⑥リスク要因

前項で公約の実施、周辺国との外交、中央銀行との関係が飛躍の条件と書きましたが、裏返してみると、これらがモディ新政権のリスク要因となりえます。また、支持母体である民族義勇団(RSS)との関係もリスク要因です。筆者はその中でもイスラム教国家であるパキスタンとの関係が最大のリスク要因になりえると考えております。カラチ国際空港へのテロのように突然テロが顕在化することも考えられ、ヒンドゥー市場主義を推進すれば、外交面でのリスクは高くなることが考えられます。


⑦インド関連日本企業の紹介~自動車~

ここからは、投資家の視点でインド市場とインド銘柄の投資のどちらがよいかを見てまいります。まずは、インド関連銘柄とされる日本企業を紹介してまいります。インド関連銘柄とされる日本企業は表4、表5のように輸送用機器、日用品が中心となります。特に、スズキ<7269>は子会社のマルチ・スズキがインド最大手で3割超のシェアであるなど、インド市場で確固たる存在感を築いています。では、スズキへの投資は競合他社と比べてどうでしょうか、PER、PBRで比較すると、トヨタ自動車のPERは10.34、PBRは1.27。輸送用機器の平均PERは9.43であり、指標面での魅力はあまりないといえるでしょう。また、子会社であるマルチ・スズキ(インド上場)の株価も6月10は2,450ルピー前後を推移していますが、過去1年間の最低値が1,217ルピー、最高値が2,505ルピーであることから、最高値近くにあるといえると考えられます。

表4 インド関連銘柄~輸送用機器~

コード

銘柄名

6/10終値

PER

PBR

インド事業

<7269>

スズキ

3,103

15.14

1.31

子会社マルチ・スズキがインド最大手(3割超のシェア)

<7267>

ホンダ

3,563

10.79

1.08

二輪車販売台数インド二位

<7272>

ヤマハ発

1,710

13.27

1.54

2013年二輪車出荷台数が前年比33%増

<4613>

関西ぺ

1,598

20.28

1.88

自動車用塗料大手。売上・経常利益の15%をインドで稼ぐ


⑧インド関連日本企業の紹介~日用品~

一方、日用品関連の日本企業としては表5のような企業が挙げられます。ここにあげられている企業の特徴としては、インドに依存する構造になっていないことです。例えばユニチャーム<8113>はインド市場では年平均90%を超える成長を挙げていますが、インドを含むアジアの売上高は連結売上高の4割程度であり、インドに依存しない売上構造になっています。

また、ピジョン<7956>についてもインドに哺乳瓶工場を建設し、インド事業の拡大を見込んでいますが、インド市場は連結売上高に占める割合は1%弱で、インド市場に依存する構造ではありません。インド関連の日本企業への投資という観点では、巨大だが所得が高くない市場へアプローチしやすい製品を持っており、インドに成長を依存していない日用品企業のほうが、輸送用機器より有望と考えられます。

表5 インド関連銘柄~日用品~

コード

銘柄名

6/10終値

PER

PBR

インド事業

<8113>

ユニチャーム

6,242

---

3.36

インドでの紙おむつシェア2位

<2267>

ヤクルト

5,140

36.68

3.09

2014年1-3月のヤクルト販売本数は前年比26%増

<2897>

日清食HD

4,980

27.44

1.65

インドで3箇所目の即席麺工場を2014年1月に稼動

<7956>

ピジョン

5,380

29.46

5.76

2015年1月から工場を稼動


⑨インド株式市場とインド銘柄への投資、どちらが良いか?

インド株式市場と日本企業インド銘柄への投資のどちらがよいかという問いに対しては、モディ新政権が公約を実施し、外交リスクを回避できるかによるでしょう。インド株式市場はハイリスクですが、その分世界の投資家の注目は高く、ボラティリティーと株価上昇余地は高いと思われます。一方、日本企業インド銘柄への投資は、筆者は日用品関連を薦めますが、これらの企業は中国市場での存在感がインド市場よりも大きく、インド銘柄というよりは中国銘柄であるのが現状です。インドの将来にリスクを取れるのであれば、インド株式市場への投資の方が結果は出ると思われます。


⑩アベノミクスを知れば、モディノミクスが見えてくる

今後、モディ新政権およびインド株式市場投資の注目すべき視点は安部政権と同じと筆者は考えています。すなわち、公約の実行(成長戦略の実行)と周辺国外交で失策を起こさないこと(中韓との関係改善)です。インドで起こっているニュースを日本の安部政権ならどうかるかという視点で見ることで、インドで起こっていることがより深く理解できるのでないでしょうか?

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