だけでは「ゆとりある生活」のためには毎月約12.4万円の不足額が発生することになる。
では、ご自身について考えてみよう。仮に不足額があると想定される場合、不足分を賄うために退職後も働き、給与収入を確保することは有力な手段だ。ただ、マイナスな発想で申し訳ないが、60歳以降も気力・体力が十分で元気に働くことが出来ればよいが、そうであるとも限らない。期待しただけの給与収入を得られない可能性もある。
退職後も働くことが出来ればなんとかなるという考えは、リスクを伴うということだ。
今のうちからできる老後資金準備方法
安心して老後を迎えるために、今からできることはいくらでもある。老後のために備える方法を紹介しよう。
・まずは退職金・企業年金を確認
退職金・企業年金についても多くの方が意外と無頓着という印象だ。筆者のFP相談の現場でも「ところで退職金は?」と質問することはたびたびあるが、たいてい「あるとは思うのですが、よく知りません」という反応が返ってくる。しかし、改めて勤務先の退職金制度を調べてみるとトータルで1000万円〜3000万円以上の額が見込めそうなケースが少なくない。
仮に、前述の「ゆとり生活」のための不足月額12.4万円以上の退職金が年金で受け取れるとなれば、退職後の働き方も違ってくるはずだ。退職金額の確認は、会社担当者への問い合わせや、給与明細等を確認することでおおよその金額を把握することができる。こちらもこの機会に是非確認していただきたい。
・確定拠出年金を活用した長期投資
生涯収入は、勤め先により差はあるが2億円とも3億円とも言われている。仮に、生涯年収2億円の場合、収入の1割(月約4万円)を貯蓄できると単純に2000万円の資金を残すことができる。さらにこの2000万円を40年間3.2%で積立運用ができた場合、約4000万円に殖やすことができる。
前述の「ゆとり生活」のために毎月12.4万円が不足すると仮定すると、60歳〜99歳までの40年間のトータル不足額は5952万円となる。この仮定だと5952万円を公的年金以外の何かしらの手段で賄わないといけない訳だが、上記のようにコツコツ、早い段階から意識的に積立投資を行うことで、退職後の生活資金不足額をカバーすることも、そう難しいことではないと感じてはこないだろうか?
コツコツと積み立てる長期投資の受け皿としてお勧めするのが「確定拠出年金」だ。確定拠出年金は積立時、運用時、受取時にいわば三重の優遇税制が受けられる。しかも原則60歳まで引き出せないため、将来へ向けて生活資金の原資をコツコツと強制的に長期運用し続けられる仕組みになっている。老後資金を準備するのに最適な制度であり、活用しない手はないだろう。
最後に、「本当に老後も働き続けなければ生活できないのだろうか?」の答えだが、退職後の希望生活資金、公的年金額、退職金等を確認しなければ出てこないということになる。答えが出ると、今から準備しなければならないことが見え、老後の働き方の選択肢も広がるはずだ。
寺野 裕子 てらの・ファイナンシャルプランニングオフィス代表 CFP ・1級FP技能士、投資助言業
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料等は一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。
FP Cafe
登録FP。
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