商標,イソジン,類似商品
(写真=HPより)

「イソジン」のカバくんをめぐる対立が生じている。

うがい薬ナンバーワンのブランド「イソジン」商標のライセンス契約終了にともない、明治がその製造・販売を終了することを発表したところ、商標権を持つ米製薬会社ムンディファーマ社とイソジンの国内販売を始める「シオノギヘルスケア」などがキャラクターの「カバくん」に類似したキャラを使おうとしたとして、明治が2社などを相手取り、不正競争行為差止等の仮処分命令を東京地裁に申し立てたと発表した。

ムンディファーマ社はどんな会社?

明治ホールディングス傘下のMeiji Seikaファルマが販売してきたこの商品。これまで「イソジン」のと技術提携及びライセンス契約を締結し、うがい薬をはじめとする「イソジン」ブランドの殺菌消毒薬を長年にわたって製造・販売してきたが、提携契約の解消に伴い、来年4月からは「イソジンうがい薬」などの一般用医薬品の製造販売権はムンディファーマ社が持つことになった。

ムンディファーマ社は殺菌成分ポビドンヨードを含むイソジン製品を、海外30カ国以上で「Betadine(ベタダイン)」ブランドで販売している。昨年から日本を重点地域に定めて積極的に投資し、その一環で日本市場に浸透したイソジンブランドの自社での展開を決定した。ムンディファーマ社が製品の開発や製造を担うものの、国内での自社の販路がまだ充実していないため、4月からは塩野義製薬の子会社シオノギヘルスケアが「イソジン」ブランドのうがい薬や傷薬、手洗い剤などを販売する。

明治はムンディファーマ社との提携で、イソジン製品の国内における開発・製造から販売・普及までを担ってきた。

1983年に「イソジン」ブランドでのうがい薬を一般用医薬品として発売。1985年からはカバのキャラクター「カバくん」を登場させ、テレビCMや小学校・幼稚園でのうがい教室などを通じてうがいの習慣の定着を図ってきた。しかし2015年3月、ムンディファーマ社がイソジンブランドのライセンス契約解消を通知したという。

明治側は長期的な提携関係の維持を望んでいたが、商標を持つムンディファーマ社が強く希望し、ライセンス契約の解消に至ったとされる。提携契約解消後、明治は今のイソジン製品と中身は同じで、ブランド名だけを「明治うがい薬」に変えた製品を発売する。契約解消後もイソジン商標以外の成分、容器・包材などは、引き続き明治も使用できることになっている。

明治は「カバくん」の商標登録と使用を主張

「イソジン」うがい薬でもっとも特徴的なのは、ブランド名とともにパッケージにデザインされている「カバくん」のキャラクターだ。だが意外なことに、明治は30年以上使用し続けてきた「カバくん」の商標登録をしてこなかった。提携解消とイソジンブランドの移管が発表されたのが12月9日で、登録出願は12月28日に行われている。

このことから、明治が提携解消の交渉の間に急きょ商標登録を行ったことが想像できる。使用開始から長い年月が経ってから商標登録を行ったのは、提携関係が延長され続けられるとタカをくくっていたのかもしれない。

ちなみに明治が「明治カバくん うがいラボ」なるウェブサイトを立ち上げたのもちょうどこの時期だ。

ムンディファーマ社も「カバくん」を使う方針

一方、ムンディファーマ社との間で「イソジン」の日本での独占販売契約を締結した塩野義製薬(子会社のシオノギヘルスケア)は、明治が商標登録している「カバくん」と類似したキャラクターを制作し使用する方針で、すでに販売店向けの資料で告知しているという。そのため明治は2月9日、ムンディファーマとシオノギヘルスケアに対し、仮処分命令の申し立てを行ったのだ。

発表によると、両社が4月に新発売するうがい薬「イソジン」のパッケージに、明治と類似したキャラクターが使われているというのがその理由だ。両者は2度の書面でのやり取りを行ったが、申し入れが受け入れられないと判断し、「不正競争行為差止等」の申し立てを決めたという。商標の使用も争点になると思われる。

訴えではデザインの「類似性」が争点か?

不正競争防止法では、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為」を禁止している。

今回は商標デザインの著名性(周知性のレベルが高い)と両者のデザインの類似性、類似した両者のデザインによって消費者が混同し間違えて購入するといった、明治にとっての損害・不利益になるかが争点となるだろう。両デザインを比較すると類似性は高いと判断される可能性は高い。そのため通常の商標侵害訴訟のケースと比較してハードルは低くなるだろう。

継続的・長期的な投資と努力でブランドは資産となる

通常の法律的な解釈では、今回のムンディファーマ社と塩野義製薬の方針は無理筋ともいえる。ではなぜ、このような判断をしたのだろうか? 商習慣にはなじまないように思われるやや強引な方法だが、そのリスクをとってでもキャラクターデザインを手に入れたかったのだろう。

うがい薬で50%以上のシェアを占め、30年以上の歴史をもつ「イソジン」ブランドにとって、その目印となる「カバくん」のキャラクターは最大のブランド資産といっても過言ではない。ムンディファーマ社と塩野義製薬が類似キャラクターの使用の意図は、この資産を手に入れて最大限に活用することだ。

だが明治は自社で「カバくん」のキャラクターをデザインし、広告・プロモーション・販売店施策などを継続的かつ長い時間をかけてブランド資産として作り上げてきた。明治にとっては多大なマーケティング投資と努力を続けてきた結果だといえる。その資産を横取りされかねない明治は、たまったものではないだろう。その無形の資産は、単純に金で買えるものではないからだ。法律上の問題はともかく、あえて類似キャラクターを使用しようとするムンディファーマ社と塩野義製薬のやり方は、少々強引な印象がある。

「イソジン」ブランドにとっての「カバくん」の価値

明治にネックがあるとすれば、消費者にとっては「カバくん」のキャラクターは「イソジン」ブランドとは強く結びついているものの、「明治」と結びついているかどうかだろう。やや主観的だが、「イソジン」との結びつきほどには強くないと思われる。「イソジン」ブランドを保有するムンディファーマ社と塩野義製薬の意図はまさにそこにあるのだろう。そのため、「カバくん」を引き続き使用することは明治の至上命題だ。

商標やキャラクターデザインは、ブランドを分かりやすく表現する方法ではあるが、一般に想像される以上に価値のあるものだ。

一般にパッケージグッズと呼ばれる商品カテゴリーでは、消費者が店頭で商品を判別するのは、ほんの数秒間だけだとの研究がある。そのわずかの瞬間のために、企業はパッケージデザインやキャラクターの制作と管理運用に多大の労力と時間をかけているのだ。それは単なる図案などではなく、ブランド資産の生命線ともいえる大変重要なものだ。

類似したデザインが店頭で並べば、消費者は両者の違いが分かりにくくなり混乱するだろう(あえて類似したデザインを採用して間違い購入を狙う手法もあるが)。

また販売店側も両者を店頭でどう売ればいのか迷うだろう。はっきりしているのは、消費者にとっては何のメリットもないことだ。訴訟によってどのような判断が下されるのか注目される。(ZUU online 編集部)

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