銀行員にとっても休眠預金は迷惑なのだ

銀行員として本音を言わせて頂くと、休眠預金は迷惑以外の何物でもない。休眠預金が銀行の利益になるなんて考えている銀行員は恐らく誰もいないだろう。

銀行のカウンターで何冊もの休眠預金の通帳を広げながら「印鑑をなくした」「結婚して名義が変わっている」「引っ越しして住所が変わった」と途方に暮れているお客様を見かけることがある。こうした休眠口座に限って上述のように、すぐに払い出すことができず、問題を抱えた口座が多いのも事実だ。

わずか数10円の預金を払い出すために、何度も銀行へ足を運ばれるお客様は気の毒である。銀行員にとっても、正直なところ気が滅入る作業と言わざるを得ない。

なぜメディアは大切なことを伝えようとしないのか?

休眠預金の件でメディアは大切なことを伝えていない。自らの使命を放棄してしまっているようにも見受けられる。

この問題の本質は「時効制度」についての考え方だ。

時効制度の根本にあるのは「権利の行使を長期間にわたり怠っている者は法律で保護するに値しない」という考え方である。我々は日本国民として多くの権利を有している。しかし、いつの間にかそれらの権利は当然のものと考えられるようになり、多くの国民は権利の行使を怠るようになったのではないか。休眠預金は「時効制度」と直結している。

政府は強力な権力を有する「権力者」である。当然政府は国民の利益のために権力を行使せねばならないにもかかわらず、時として国民のためならざることが行われる。

その権力を監視するために、メディアは「言論の自由」という強力な権利を有しているのではないのか?

メディアは自ら言論という権利をきちんと行使するだけではなく、国民が有する権利の存在とその行使の意義を広く伝えなければならないはずだ。にもかかわらず、この問題をスルーするメディアの何と多いことか。

復興のために我々は新たな税負担を受け入れたにもかかわらず、多額の資金が全く関係のない分野に流用された問題を忘れてはならない。私には、またしても同じ過ちが繰り返されようとしているように思えてならないのだ。

日本中が権利の上にあぐらをかき、権利の上で眠っている。「休眠預金活用法」が成立した今こそ、我々の権利について改めて見つめ直さなければならない。(或る銀行員)

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