スタバで「デカフェでお願いします」と頼むと何が出てくるか知っていますか?

正解はカフェインレスコーヒーが出てきます。メニューにはありませんが「デ」は取り除くという意味で、「デ(取り除く)」+「カフェイン」=「デカフェ」というわけです。

実は最近、カフェインの摂り過ぎが問題になっていて、自分でカフェイン摂取量を気にしている人たちも少なくありません。今回はカフェインについて話しをしましょう。

想像よりもずっと怖いカフェインの過剰摂取

カフェインといえば、お茶やコーヒー、エナジードリンクに含まれていて「集中力を高め作業能力を向上させる(眠気が飛ぶ)」効果があることはよく知られています。それ以外にも 「自律神経の働きを高める」 「運動能力を向上させる」といった効果もあります。

そんなカフェインですが、摂りすぎると「興奮作用による睡眠の質の低下(眠れない)」、「胃酸分泌過剰による胃への負担増」「カフェインを摂取しない場合の頭痛や疲れ」、長期的には「カルシウムの排出による骨の健康の悪化」「鉄分吸収阻害による貧血の進行」といったリスクがあるとも言われています。メリットとリスクについては諸説ありでまだまだ論議の最中とのことですが、カフェイン=体に良いだけど、カフェインの摂り過ぎ=体に悪い、というのが一般の図式です。

カフェイン中毒は社会問題にまで発展しています。2015年12月に福岡大が20代男性の死亡原因をカフェイン中毒死とする発表をしました。過去にはエナジードリンクの過剰摂取によるカフェイン中毒の事件もありました。

私たちが良く飲むお茶やコーヒー、エナジードリンクに含まれているカフェインですが、日常的にカフェインを摂取できる様になると、そのメリットだけでなくリスクにも注目が集まってきたというわけです。

カフェイン先進国の北米では今、飲み物を通じた摂取に飽き足らず、純粋カフェイン粉末を摂取する消費者の死亡事故まで起きています。恐いのはネット上では簡単にカフェイン粉末を購入することができるため、例えば、普段飲んでいるコーヒーにスプーン一杯入れるといったやり方ができてしまうため、急速なカフェイン中毒になりやすいのです。米食品医薬品局(FDA)は警告を出しているものの問題はさらに広がるとみられています。

そもそも1日に摂っていいカフェイン摂取量は?

1日に摂っていいカフェイン摂取量はどの位だと思いますか? それは大人で400mg程度。そこで実際コンビニで購入できる缶コーヒーやお茶、エナジードリンクにはどのくらいのカフェイン量が含まれているか調べてみました。

主な飲料のカフェイン含有量(2016年1月、各社ウェブサイトの公表値をもとに作成)

サントリー ボス レインボーマウンテンブレンド(185ml) 130mg
アサヒ ワンダ 金の微糖(185ml) 148mg
キリン 午後の紅茶 おいしい無糖(500ml) 55mg
レッドブル(250ml) 80mg
大正製薬 リポビタンD(100ml) 50mg
サントリー烏龍茶(500ml) 100mg
サントリー伊右衛門(500ml) 50mg
コカコーラ爽健美茶(500ml) 0mg
コカコーラ(500ml) 50-65mg (※)
ドリップコーヒー(100ml) 60mg (※)
スターバックス ショート(240ml) 144mg(※)
スターバックス トール(350ml) 210mg(※)
スターバックス グランデ(470ml) 282mg(※)
スターバックス ベンティ(590ml) 354mg(※)

※全日本コーヒー協会ウェブサイトより試算

エナジードリンク=カフェインたっぷり、というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、意外や意外レッドブル(250ml)のカフェイン含有量は80mg。今回調べた中で一番含有量が多かったのは、スターバックスのベンティサイズ(590ml)でその含有量はレッドブルの4本分以上の354mgで一杯でほど許容量に達します。単純に量あたりで見ても2倍以上という計算ですからかなりの含有量です

スターバックスのトールサイズを朝一杯飲んで、さらに割引チケットを使って夕方一杯飲むと合計420mg。基準(400mg)から見れば、この2杯ですでに許容量を超えてしまうわけです。

ちなみに北米や韓国では、カフェインの摂取許容量として基準やガイドラインを出していて、米国食品医薬品庁(FDA)は、1日当たり400mgのカフェインを摂取するのは総じて安全だとしていたり、隣国の韓国の韓国食品医薬品安全庁(KFDA)では、一日最大摂取量として、子供は体重1kg当たり 2.5mg以下、大人は 400mg、妊婦は 300mgとしていたりします。2016年1月時点では、日本の食品安全委員会は食品中の摂取許容量を設定していませんが、東京都福祉保健局のホームページを見ると2015年3月付けでカフェイン摂取関する注意喚起のFAQが出ていますし、先日のカフェイン中毒死の発表などもありますので、近い将来食品安全委員会からなんらかの指針が発表されると予想しています。

カフェイン対策今後どうする? 商品開発の裏側は?

カフェインには眠気覚しの様なメリットもありますし、過剰に摂取すれば中毒になるリスクもあります。ただカフェインの入った飲み物は、身近にいくらでも手に入れることができるので、つまるところ摂取量は自分でコントロールするしかありません。

カフェインの致死量は1万4000mg(70kgの体重相当)で、それに達するまでは1日に100杯以上のコーヒーを飲む必要がありますから、コーヒーなどの日常的な飲料を飲むだけであれば、多くの場合そんなに飲むことはできません。自分にとって、どの程度のカフェインが摂り過ぎかを知っておくのがポイントです。

簡単にまとめますと、

・大人であれば400mgが一つの目安。子供や妊婦はもっと少ない方がいい(FDA、KFDA調べ)。
・カフェイン粉末の様なブースト剤は絶対NG。
・カフェインが入った飲み物を極端に摂取しない。
・カフェイン中毒は個人差が大きいので、コーヒー飲みすぎて気持ち悪くなった、胃が痛くなったという経験を
したらその時の量を記録しておく(自分にあった基準値を知っておく)
・カフェインレスと組み合わせる。

「さあ実践!」と思ってコーヒー飲料の成分表示を見ると、カフェイン含有量が明記されていないことに気づきます。それはコーヒー豆や茶葉などの天然原料を使用した場合は、生産地、収穫時期、製造工程の条件の違いなどによって、最終製品のカフェイン量にばらつきが出てしまうので、カフェイン含有量を明記することができない事情があるのです。

またリニューアルを伴わない、産地の不作やコストダウンによって原料を切り替えたときに、同じ製法で作っても表示の量にならない、という事態も想定されるので、カフェイン含有量を保証するのは至難の技です。

消費者の立場としては、今後さまざまな商品にカフェイン含有量が明記されればいいのにと思いますが、天然原料を使って商品開発をしたいと思うとその両立はなかなかハードルが高いわけです。

コーヒーをよく飲む人は、カフェインの摂り過ぎにご注意を。

高橋広嗣(たかはし・ひろつぐ)
フィンチジャパン 代表取締役。早稲田大学大学院修了後、野村総合研究所経営コンサルティング部入社。経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルタントとして活躍。2006年「もうひとつの、商品開発チーム」というスローガンを掲げて、国内では数少ない事業・商品開発に特化したコンサルティング会社「 フィンチジャパン 」設立。著書に『半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法』がある。

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