「IT化」がキーワードになっていた時とは、隔世の感があるが、最近では、自動車でも「IT化」が進んでいる。走行中の周辺環境を自動で認識してドライバーの運転を支援したりする「インテリジェントカー」や、インターネットに接続してリアルタイムの情報を運転手に届ける「コネクテッドカー」などさまざまな形で、自動車での「IT化」が進んでいるからだ。
自動車業界ではその一環として、インターネットに接続に加えて、自動車と「クラウド」がつながる環境が整備されつつある。例えば、電気自動車(EV)メーカーとして知られるテスラのクルマも、インターネットを通じてソフトウェアをダウンロードして、不具合を解消したり、インターネット上に地図を作り出したりするといった取り組みも始まっている。その動向を今回は紹介する。
日産とマイクロソフトが「クラウド」でタッグ
2016年1月5日、日産自動車 <7201> と米・マイクロソフトが、自動車技術の開発に共同で取り組むことを明らかにした。米国のラスベガスで開催される家電見本市「CES 2016」において、日産の電気自動車(EV)「リーフ」と「インフィニティ」の欧州モデルが、マイクロソフトのクラウドコンピューティングサービスである「アジュール」と連携する見通しだ。
テレマティクスシステムと呼ばれる通信機構を備えた日産の自動車にクラウドから提供される機能を活用できる仕組みの構築が狙いだ。
日産のテレマティクスシステムでは、「アジュール」と連携するとともに、車両へのリモート接続が可能になり、ドライバーが車両に乗車しなくても、一連の機能を使用することができる。例えば、インターネット対応の携帯電話を使って車両のエアコンの電源を入れたり、クルマの電源が切れてしまった時も遠隔操作で充電を行ったりすることが可能になる。
自動車×クラウドで3次元地図のカーナビも
日本国内でも、同じ動きが活発化している。クラウド活用を積極的に推進してきた企業の一つが、自動運転技術の開発を推進する「ゼットエムピー(ZMP)」だ。次世代自動車開発を進める企業向けに同社は「RoboCar シリーズ」を提供してきており、2013年1月の「オートモーティブワールド 2013」でも「RoboCar HV」や「RoboCar PHV」を公表。マイクロソフトの「アジュール」を組み合わせた「クラウド・ロボカー」も公開している。
さらに、2013年10月、マイクロソフトのクラウドサービスと、スマートフォン・タブレットを使用した走行実験向けのクラウド・システム構築サービスの提供をZMPは開始した経緯もある。それだけではなく、名古屋大学の加藤真平准教授らのチームが開発した「Autoware(オートウェア)」との連携も進めている。
同ソフトウェアでは、走行中のロボカーに取り付けた道路の周りの形を検出するレーザースキャナを用いてマスター地図をクラウド上に構築。そのデータを最新の地図にアップデートしつつ、自動車の自動運転に活かすことができる。このクラウド上の3次元地図上で、自己位置推定、物体検出、経路生成、経路追従などの機能を実行することも可能になっており、自動車が3D地図と連携して、路上を走行する日もそう遠くないかもしれない。
自動車メーカーはこぞってクラウドを使いたがるか?
一方、トヨタ自動車 <7203> も、自動車のテレマティクス分野でマイクロソフトとの協業を、2011年から開始している。データ分析のインフラとして、「アジュール」を採用し、コネクテッドカー分野の開発を進めている。
2014年6月に発表した新サービス「T-Connect」に同社は、「トヨタスマートセンター」を利用した音声認識機能を搭載させており、自動運転に必要な高精度地図を自動生成するシステムへの取り組みも進めている。
ほかにも、本田技研工業(ホンダ) <7267> は2014年、米・ゼネラルモーターズ、独アウディ、韓国・現代自動車、半導体大手の米・NVIDIAと提携して「オープンオートモティブアライアンス(OAA)」を立ち上げ、グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した自動車の開発を進めてきている。日本からはさらに、日産自動車、三菱自動車工業 <7211> 、マツダ <7261> 、スズキ <7269>、富士重工業(スバル)<7270> もOAAに参画。アンドロイドと「クラウド」の連携を視野に、技術開発に取り組んでいる。
このように、自動車メーカー各社ともクラウド利用に向けた取り組みを本格化させているが、今後は、マイクロソフトやグーグルのクラウドだけでなく、アマゾンのクラウドサービスである「AWS」やIBMの「ソフトレイヤー」と連携して稼働するようなケースも出てくるかもしれない。
今後、自動車×クラウドでどのようなプレイヤーが、どのようなビジネスチャンスをつかんでいくのかも、自動車、IT業界だけではなく、市場からも注目を集めそうだ。(ZUU online 編集部)
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