アンブッシュ・マーケティングは徹底的に取り締まる

アンブッシュとは「待ち伏せ」意味で、オリンピックやワールドカップなどのイベントにおいて、公式スポンサー契約を結んでいないものが無断でロゴなどを使用したり、メディアや会場の周辺で便乗して行なったりする便乗商法や便乗広告を指す。

この方針と通達を受けて、JOC(日本オリンピック委員会)が便乗商法の疑いに関するリストを各所に通知した。それに基づいて、広告審査機構(JARO)はアンブッシュ・マーケティングとなる恐れがあると懸念している表現例を公表している。

・東京オリンピック・パラリンピックを応援しています。
・祝2020年開催
・祝2020年オリンピック・パラリンピック開催決定
・2020年にはばたく子供たちを応援
・東京で未来の夢を実現
・オリンピック開催記念セール
・2020円キャンペーン
・祝・夢の祭典
・祝・東京決定!
・7年後の選手を応援しています
・「東京」「2020年」の使用(セット・単体ともに)

ご覧のように、アウトになる表現例は非常に広範囲に及んでいる。

JAROは腰が引けている?

JAROにはすでに、さまざまな業種の広告主から問い合わせが寄せられているという。日本では知的財産権への理解は進んでおり、無断で「オリンピック」にまつわる直接的な文言やオリンピックマークを使用してはいけないことは大半の事業者に認識されている。

だからこそ、JOCやIOC(国際オリンピック委員会)から使用の差し止め要請や損害賠償請求を受けるリスクをできるだけ避けて、「直接的な文言を使用せずになんとか東京開催決定を祝う表現を入れることはできないか」というのが相談の主な趣旨である。

結論からいえば、いかなる文言を使用しようとも、これらのガイドラインに抵触しそうな表現はアンブッシュ・マーケティングに該当するおそれがあると判断されかねない。

だがこのガイドラインのポイントは、単に使用する文言のみでオリンピックを想起させるかどうかを判断するわけではなく、タイミングや状況などから総合的に判断されるとされている点だ。

例えば「おめでとう東京」といった表現は、東京でのオリンピック開催が決定した直後では問題となったが、1年後や2年後に同じ表現が問題となるかどうかはわからない。判断が恣意的になされる可能性がある。はたして、誰がどうやって判断するのだろう?

だが考えてみると、IOC やJOCもオリンピックは世界最大のスポーツの祭典としているにも関わらず、それを祝ったり応援したりすることすらも禁止するのは行き過ぎではないだろうか。特にガイドラインの「東京」「2020年」の使用をセット・単体ともに抵触の可能性あり、というのはいくら何でも厳しずぎる。無理筋だ。総合的に判断するといわれても普通、「2020年だけで危ない」とはならないだろう。

これらは使用権の侵害や訴訟リスクを最大限に避けるためのJAROの過敏な対応と思われる。要は腰が引けているのだ。JAROに問い合わせてみても明確な回答は得られないだろう。応援はもちろんいけない。祝うのも駄目。東京で夢を実現なんてもってのほか。そう言われれば人々はオリンピックにまつわる表現や、極端な話、ツイートさえも避けるだろう。

「シェア型」に変わるべき

1984年のロサンゼルス大会から本格化したオリンピックの商業利用。これはいかに「オリンピック」という巨大なブランドをマーケティングするかということだった。だがそのモデルは20世紀の「囲い込み型」であり、急速に発達したSNSに代表される「シェア型」という現代にはあわなくなってきている。

このままいけば、オリンピックは公式スポンサーだけのものになってしまい、誰にも歓迎されないものになってしまいかねない。

今からでも遅くはない。東京オリンピックではいまの時代にふさわしい情報の拡散と体験・感動のシェアを志向するべきだ。いまどきバズられないイベントなど価値はないだろう。

実はロンドンでもリオでもIOCの要請により、アンブッシュ・マーケティング規制法を時限立法で作っている。これが通常の知的財産権よりも強いオリンピックの表現への規制が行われている。

これから日本でもこのような時限立法が議論される可能性があるが、過剰な制限によって、場合によっては肝心のイベントとしての盛り上がりを削ぎ、期待されている経済波及効果をも押し下げかねない。(ZUU online 編集部)

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