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今回はNISA制度に含まれている問題点について述べていきたいと思います。NISA投資から生じる利益を非課税として投資をしやすくするというメリットがある制度ですが、一方でデメリットもあると言われます。

NISA制度を賢く活用する(あるいは考慮の上で活用しないという選択もありえます)上で、NISAが持つリスクないしはデメリットについて知っておかれることも重要言えると思われます。


東京オリンピックとの関係でのNISA(ニーサ/日本版ISA)制度が抱える問題点

2020年に東京でオリンピックが開催されることが決定しました。東京オリンピックの開催に伴い、インフラ整備の必要性から、建設や運輸、不動産などの株価の向上が期待されています。

ところで、NISAは制度の利用スタートから原則として5年で非課税の期間が満了し、通常の課税対象の口座に金融商品を移すことになります(ロールオーバーと言われる制度を利用すれば最長10年間、非課税のメリットを受けることができますが、ここでは基本の5年間を想定して考えます)。
そして、通常の口座に移す時の金融商品の価格は、その時の商品の時価が取得価格となります。そのため、金融商品を購入時よりも価格が下落した商品を課税対象口座に移した後、再度値上がりをしてしまうとかえって税金が高くなることになります。

とすると、東京オリンピックの開催で現在、値上がりしている、あるいは2014年以降値上がりが見込まれる株式を購入後、オリンピック開催が近くなった5年後に株価が低迷し、その後持ち直したという場合(オリンピックの準備が完了した時点で株価が下がり、その後、安定した価格に戻るということは十分予想が可能なこととなります)NISA口座で金融商品を購入したことによりかえって税金がかかってしまう可能性がありえます。

そのため、現在(本稿は平成2013年10月現在で執筆しています)オリンピックの関係から株価上昇が見込まれる株をNISA口座で購入しても、5年間の非課税期間満了時にはオリンピックの準備完了などで株価が低迷し、その後、通常口座に移した後に、再度株価が安定した場合には損失が生じる可能性があります。東京オリンピックも、(もちろん非常に意義のある大きなイベントですが)投資の観点から、長い目で考えた場合には、その後の株価の変動なども考慮に入れなければならなくなります。
NISAの5年間の非課税期間、通常の口座に移す場合の取得価格のルールも考慮した上で、金融商品を選ぶことが重要となります。


消費税増税との関係でNISA(ニーサ/日本版ISA)制度が抱える問題点

次に、NISA制度との関係で考えたいリスクとしては、消費税増税です。消費税は8パーセントになり、次は10パーセントとなることが予定されています。
消費税は、国民のふところを直撃しますので、消費が冷え込む可能性は否定できません。これまで購入していた商品が、日常品からマイホームなどに至るまで1割増で買わなければならなくなります。そのため、消費に直結する会社の株式等は低迷する可能性があり得ます。

一方、NISA口座を利用して非課税のメリットを受けるためには、新たに金融商品を購入しなければなりません。そこで、新たな金融商品を購入するに際して、レジャーなどの株式の場合には、消費が落ち込むことが予測されることから、購入しても株価が低迷してしまい、損失を被る可能性がありえます。そして、NISAでは、損益通算や損失の繰越控除ができないなど、NISA口座で生じた損失はすべてそのまま感受しなければなりません。

そのため、消費税増税が決定した今、NISA口座でレジャーなど消費の低迷の中では伸び悩むことが予測される株式を購入することは危険があるという問題があります。


そもそもNISA(ニーサ/日本版ISA)制度にはあまり価値がないという考え方

さらに、NISA制度については、実はあまりメリットがないのではないかという、「NISA否定論」ともいうべき考え方もあります。NISAは非課税のメリットがあることが強調されがちですが、非課税の恩恵を受けることができる投資の元本は100万円までであり、投資資金に余裕がある場合には、そのメリットは大きくないとも言えます。

むしろ、損益通算ができないことや損失の繰越ができないことなどデメリットの方が大きいと言えるかもしれないという考え方です。NISA制度の利益は「享受できれば幸い」という程度の姿勢により、あまり重視しないということも一つの投資判断としては合理的ということができるかもしれません。このようにNISA制度自のメリットが少ないと考える意見もあります。


NISA(ニーサ/日本版ISA)を活用するかどうかもひとつの投資判断

このようにNISAは、オリンピックや消費税などの経済情勢、政治情勢などに大きく左右されたり、制度自体のデメリットに着目した場合には構造的に利益が少ないのではないかという考え方があります。

制度は人間が考えるものである以上、完璧なものはなく、しかも投資という流動的な事柄についての制度ですので、最終的には「使ってみなければ得か損かわからない」ということも否定できないかもしれません。その意味で、NISA制度を利用するかどうかということ自体、ひとつの投資判断と言えるかもしれません。

しかし、大事なことはご自身の資産形成の目的(例えば、結婚資金を貯める、老後の年金の上乗せにするなど)に沿って、余剰資金の範囲で、ご自身の信じる判断に従い投資をされることであると思われます。いずれにしろ、NISAは「良くも悪くも一考の価値がある」制度であるということができると言えるのではないかと思われます。

>> NISA始める賢い資産運用〜口座開設の基本を解説〜

photo credit: Ben Terrett via photopin cc

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