クリントン氏の魅力は無難さ?
クリントン氏を支持し献金をしている投資家や経営者には、他にもロサンゼルスのメディア王にして投資家ハイム・サバン夫妻や、ルネサンス・テクノロジーズの創業者ジェームズ・シモンズ氏らもいる。
ほかにも個人として最も多額の献金をしたファラロン・キャピタルの創業者トマス・ステイヤー氏、ヒューレット・パッカードのメグ・ウィットマンCEO、そして自身も選挙戦への出馬が取り沙汰されたマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長など、そうそうたる大物たちがクリントン氏支持の著名人のリストに名を連ねている。
多くの著名人やヘッジファンドや経営者がクリント氏支持に傾いたのは、ウォール街にとって、“無難な選択”だからだ。数々の差別的発言や強権的な外交政策を繰り返すトランプ氏では、経済も大混乱に陥りかねず、景況悪化のリスクを嫌った格好だ。
ほかにも民間投資ファンドであるプリツカー・グループのマネージングパートナー、J・B・プリツカー氏などは「トランプ氏が大統領になれば米国はひどいことになる」とさえ語っている。同氏もクリントン氏を支持する団体に対して、総計790万ドルを寄付している。
特に、ヘッジファンドが注視するのが「キャリードインタレスト」の行方だ。この政策は、ファンドマネージャーの所得税をキャピタルゲインと見なし、39.6%である一般の所得税より低い23.8%を最高税率にした、キャピタルゲイン税を適用している。トランプ・クリントン両氏ともに、この政策の見直しに言及している。この政策に対する姿勢や税率が明確になれば、ヘッジファンドの出方も変わるかもしれない。
有名投資家の支持の輪は広がるのか?
他の有名投資家たちの動向はどうだろうか。2007年に家族とともにニューヨークから、シンガポールに移住した投資家ジム・ロジャーズ氏は、大統領選挙では常に冷静な立場をとっている。前回の大統領選挙でも「オバマがなろうとロムニーになろうと、大統領の友達だけ景気が良くなるだけで国家の景気が良くなるわけではない」と冷めたコメントを出している。
トランプ氏の支援者ももちろん存在する。資産家で投資家のウィルバー・L・ロス氏は同氏のために資金集めの昼食会を開き、数百万ドルを調達したことで話題を集めた。
またApple、Chesapeake Energy、Herbalifeなど多くの企業の筆頭株主であり「最も成功した投資家」として知られる投資家カール・アイカーン氏も、トランプ氏支持者だ。さらにトランプ氏から財務長官就任を要請されているという。献金の有無は定かではないが、もし彼が財務長官就任となれば、その卓越した見識や投資ノウハウを政治に活かすことだろう。
もともと大統領選挙では、ヘッジファンドは悪者とされる傾向がある。多くの票を集める必要がある選挙では、貧困対策や富裕層への課税強化といったアピールが人気を集めやすい。このため富裕層向けの商品であるヘッジファンドは、よくやり玉にあげられる。ヘッジファンドがクリントン氏に献金をするのは、選挙後にいろいろと手心を加えてほしいという、意図が見え隠れする。
献金も支持も予断を許さない
民主党の支持母体を考えれば、富裕層の代表であるヘッジファンドの献金が、クリントン氏に集まるのは不思議かもしれない。
前述したように、共和党支持者の中でも「トランプが大統領になったら米国はひどいことになる」と考える人が多いからだ。だが、多額の献金が集まっているからといって、「ヘッジファンドはクリントン氏を全面的に支持している」と考えるのは早計だろう。
あくまで政治的混乱を避けたいがためのクリントン氏支持であり、本来の信条では共和党を支持したいのが、ヘッジファンドの本音だとみられる。また以前からトランプ氏は政治資金集めに消極的であり、外部の政治団体からの支援も拒否していた。
だが、共和党候補がトランプ氏に一本化されたことで、これまで他の共和党候補に献金していたヘッジファンドが、今後はトランプ氏へ集中していくことは確実だ。
ヘッジファンドの献金が、これから誰に向かうのか、彼らの動きが大統領選にどのような影響を及ぼすか、予断を許さない状況が続く。(ZUU online編集部)
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