スタートアップ投資への危険が指摘され始めている2016年。「ユニコーン」と言われるほどの巨額で評価され、将来的な潜在価値を見込まれる一方で、巨大な金額で評価や相次ぐテクノロジーベンチャーへの投資の実施などに対して、警鐘を鳴らす向きもある。

その中でも、ベンチャーキャピタル(VC)はまだまだテクノロジー分野に熱い視線を送っており、めぼしい投資先はないか探している様子だ。年初にも、ベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)が、2016年にはさらに、新ファンドを立ち上げ、投資をさらに促進する姿勢を明確化。「6テック」に資金を投入する見込みで、テクノロジー分野はしばらくは引き続き、投資対象として注目を集めそうだ。

グロービスVCも有望視する「6テック」とは?

2016年1月4日、はGCP新ファンド「グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合(グロービス5号ファンド)」を組成し、注目の投資対象として6つのテクノロジー分野を挙げたとされる。それが「6テック」だ。いずれも先端的なテクノロジー分野となってはいるが、まずはその中身を見てみよう。

昨年も大きく取り上げられた「フィンテック」。金融分野でITを活用し、革新的なサービスの提供を期待する向きも一部にあり、「6 テック」の筆頭分野だ。GCPはすでに、オンライン資産運用サービスを提供する「お金のデザイン」への第三者割当増資の引受先にもなっており、実績からも積極的に取り組む姿勢が窺える。メガバンクなど大手金融機関や、多くのベンチャーキャピタルも継続して取り組む姿勢を示している分野だけに、引き続き活況を呈しそうな投資対象でもある。

また、医療・医薬、健康分野でITを生かす「ヘルスケアテック」や、ITで教育の効率化などを図る「エデュテック」、より住みやすい環境の実現にITを生かす「ホームテック」も注目のテクノロジー分野として挙げられている。スマホでさまざまな家電を操作できるスマートホームの実現なども同分野に含まれるとみられ、大きく伸びる可能性を見出す向きもある。

ほかにも注目されているのが「オートテック」という自動車におけるITの活用だ。トヨタ <7203> だけではなく、日産 <7201> 、ホンダ <7267> など、大手自動車メーカーがこぞって取り組む自動運転技術の実現に向けても、ITが大きな力を発揮するとみられている。走行中に車両の周辺をカメラで撮影して、動画や画像から歩行者、走行レーンを検出したり、その状況に応じてブレーキをかけるなど運転支援に生かされはじめており、今や不可欠の存在。

これらにフロンティアテックと呼ばれる、新領域を加えたものが「6テック」となっており、GCPはほかにも、シェアリングエコノミー、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)を主要な投資先とするのではないかとみられている。

「FinTech」では、開発競争が激化

ただ、全ての「6テック」で成功が約束されているというわけでもなさそうだ。特に、「次の大きなイノベーション」だと目されているフィンテックでは、国内か海外かを問わずさまざまなスタートアップが入り乱れているほか、メガバンクも開発への取り組みを強化しており、油断できそうにはない。

例えば、フィンテック投資を前面に打ち出したメガバンクが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) <8306> だ。同分野の開拓を担う組織としてデジタルイノベーション推進部を立ち上げ、スタートアップの支援を図る「三菱東京UFJ銀行 Fintech Challenge 2015」や「MUFG Fintech アクセラレータ」も開催。GCPとしてもフィンテック分野への投資を拡大するとなれば、協調するのか、対立するのか、それとも新たな金融サービスのエコシステムの構築を想定するのか、新たな対応を迫られる可能性もある。

ほかにも、見逃せない動きがある。みずほフィナンシャルグループ(FG) <8411> もインキュベーション・プロジェクトチームを発足させ、革新的なサービスを作りだす橋渡し役を期待している。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG) <8316> も、2015年10月、驚くべき金融プロダクトを作り、新しい価値を提供することを目的として、ITイノベーション推進部を発足させており、同分野での開発競争もさらに激化しそうだ。

「金融×IT」のフィンテックに触発されて、他のテクノロジー分野でも投資や開発の競争も動き出すとみられており、「6テック」にとっても2016年は節目の年となりそうだ。(ZUU online 編集部)

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