ジャンボ宝くじ、ロト、ナンバーズ……よくもまあこれだけ「宝くじ」が売れているものだと感心する。実は「宝くじ」と「投資」には意外な共通点があるのをご存知だろうか。投資家が陥る心理的ワナに迫る。

宝くじは買えば買うほど貧乏になる

宝くじの高額当選のニュースを聞くにつけ、「いつかは自分も」と思う人がいるのは当然だ。しかし、冷静に宝くじの仕組みを見ると、宝くじを買えば買うほど貧乏になるシステムであることが見えてくる。

2013年の宝くじの販売実績は9444億円。このうち当選金として当選者に支払われるのはわずか46.5%。40.3%は公益のためという大義名分で、中央官庁の官僚の天下り先に分配され、彼らの腹を肥やしている。公営ギャンブルと言われる競馬でさえ、競馬法により配当率は100分の70以上と定められているというのに。

いかに宝くじが「ぼったくり商法」であるか理解頂けると思うが、この「ぼったくり商法」と投資には意外な共通点があるのだ。

損失を膨らませる「サンクコストの呪縛効果」

宝くじも投資も大多数の人は「合理的で効率的な投資行動」という冷静さを見失っている。それは認知バイアスが働いているからだ。

投資のきっかけとして「感情バイアス」が働く。これは宝くじの購入動機と同じだ。人は不快な現実を受け入れたくない感情に傾く。「どうせ宝くじなんて当たらない……でも、ひょっとすると自分だけには高額当選があたるかも知れない」という心理状態になる。

投資も同じだ。マネー雑誌の成功談や書店に並ぶ投資関係の書籍を見て「ひょっとすると自分も投資で大成功するかも知れない」と、何の根拠も無い夢を抱くのだ。

そして成果が出なければ、「サンクコストの呪縛効果」に囚われる。サンクコストとは埋没費用のことだ。今まで継続して買い続けてきた宝くじを買うのをやめてしまえば、今までの苦労は無駄になる。冷静に考えれば宝くじを買えば買うほど当選の確率が高くなることは誤りであることに気付くはずだ。投資においては、これまでの投資額をムダにしたくないという想いから無駄な「ナンピン買い」を繰り返す投資家がいる。これが、損失を膨らませることになるのだ。

あなたは「鍋の中のカエル」になっていないか?

2003年2月、韓国で地下鉄放火事件が発生した。この時、煙が充満しつつある地下鉄車内で乗客が座席に座ったまま押し黙っている写真が公開された。「彼らはなぜ逃げようとしないのか?」と多くの人は不思議に思った。こうした乗客の行動は「集団同調性バイアス」と「正常性バイアス」に支配されていたと考えられる。

人はどうして良いのか分からないときには、周囲の人の動きを探りながら同じ行動を取ることが安全と考える。人は常に小さな出来事一つ一つに反応していれば心の平穏が保てないので、些末なことで自分に直接影響のないことは、正常の範囲と自動認識する仕組みがあるとされている。水を張った鍋にカエルを入れてゆっくり加熱していく例えがしばしば用いられる。リスクが徐々に高まっているのに「まだ大丈夫」と思っているうちに身動きが取れなくなってしまうのだ。

金融機関の投資信託の販売においても、同様の現象が認められる。「インフレで資産が目減りするのを防ぐために運用が必要です」金融機関の投資に関するパンフレットの多くにはそんな文言が記載されている。実際にこのような文言のパンフレットや銀行員の説明を聞いたことがある人も少なくないだろう。安倍政権、アベノミクスにより、我々の目はインフレにばかり向かいがちだ。

しかし、冷静に考えて欲しい。今後インフレが進むと言い切れるのだろうか。そんな保証はどこにもないはずだ。むしろ足もとでは再びデフレのリスクが高まっているではないか。それを無視してインフレへの備えを声高に叫ぶことに私は違和感を通り越し、滑稽さを感じる。「インフレに備えるために運用が必要です」というのは、船が沈没しかけているにもかかわらず、「この船(金融商品)は安全ですから今いる場所から動かないでください」と言われているようなものだ。

極めつけが「多くの人がこの商品を選んでいますよ」という金融機関の殺し文句だ。つまり「集団同調性バイアス」である。金融機関のホームページにもご丁寧に「売れ筋の投資信託」が掲げられている。

実は銀行員も「ワナ」にはまっている

私の経験上、窓口の担当者や支店長レベルであってもこうした心理的な作戦を利用して販売につなげようと思っている悪人はいないと信じている。むしろ彼ら自身がワナに嵌まっている。しかし、そのことに気付いていない。運用会社が作成した見栄えの良いパンフレットに書かれた「インフレへの備え」という呪文を彼ら自身が信じ切って、お客様に熱心に説明している。

中東情勢が緊迫しているにもかかわらず原油価格は下落し続けている。米国が利上げしたにもかかわらずドル高は進まない。金利は上昇するどころか、その気配すらない。それでもインフレへの備えを説く彼らのセールストークはもはや滑稽でもある。船は沈没しつつあるのに、この船は絶対に沈まないと我々は思い込まされているのかも知れない。(或る銀行員)

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