以前当媒体で「金融リテラシー」に関する調査結果を取り上げた(「 人生の3大費用」が何か分かりますか? )。
今回もその調査結果に対しての話になるが、今回はリスクが嫌いだから、元本保証にするという行動で果たして本当に良いのかを分析していきたい。
約8割の人々がリスクを嫌う結果に
まず資料を確認しよう。金融広報中央委員会が2016年6月から約1か月間、全国の20歳以上2人以上世帯(サンプル数7808)を調査したところ、金融資産の保有状況は、保有額平均1078万円で昨年の前回より131万円減額した。この平均値には「金融資産を保有していない」と回答したサンプルも含まれ、「金融資産を保有している」のみでの平均値額は1615万円で、前回より204万円の減額である。金融商品別の構成は、預貯金55.3%、有価証券16.1%、生命保険17.6%となる。
そしてこの金融商品の選択について、「購入を検討する際に最も重要視することは?」の回答を、3つの性質で分けると次のように分類できる。
1.安全性:45.7%
2.流動性:24.7%
3.収益性:17.5%
特に注目したのは、「元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品の保有について」「そうした商品を保有しようとは全く思わない」が80.7%であった点だ。
ノーリスクなど存在しない
では、ここから本題に入ろう。「元本保証」、この言葉が嫌いな人はまずいないであろう。日本人は諸外国人に比べて、特にリスクを嫌う傾向が高いと言われているが、先程の質問に対する回答率は、この事を決定付ける数値と言わざるを得ない。
投資資金を下回ることなく、約束の運用期間を終えれば資金回収が約束されている、となれば、「損をせず利益だけ得られる」のだから、こんなにいい話は無いだろう。
いま、この文章を読んで、違和感を感じた方はいるだろうか。筆者が投資の勉強を始めた際、第一に教えられたのは「ノーリスクの金融商品などない」ということだ。
第一のリスクは、3兆6000億円が物語る中途解約
例えば、元本保証商品の一つ「個人年金保険」で見てみよう。2016年度生命保険の動向(生命保険協会より)によると、個人年金保険の解約・失効率は対年度始保有契約高4.1%で、額にして3兆6360億円。
解約の全てが元本割れをしたとは言い切れないが、保険は満期や払込満了日前に、中途解約をすると、戻ってくる返戻金は、払込保険料を下回るのがそのほとんどだ。契約当初とは違う外的要因や各事情で、元本を下回る時期であっても、解約をせざるを得ない事は珍しくない。
第二のリスクは、まさかの破綻
銀行は潰れない……そんな神話は1997年の北海道拓殖銀行に始まる数々の銀行破綻で、とうに崩れた過去がある。
銀行が破綻した場合の預金者保護制度は、ご存知「預金保険制度(ペイオフ)」で、1金融機関あたり1人1000万円とその利息までが保護対象。それ以上の預金額は、保護されない事もありえる。
当座預金や決済用口座は全額保護されるが、一般口座では先の通り。元本保証商品の代表選手である「銀行預金」でも、リスクはあるのだ。
第三のリスクは、コーヒーの値段から学ぶインフレリスク
筆者は大のコーヒー好きで、1日に3杯は欠かせないのだが、喫茶店でコーヒーを注文すると今は約450円ぐらいだろうか。
物価というのは不思議なもので、いまその価格である事が「当たり前」という感覚を無意識に持ってしまっているものだが、わずか15年前の価格は、コーヒー1杯270円だったのである。比べて1.6倍。
遡る事55年前は1杯5円と、90倍も値段が上昇している。
ここまでくればもうお分かりだろう。第三のリスクはインフレである。デフレの再来も予想される今日において、インフレの話をするのは、現実味を感じられないかもしれない。しかしながら、戦後の高度経済成長期の再来はないにしろ、わずかながらもこの15年間デフレ時代を挟みながらでも物価は上昇している。
「今後10年?20年間で、インフレ率が必ずしも、銀行預金金利を上回る」と言っているのではない。「実質の元本は目減りするので、損はしないという構造は成り立たない」という事だ。
佐々木 愛子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種
国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。
FP Cafe'
登録FP
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