AI,ファンドマネージャー投資
(写真=Thinkstock/Getty Images)

インターネット企業大手のヤフーが、AIで運用するファンドとしては実質的には日本初となる公募投資信託を設定した。AI投信とはどのようなものなのだろうか。ファンドマネージャーは職を失ってしまうのだろうか。日本より先行している米国の例など見ながら予想してみよう。

AI元年の金融界、資産運用界

AI(人工知能)は、自動運転などの次世代先端分野のほかに、医療・介護、教育といった生活分野、品質管理・工場自動化といった産業分野など様々な分野で実用化に弾みがついてきている。みずほ銀行や三菱UFJ信託銀行、楽天証券のウェブサイトではAIを使ったロボ・アドバイザーが投資家のプロファイルに適したETFの推奨などの運用アドバイスを提供しはじめており、2016年は金融界においてもAI元年となった。AIやビッグデータを使った投信は米国ではすでに設定されており、日本の投資運用界においてもAI化の波が押し寄せてくることは間違いなさそうだ。

ヤフーのAI投信はビッグデータを解析

ヤフーが設定したAI運用の公募投信が「Yjamプラス!(ワイジャムプラス)」だ。運用はヤフー系列のアストマックス投信投資顧問(AstmaxAM)が行い、運用助言はヤフーが70%出資するマグネマックス・キャピタル・マネジメント社(MMC)がヤフーの保有するビッグデータをAI運用モデルで解析する。

ヤフーと上場投資顧問会社であるアストマックス <7162> は8月に、資本・業務提供を発表。ヤフーはアストマックスの子会社であるAstmaxAMの33.4%の株式保有することを決めた。提携後、ヤフーグループ3社が一体となって設定する初めての投信が「Yjamプラス!」だ。募集は11月28日に開始、12月20日に運用を開始した。

運用モデルは、国内外の上場銘柄を対象に中長期的な視点でアクティブ運用する。日本株に収益機会を見いだせない場合には海外株にも投資する。Yahoo!JAPANのビッグデータを、MMCのAI運用モデルが24時間解析し、学習していくことで、市場の銘柄の価格の歪みを発見していく。高い確率で株価の上昇予想が出来る銘柄をロング、高い確率で株価が低迷することを予想できる銘柄をショートするロング・ショートのモデルだ。

メインの戦略モデルとして、今賑わっている銘柄でなく将来のスター銘柄を発掘する「スター発掘モデル」と、株価上昇期を確率的に推定する「確率的モテ期予測モデル」を使うことをあげている。

ヤフーを迎え撃つ金融機関もAI投信設定

ヤフーの挑戦を受けて立つ既存の運用会社では、三菱UFJ信託銀行がAI運用投信への参入を表明している。すでに10億円の自己資金でパイロットファンドを立ち上げテスト運用を開始した。AIが金融情報を提供しているブルームバーグ社の日本語ニュースのビッグデータから数多くの株式指標や株価の関係などを分析し、大きな損失(ドローダウン)の少ない安定運用をめざす。08年度から15年度のシミュレーションでは、リーマンショック時を含めても常にプラスのパフォーマンスを上げており、将来的には年金運用での実用化を目指す。

三井住友アセットマネジメントは、国立情報学研究所と共同で金融スマートデータ研究センターを設立。16年度中にAIによる運用モデルを構築、17年度をめどに国内外の株のAI運用のパイロットファンドを設定する予定だ。

米国のSNSファンド、AI運用ヘッジファンド

米国では「SNS連動型ETF」など各種のAI運用のファンドがすでに上場している。株式投資をしたことがある人ならツイッターなどのSNSで情報収集をしたことがあるだろう。「SNS連動型ETF」は、SNSというビッグデータをAIで分析し銘柄をピックアップして運用するファンドだ。

「SNS連動型ETF」で代表的なのは、2016年4月に設定された「SprottBuzzSocialMediaInsightsETF」。ティッカーは「BUZ」。BUZというのは、「BUZってる」というネット用語があるようにSNSで頻繁に話題に上がっていることを指す言葉だ。このファンドはSNS上でBUZっている銘柄をAIで分析、ネット上のニュースやSNSでツイートされた件数、話題やコメントや反響の多い銘柄、そのコメントがポジティブなのかネガティブかなども読み取り25銘柄を選定している。

ヘッジファンドでもAIの導入が加速化し始めている。クオンツ系ヘッジファンド大手の2シグマ社、ブリッジウォーター社、ルネッサンス・テクノロジー社などはAIトレードを加速している。

なかでも運用資産が20兆円と言われる世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター社は、米IBMのAIコンピュータ「ワトソン」の技術者チームを引き抜き、AIトレードの開発に当たらせていることで有名だ。AIで、金融商品の相場変動、世界各国の政治・経済状況、各国中央銀行の動向や市場センチメントなどといったマクロから、企業業績などミクロまで、データを分析して、投資銘柄を決定しているようだ。

ファンドマネージャーは失業の危機?

まだAI投信は始まったばかりで、結論をだすのは早急だ。ただ、どんなに優れたファンドマネージャーでも、すべての銘柄やすべてのデータを分析し、24時間市場を監視することはできない。また、得意とするセクターの偏りや、投資に対する振れが生じる可能性がある。

一方、情報収集やデータ分析と言った投資分析はコンピュータやAIの得意とするところだ。そういったデータと株価の相関関係の分析では、ファンドマネージャーを上回る側面を持っていることは間違いない。ただ、ビッグデータでは、今のところアナリストを補完することはできない。機械は投資判断の中で、情報それぞれの重要性を判断することは、難しいといわれている。

重要なパラメータを判断するのはファンドマネージャーの重要な役割だろう。AIでは、ビッグデータの分析なのでどちらかというと市場のコンセンサスに近くなり順張りになる傾向が強くなりそうだ。アルゴリズムによるシステム運用が普及したことで順張り投資家が増えた。ただ、AIでは企業の大きなターンラウンドや新製品や新サービスで企業が大きく変化することを嗅ぎ取るといった作業は現時点ではまだ苦手だろう。ファンドマネージャーは司令官との役割を増ながら、AIと共存していくだろう。

平田和生(ひらたかずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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