12月米雇用統計
(写真=Thinkstock/Getty Images)

1月8日午後10時30分に注目の米雇用統計が発表される。米雇用統計は米景気の先行きを占う試金石であり、米金融政策にも大きな影響を与えることから世界で最も注目されている経済指標の一つである。ここでは、これまでの結果や事前予想を踏まえて、マーケットの反応や金融政策への影響、景気の先行きなどを念頭にポイントを確認する。

雇用者数は20.0万人増の見込み

まず、マーケットの関心が最も高い雇用者数の事前予想をみると、12月は20.0万人増が見込まれている。前月の21.1万人増、前々月の29.8万人増と比べるとやや弱い数字にもみえるが、1-11月の平均値は21.0万人増となっており、低いわけではない。

発表される数字はあまり正確とは言い難い。雇用統計は原則として毎月第1金曜日に前月分のデータが発表され、速報性が高い一方で、翌月以降に大幅に改定されることも少なくない。また、推計誤差も大きい。米労働省によると、雇用者数の推計誤差は10万人としおり、事前予想が20万人増だった場合には、10万人増から30万人増までは誤差の範囲となる。ただし、実際のマーケットでは予想からのかい離が5万人程度でも好感や失望の対象となる。

一般に予想を上回れば株高、下回れば株安となり、水準自体はあまり問題視されない。今回は、雇用者数が利上げスピードのバロメータとなっており、堅調な数字が出た場合には、利上げペースが早まるとの見方から、マーケットにはネガティブな材料となりそうだ。ただし、年初からの株価急落の流れを重視するなら、よい数字は買い戻しの口実として、渡りに船とも言える。

FRBの注目は単位時間当たり賃金

現在、米連邦準備理事会(FRB)が最も懸念しているのはインフレ率の低さである。昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録によると、利上げは全会一致で支持されたものの、「インフレをめぐる不透明感が強いことから、利上げはぎりぎりの選択だった」としている。また、「エネルギー価格の低迷が長期化すれば、インフレ見通しに対する重大な下振れリスクにつながる」とも述べている。

イエレンFRB議長はインフレ率の低迷にもかかわらず、将来的に物価が上昇すると見方を崩していない。この背景にあるのが、賃金の伸びである。11月の賃金の伸びは前年同月比で2.3%上昇、10月の2.5%上昇からは減速したものの、物価を上回る伸びを維持している。賃金が上がれば、景気もよくなり、物価も上がるというシンプルな考え方である。

しかし、賃金の上昇は雇用の抑制要因にもなりうる。賃金の上昇より生産性の上昇が速ければ問題はないかもしれないが、7-9月期の米労働生産性は前年同期比0.6%上昇と低調だ。また、7-9月期の米企業利益は前年同期比で8.2%減少しており、ドル高とともに賃金の上昇が企業利益を圧迫している。こうした状況を踏まえると、賃金の上昇がFRBの描く未来を保証するとは限らない。賃金の伸びが加速した場合、利上げ観測を後押しするほか、企業利益への懸念もあり、株価にとってはネガティブだ。

一方、賃金の伸びが減速すれば、利上げペースの鈍化と企業収益の改善が期待できそうだ。FRBは賃金の上昇に期待を寄せているが、株式市場にはありがた迷惑でしかなさそうである。

実態は数字ほどよくない?

堅調な雇用を背景として利上げが実施されたが、実態は数字ほどよくないとの指摘もある。雇用者数は給与の支払数と一致しており、複数の企業から給与を受け取った場合、重複してカウントされる。複数の仕事に就いている労働者数は、昨年5月から10月までで約50万人増加したが、これはこの間の増加した雇用者数、約100万人の半分にあたる。

米雇用統計では、週35時間以上働くとフルタイム、35時間未満だとパートタイムに分類される。8月から11月までの3カ月間でフルタイムは3千人しか増えていないが、パートタイマーは40.4万人も増えている。

学歴別の失業率をみると、11月は高卒未満が6.9%と9月の7.9%から2カ月連続で劇的に低下している。一方、高卒は5.4%と10月から0.2%ポイント上昇、短大・専門学校卒は4.4%と9月の4.3%から上昇、大卒は8月から2.5%で横ばいとなっている。雇用が改善しているのは高卒未満のみで、そのしわ寄せで高卒・短大・専門学校卒が悪化しており、専門性の低い低賃金労働以外では、働き先を見つけづらいことを示唆している。

こうした状況は、雇用情勢のピークアウトを示唆している可能性があり、最新情報での確認が必要だ。

弱い内容となれば、利下げも視野に

世界銀行が1月6日に公表した最新の世界経済見通しによると、2016年の世界経済の成長率は2.9%となり、前回6月の見通しから0.4ポイント引き下げられた。FRBは、2016年の米成長率を2.4%とし、昨年の2.1%から成長の加速を見込んでいるが、世界経済は全体的に失速しており、資源国・新興国での景気低迷が米景気の足かせとなることへの懸念が強まっている。

2016年は年明け早々から、世界同時株安となり、ウォール街では利上げを即刻停止して利下げに転じるべきとの声も挙がっている。雇用者数はGDPとの連動性も比較的高く、予想外に低い数字となった場合には利上げペースの見通しが大きく鈍化するのみならず、利下げも視野に入ってくるのではなかろうか。(ZUU online 編集部)

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