2022年6月1日に約2ヵ月続いた上海のロックダウンが解除され、5月には中国当局によるIT企業への締め付け緩和が報じられた。これを受けて世界的に中国株への投資熱が高まっている。2020~2021年にかけては、中国当局によるIT企業への締め付けが強化され中国のハイテク株は軒並み急落した。2022年7月現在もハイテク株の株価は低い水準にあるが徐々に回復の兆しが見え始めている。
もちろん「株価が必ず上昇する」という保証はない。しかしハイテク株を割安で購入するチャンスと見ることもできるだろう。今回は、中国の株式市場の最新動向について解説するとともに中国株の買い方・選び方を分かりやすく説明する。ぜひ参考にしてほしい。
中国株デビューをする人が増えている背景
上海では、2022年3月28日から新型コロナウイルスの影響でロックダウン(都市封鎖)が実施された。低迷する中国経済を立て直すため、中国政府は同年5月に6分野33項目におよぶ景気刺激策を発表。今後の経済回復への期待感が高まっている。2022年7月3日現在、Googleで「中国株」と検索すると約1億1,000万件がヒットする。
一方、「アメリカ株」は約4,830万件「米国株」だと約3,690万件と半分以下となるため、中国株への注目度の高さがうかがえるだろう。新興国株に含まれる中国株は、他の先進国と比較しても大きなリターンが期待できる市場だが相応のリスクもある。そのためリスクを抑えて運用したい場合は、適しているとはいえない。
しかし「余裕資金を攻めの姿勢で運用したい」「短期的に大きな利益を上げたい」と考えるなら中国株デビューを積極的に検討するべきだろう。
2022年最新!中国株の最新動向と今後の見通し
2020~2022年にかけて中国株は、急騰と急落を経験した。これから中国株に投資するなら急騰と急落が起きた背景を押さえておく必要がある。ここでは、過去の値動きを振り返りながら中国株の最新動向を解説していく。
- IT企業への中国当局の締め付けが株価急落を引き起こした
- 締め付け緩和で2022年は株価上昇の兆し
IT企業への中国当局の締め付けが株価急落を引き起こした
2020年に入ってから世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大によるコロナショックで低迷した。中国の株価指数も一時は下落するも中国政府が早期に景気回復策を実施したことが功を奏し2020年4月ごろから回復の兆しを見せ始める。これに気づいた投資家やヘッジファンドが中国株に資金を投じたことで中国株に注目が集まり中国経済は世界に先駆けてV字回復を遂げた。
しかし、2020年夏ごろから政府当局によるIT企業への締め付けが目立ち始める。決定的な出来事は、2020年11月3日に起きた中国の電子商取引大手アリババグループ傘下であるアントの上場延期だ。アリババグループは、中国版Amazonともいわれる巨大IT企業でテンセントと並び中国のハイテク株として投資家の注目を浴びていた。
しかし、創業者の馬雲氏が当局を批判する発言をしたことが引き金となりアントは上場中止に追い込まれる事態となる。アリババグループの株価は、2020年10月に高値319.32米ドルまで達していたが、2020年11月から急落を始め、2022年3月には月中最安値で73.28米ドルまで落ち込んだ。
締め付け緩和で2022年は株価上昇の兆し
アントの上場中止から始まった一連のIT企業への締め付け強化は、中国株の政治リスクを改めて投資家に認識させる結果となった。
一方で2022年に入ってから中国当局の締め付け緩和の動きが見え始めていることも注目したい。上海では、新型コロナウイルスの影響により2022年3月28日からロックダウン(都市封鎖)が実施された。2022年6月1日にロックダウンが解除されるとともに「経済回復のためIT企業への締め付けを緩和する」と報じられ、2022年5月には、企業向けの減税や交通インフラ投資の強化など大胆な景気刺激策も発表。また、中国当局は、アリババグループ傘下であるアントの再上場手続きの再開も検討しているという。これを受けてアリババやテンセントの株価は、上昇の兆しを見せ始めている。
アリババもテンセントも2021~2022年にかけて株価が大幅に下落した。今なら中国のハイテク株を割安で買える可能性がある。
これだけは押さえておきたい中国株の基礎知識
日本や米国の株式市場の情報と比べて中国の株式市場の情報は、受け身では得られない。主体的に中国の株式市場のニュースをチェックし、最新動向を把握したうえで投資判断をすることが大切だ。また中国株では、取引所や株式に複数の種類があることも重要なポイントだ。これから中国株に投資するなら中国株の基礎知識を押さえておく必要がある。
基礎知識が必要なことは、初心者が中国株への投資をためらう理由にもなっている。とはいえ、一度理解してしまえば難しいことはない。逆にいえば一定のハードルがある分、それをクリアした者にのみチャンスが広がっているともいえるだろう。
中国株は3つの取引所で取引されている
中国株は「香港取引所」「上海取引所」「深セン(しんせん)取引所」の3ヵ所で取引されている。上海取引所と深セン取引所は、あわせて中国本土の取引所と呼ばれることもある。またすべての中国株が海外投資家に対して開かれているわけではない。一部の取引所では、一定の保有制限があるため、注意が必要だ。海外投資家の保有制限については、後述する中国株の種類を紹介する際に詳しく解説する。
中国株には5つの種類がある
中国株には、大別すると以下の5種類がある。
種類 | 取引所 |
---|---|
A株 | ・上海取引所 ・深セン取引所 |
B株 | ・上海取引所 ・深セン取引所 |
H株 | ・香港取引所 |
レッドチップ | ・香港取引所 |
香港株 | ・香港取引所 |
それぞれの特徴について簡単に解説していく。
・A株
上海取引所・深セン取引所における中国株のうち以下のように海外投資家への保有制限がある株のことだ。
- 海外投資家の持ち株比率:30%まで
- 海外投資家の個別銘柄の持ち株比率:10%まで
上海取引所でも深セン取引所でも取引通貨は人民元だ。
・B株
上海取引所・深セン取引所の中国株のうち海外投資家への保有制限がない株のことだ。上海取引所の取引通貨は米ドルで深セン取引所の取引通貨は香港ドルだ。なお上場企業数や時価総額は、A株がB株を上回っている。
・H株
香港取引所に上場かつ中国本土で登記されている中国企業の株式のことだ。企業が香港取引所に上場するのは、グローバル展開の足がかりとしたり知名度向上を図ることで資金調達をしやすくしたりするためである。
・レッドチップ
香港取引所に上場している企業のうち中国本土以外を本社としており中国政府資本が30%以上の企業の株式のこと。本社所在地は、香港・マカオ・台湾など中国本土以外の地域、もしくは海外だ。レッドチップは、政府資本の割合が高く安全性が高いといわれている。そのため優良銘柄を表す「ブルーチップ」をもじってレッドチップと呼ばれるようになった。
レッドとつけられたのは、中国共産党のシンボルカラーに由来する。
・香港株
H株にもレッドチップにも該当しない中国株のことだ。具体的には、中国本土以外を本社としており中国政府資本が30%未満の企業の株式を指す。
A株の市場の違いを知る
上海・深セン取引所のA株には「メインボード」「科創板」「中小板」「創業板」といった異なる市場が用意されている。上海取引所の「科創板(かそうばん)」は、2019年7月にハイテク企業の育成を目的として始まった。そのため半導体や車載電池などを扱う企業が上場している。深セン取引所の「中小板」は、主に中小企業が上場しているのが特徴。
深セン取引所の「創業板(そうぎょうばん)」は、新興企業向けの市場だ。中国経済の持続的な発展を目的として創業を後押しする目的で始まった。「中国版ナスダック」と呼ばれることもある。中国株の銘柄を選ぶときは、こういった市場の違いにも注目すべきだろう。メインボードに上場している大手企業を狙うのも1つの選択肢だが創業板などにも興味深い銘柄はたくさんある。
中国株の選び方は?注目したい主な指数も紹介
続いて、中国株を選ぶうえで大切な視点や参考にすべき指標を紹介する。中国は、共産主義国家となるため、中国政府の市場に対する介入は、日本でイメージするよりもはるかに大きい。そのため中国株を選ぶときは、中国政府の政策方針にしっかりと注目しておきたい。また、初めて中国株を選ぶなら海外市場にも流通する商品やサービスを扱っている中国企業の銘柄に着目するのもいいだろう。例えば日常品で手にする「中国製の商品」を扱っている中国企業を調べてみることも選択肢の1つだ。
中国株を買ううえで参考になる指数はたくさんあるがここでは代表的な指数を3つ紹介する。
上海総合指数<SSEC>
上海取引所が公表する上海株式市場を代表する指数。上海取引所に上場するすべてのA株・B株の株価をもとに算出される。基準日となる1990年12月19日を100として算出。
上海50指数<SSE50>
上海取引所が公表するA株銘柄を対象とした指数。A株銘柄のなかでも規模や流動性の大きな50銘柄をもとに算出される。基準日となる2003年12月31日を1,000として算出。
香港ハンセン指数<HSI>
香港取引所におけるH株銘柄の株価の値動きを代表する指数。ハンセン銀行傘下のハンセン・インデックス・サービス社が公表している。基準日となる1964年7月31日の構成銘柄の時価総額合計を100として算出。
中国株への投資の仕方は?3つの選択肢の違いを知る
中国株に投資するには、3つの方法がある。
- 中国の取引所に上場している中国株を買う
- 米国に上場している中国企業の株を買う
- 中国株を投資先に持つ投資信託を選ぶ
中国の取引所に上場している中国株を買う
中国株を取り扱っている証券会社を選ぶ必要はあるが中国株デビューするのに最適な買い方といえる。海外投資家に対して一定の制限はあるものの最も広い選択肢から成長が期待できる中国株を選べるのが魅力だ。
米国に上場している中国企業の株を買う
中国版Googleともいわれる大手検索サイト「百度(バイドゥ)<BIDU>」、中国版Amazonといわれる大手通販サイト「阿里巴(アリババ)<BABA>」といった大手企業は、米国の証券取引所にも上場している。しかし米中関係は、しばしば緊張が走る点は注意しておきたい。例えば米証券取引委員会(SEC)は、2022年3月末に「百度(バイドゥ)」など複数の中国企業を「上場廃止警告リスト」に追加した。
そのため、今後米国の証券取引所に上場する中国企業が上場廃止となるリスクがある。投資する際は、これらの最新情報をキャッチしながら投資することが必要だ。
中国株を投資先に持つ投資信託を選ぶ
投資信託は、投資家から集めた資金をプロのファンドマネージャーが運用してくれる金融商品だ。投資先の選定や運用を専門家に委ねられ少額から始められるのがメリットだ。「中国株に興味はあるけど投資先を選ぶのはプロに任せたい」という方は、検討してみるといいだろう。
人気の中国株銘柄5選
東洋証券の「中国株銘柄検索人気トップ10」のなかから人気の中国株銘柄を5つ取り上げて紹介していく。
東洋証券は、中国株に強い証券会社で上海株だけでなく深セン株・香港株も取り扱っている。上海株や深セン株については、A株・B株とも取り扱いがあり手数料も低い水準だ。口座開設しなくても「中国株レポート」を読めるため、最新動向や今後の見通しを知るうえで参考にするといいだろう。
シャンハイ・プータイライ・ニュー・エナジー・テクノロジー<603659>
リチウムイオン電池業界向けに、負極材料やラミネート材料などを生産するほか、オートメーション設備も提供する製造業の企業。電気自動車の需要拡大とともに、リチウムイオン電池の需要拡大が見込まれており、今後の成長が期待できる。
ロンジ・グリーン・エナジー・テクノロジー<601012>
太陽光発電向けにシリコンインゴットからセル、モジュールまでの研究開発・生産・販売を一貫して手がける単結晶シリコン製品メーカー。SDGsや脱炭素社会の実現に向けて世界的な動きが加速するなか、環境負荷の少ない新エネルギー分野が投資先として注目を集めている。
アリババグループホールディング<09988>
中国版Amazonと呼ばれるアリババのほか、淘宝網(タオバオ)や天猫(Tモール)などの個人向けECサイトも展開する、中国の電子商取引最大手企業。EC以外にも、宅配スーパー、フードデリバリー、動画ストリーミング、クラウドサービスなど多数の事業を手がける。グループ全体の年間アクティブ消費者数は13億1,000万人で、うち中国が10億人超を占める。2020年に上場延期となったグループ傘下のフィンテック企業アントの再上場への期待感が高まっている。
アイフライテック<002230>
AIを用いた音声識別技術を専門としソフトやチップの開発を手がけるAI関連企業。59言語で翻訳可能な「iFLYTEK翻訳機2.0」は日本でも話題となった。アイフライテックは、2020年1月に日本法人も設立している。多言語コミュニケーションが加速するなか、ますます需要が高まると予想される。
ナリテクノロジー<600406>
スマートグリッドを中心とするエネルギー・ネットワークの総合ソリューションを手がける企業。スマートグリッドとは、電力の流れを制御・最適化する送電網のことで次世代送電網として注目されている。今後ICTを活用したスマートシティが世界的に増加しスマートグリッドの導入事例も増加が期待できるだろう。
中国株を購入する際の注意点
中国株投資には、当然リスクもある。一般的な投資リスクといわれる株価変動リスクや信用リスク、流動性リスク(売買したいタイミングで約定しないリスク)はもちろん外国株ならではとなる為替リスクも忘れてはいけない。また中国は、世界のなかで大国であるが新興国ということもありカントリーリスクにも十分注意が必要だ。
中国の政治や経済、外交などの動向は、自ら情報収集を欠かさずしっかりと把握しておきたい。中国には、法制度の未整備や会計基準のあいまいさなどの問題点もある。日本株と同じような感覚で中国株を始め痛い目を見ることがないように緊張感を持って取引をすることが大切だ。
中国株を組み込んで運用効率を上げる
リスクはあるものの高いリターンを狙うことが期待できる中国株は、夢のある投資対象といえるだろう。周りと同じように日本株や米国株に投資するのでは物足りない人や攻めの姿勢で投資したいと考えている人は、中国株をポートフォリオに加えることを前向きに検討したい。ポートフォリオは、バランスが重要だ。
リスクの低い資産ばかりでポートフォリオを構成しておくのは、決して運用効率がいいとはいえない。余裕資金を中国株に投じることで運用効率の向上を図れるのではないだろうか。
ご投資にあたっての留意点
取引や商品ごとに手数料等およびリスクが異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
外国証券等について
外国証券等は、日本国内の取引所に上場されている銘柄や日本国内で募集または売出しがあった銘柄等の場合を除き、日本国の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示が行われておりません。
手数料等およびリスクについて
国内株式等の手数料等およびリスクについて
国内株式等の売買取引には、約定代金に対して最大1.2650%(税込み)の手数料をいただきます。約定代金の1.2650%(税込み)に相当する額が3,300円(税込み)に満たない場合は3,300円(税込み)、売却約定代金が3,300円未満の場合は別途、当社が定めた方法により算出した金額をお支払いいただきます。国内株式等を募集、売出し等により取得いただく場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。国内株式等は、株価の変動により、元本の損失が生じるおそれがあります。
外国株式等の手数料等およびリスクについて
委託取引については、売買金額(現地における約定代金に現地委託手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対して最大1.1000%(税込み)の国内取次ぎ手数料をいただきます。外国の金融商品市場等における現地手数料や税金等は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
国内店頭取引については、お客さまに提示する売り・買い店頭取引価格は、直近の外国金融商品市場等における取引価格等を基準に合理的かつ適正な方法で基準価格を算出し、基準価格と売り・買い店頭取引価格との差がそれぞれ原則として2.50%となるように設定したものです。
外国株式等は、株価の変動および為替相場の変動等により、元本の損失が生じるおそれがあります。
投資信託の手数料等およびリスクについて
投資信託のお取引にあたっては、申込(一部の投資信託は換金)手数料をいただきます。投資信託の保有期間中に間接的に信託報酬をご負担いただきます。また、換金時に信託財産留保金を直接ご負担いただく場合があります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なるため、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該金融商品市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し、元本の損失が生じるおそれがあります。
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