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Written by 濱田優 26記事

リディラバ安部氏インタビュー

「すかしたリベラルがむかつく」 竹中元大臣に正面から意見をぶつけた男<上>

「竹中平蔵」という名前を聞いてどういう言葉が思い浮かぶだろうか。元総務相、元金融担当相、郵政民営化、慶應大教授、自民党、小泉内閣……こんなところだろうか。小さな政府、新自由主義といった言葉も含まれるかもしれない。

メディアが報じる竹中氏のイメージは、まさに彼こそが「格差の生みの親」と言わんばかりのものだ。その真偽はさておき、竹中氏がいわゆる「弱者に対して厳しい人」というレッテルを貼られていることは間違いないだろう。

一方で社会的弱者の声に寄り添う存在として知られているのが「社会起業家」だ。彼らは、市場経済において生まれてしまう社会的弱者(弱者の基準には金銭的なもの以外も含む)の声を、事業を通じて、つまり市場という枠組みのなかで拾い上げようとする人たちだ。これらの一見、相対する立場にある2人の対談本が刊行された。竹中氏と対談し、2016年12月に共著『日本につけるクスリ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓したのは、社会起業家の安部敏樹氏だ。

安部氏は「社会の無関心を打破する」ことを目指し、あらゆる社会問題の現場に訪れるツアー(スタディツアー)を主催する一般社団法人リディラバを立ち上げ、代表を務めている。

もともと家出をしたり家族へ暴力をふるったりするような子供だったが、落ちこぼれの学生が東大合格を目指す漫画『ドラゴン桜』(三田紀房著、講談社)に感化されて一念発起して学習に励み、東大に合格。在学中にマグロ漁船に乗ったり、史上最年少で東大で授業を受け持ったりというユニークな経歴を持つ安部氏は、同じく在学中にリディラバを立ち上げている。

新刊ではテーマとして税金、格差、政治、地方自治、メディア、教育が取り上げられており、幅広いジャンルで今の日本が抱える課題を浮かび上がらせ、彼らなりの処方箋も提示した。安部氏に、対談を通じて浮かび上がった2人の意外な共通点、そしてそれでも意見が合わなかった部分について、振り返ってもらった。(インタビュー・構成:濱田 優 ZUU online編集長)

社会起業,竹中平蔵,NPO,格差
(写真=濱田 優)

プロフィール
安部敏樹 1987年京都府生まれ。2006年東京大学入学。大学在学中の2009年に『リディラバ』を設立、2012年に法人化。KDDI∞ラボ最優秀賞など、ビジネスコンテスト受賞歴多数。現在は、東京大学で、大学1~2年生向けの「社会起業」をテーマとした講義を持つ。また、東京大学大学院博士課程(専門領域は複雑系)に所属し、研究活動にも従事している。著書に『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP社)がある。(あべ・としき)

リディラバ 社会の無関心を打破する「問題意識発信のプラットフォーム」。スタディツアーの実施のほか、問題意識を集めて共有するWebプラットフォーム「TRAPRO(トラプロ)」を運営している。名称は「Ridiculous things lover」 (バカバカしいことが好きな人)を略した造語に由来する。 http:// ridilover.jp/

朝まで痛飲して二日酔いで対談へ 「竹中平蔵と本を出して失望」という声に驚き

──書籍刊行後の周囲からのリアクションはどうでしたか?

一番驚いたのは「竹中平蔵と本を出して失望した」というものですね。「安部さんはそんな人じゃないと思ってた」とも言われましたし(笑)。竹中平蔵さんとセットになるだけで批判がくる、ネガティブな感情を持つ人がいることが新鮮だった。

ただそう言っている方もすごく偏っている訳ではないんですよね。多分イメージの話がすごく強い。僕は彼に対してそこまで詳しく知っているわけでもないからネガティブでもポジティブでもなかったのですが、竹中平蔵という人はそういうレッテルがはられちゃう存在なんだなと。社会課題の現場に近いところで活動している自分とは対極にいると思われているということですよね。

──たしかに考え方によっては対極的な組み合わせだと思えます。編集者としてはちょっと「やられたな、いい組み合わせ・企画だな」と思いました。

本書の編集者の方は、僕の本を出そうと5年くらい考え続けてくれていた方で、こちらの思想もよく知ったうえで、竹中さんとの対談を提案してくれたんです。この本でよかったのは、いろんなテーマを扱わせてもらえたこと。仕事柄もありますが、僕やリディラバのスタッフはある特定の課題だけを見るというよりはいろいろな社会問題を俯瞰して見ているところがおそらくユニークなんですよね。物事を横串にして、抽象化するのが好きな考え方を、伝えやすい形に編集の方が気をつかってくれたんでしょう。楽しかったです。お話していて、竹中さんもそういうの好きなんだろうなと思いました。

竹中さんとのお話は基本的にとても楽しかった。考え方は違うけど人間的には好きです。論理的で議論しやすいし、ユーモアも皮肉も好きで話していても面白い。対談も3回の予定だったんですが、盛り上がってお互い楽しかったから、1回追加したほどです。

実はそのうち1回は僕朝までめちゃくちゃで飲んじゃって。テキーラを相当飲んでいて、電話で「ちょっとやばいくらい呑んじゃったんですが」みたいな話を編集者にしたんですが、「とりあえず来てください」と言われてフラフラしながら行ったんです(苦笑)。酒臭い僕に竹中さんはコーヒー頼んでくれたりして優しかったですが、さすがに反省しています……。

このままでは日本は撤退戦を強いられる 皆がハッピーになるには経済成長しかない

書籍画像
(外部サイトに飛びます)

──意見対立もあったそうですが、2人の経済成長に対する考え方、スタンスは似ていますね。

だって皆がハッピーになれるのは勝ち戦しかないですからね。このままだと日本は確実に撤退戦を強いられる。既にしんがりを高齢者にするのか若者にするのかでもめていますから。いかに今の負け戦っぽい雰囲気を乗り越え、勝ち戦にしていくかが大事。意外にそこは竹中さんと意見の合うところですね。

僕は社会課題の現場に足を運ぶという意味では高齢者の介護施設にも行けば、一方で児童擁護施設や学校にも行って10代やもっと年下の子どもたちの環境も見ている。そういう中で思うのは、高齢者と若者が「どちらが恵まれているからズルい」という風に対立する議論には意味がないな、と。

だって政治家が票を考えたときに、高齢者ケアを手薄くは絶対にしないでしょう。僕は20代ですから世代的にも若い者の味方でいたいけど、だからといって「高齢者なんかケアしなくていい、若者に金を回せ」と言っても何も変わらない。そうして考えていくと、唯一ある答えは、経済成長をして、新しい余剰分を若者に突っ込むことしかないんですよ。

──安部さんはもともとそういう、経済成長を重視する考えを持っていたのでしょうか?

現場を見てそうなった感じですよね。僕は昔から家庭で事件を起こしたり(編集者注:安部氏は14歳のときに親にバットで殴りかかったことがあるほか、学校にもあまり行かず補導されるなど、いわゆる「不良少年」だった)、反社会、反大人の人間だから、基本的には「若者にお金をもっと回せよ!」と思っているところもあるんですが(笑)、いろんな人の話を聞いたり現場を見ていくなかで、誰か特定の悪人がいるわけでもないし、高齢者と若者とで責任を押し付けあっても仕方ないなという風に変わってきた。

優秀なやつが政治の世界に行かないことに問題意識がある

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(写真=濱田 優)

そして僕たちが仕事で扱っているのは社会問題を事業として解決していくことですが、そこは成長産業にもなりえるなとも思っています。ここ(リディラバは一般社団法人のほかに株式会社もある)で少しですが雇用も生んでいますし。

もともと政府や自治体が多額のお金を使って社会課題の解決に取り組んでいるのだから、民間が参入していけるようなお金、マーケットの大きさはあるということ。もちろんステークホルダーが複雑で受益者負担でお金が使われない、つまり、企業のように顧客に直接お金を払ってもらえる構造だとは限らないなど、民間が入ってこれなかった理由もあるのですが、そこを越えると産業になるんじゃないかと思っています。社会問題は儲からない分野だ、というイメージは事業を通じて覆してきたいですね。

──竹中さんと意見が対立したのはどういう部分だったのでしょうか?

一つは選挙権の行使の話ですね。若者はなぜ投票に行かないのかという命題に対し、単純化していえば、竹中さんは、選挙は民主主義の仕組みですでに用意されているので、むしろ来ないほうが悪いというスタンス。彼は「投票に行かないのは不満がないからでしょ」と考える。

僕はそうではなくて、特に若い世代で投票しない人はあまりにも世の中が複雑になりすぎて自分たちが変えるイメージができなくなってきたからだと思っている。社会に対して、諦めてしまっている人が今増えているんじゃないかと。

ただこれはどっちが正論という話ではなくて、物事の見方です。おそらく僕のほうがよりシステム論的なところに寄って物事を見るタイプなんだろうなと。たとえばアルコール中毒の人に対して、「なぜお前はアル中をやめないんだ!」と言って個人を責めても仕方ない。その背景には、何か別のシステムが働いているはずと考えて、そういうところまで含めて議論したいということです。

もう一つは貧困と格差の話。竹中さんは、格差はインセンティブだからいい、貧困状態さえなくせばいいんだという立場。あくまで貧困に対しての問題意識が強い。それに対して僕は貧困だけではなく、格差それ自体に負の効果があると思っている。その事実は最近になって少しずつ研究でも指摘されていますが、実際のところどこまで影響範囲が大きいのかはこれから議論されていく分野でしょう。

──安部さん自身が政治家になるよう勧められることもあるのではないでしょうか

政治に関して強くモチベーション持っている方が他にいっぱいいらっしゃるんで、基本的にそういう方に任せたいですね。僕個人の話をすれば、社会の意思決定の仕組みをもっとよくしたいという点には強いモチベーションがあるので、その実現のために未来において自分が行動を起こす可能性はゼロではないのかもしれませんが。

ただ、すごい優秀なやつが政治の世界に行かないじゃないですか。そこには問題意識がありますね。僕は経済成長を目指す左派・リベラルというのがわりと自分のスタンスに近いんですが、たとえば自民党では小泉進次郎さんとか以外で中道左派を担っている人たちが少ないなと思っていて。自民党は加藤の乱以降そういう人が出づらいのかもしれませんが、一有権者としてオルタナティブは大事だと思います。与党の中にも、野党にも素敵なオルタナティブが欲しい。そこでアクション起こす人がもっと増えたらいいなとは思いますね。

あとはまあ、すかしたリベラルがむかつくっていうのもある(笑)。すかさないっていうのは大事ですよ。
後編はこちら
(ZUU online 編集部)

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