メディアにも求められる「善良な管理者」
--Webメディアについて話題になることが多いと思いますが、メディアに登場する機会の多い新井さんが感じるメディアへの期待や問題点について教えてください。
僕は基本的にすべて「コミュニティ」の発想で考えます。要は何でも何かの集まりなわけです。そのうえで今は「管理者の時代」だと言っているんです。善良なる管理者が重要な位置を占めている。
コミュニティができ、なんらかのシステムが生まれたとする。その良し悪しは管理人の質で決まる。管理人が、善良なる管理者としてきちんと機能するか、それが問われています。
僕らも「いい会社」として投資したり紹介したりしますが、僕は善良な管理者として管理している感覚です。だから投資先で問題が起こると、善良なる管理人として怒ります。そしてちゃんと改善してるか確認をして、お客さんに伝えています。
要は、質的な担保を管理人がきちんとするかどうか。それはメディアも一緒です。それができないんだったら、やめたほうがいい。そこにポリシーがなかったら、訳の分からない集まりになる。必ずポリシーがあって、そのポリシーがしっかりしてるということ。それはクラウドファンディングも同じで、理念、ポリシーがなく、それを守られるよう管理人が機能しないと空中分解します。
--何か起こったときに、誰も怒ってくれないコミュニティは駄目だと。
牽制が働きませんから。うちは個人投資家1万6000人がいってくる。「ここっていい会社なんですか?」って。それは重要な機能です。うちに理念がないなら誰も何もいってこないはずです。牽制が働かないと、発展成長は望めない。
数字が第一優先にくると、訳の分からない集団になる。それが経営としてそれがまかり通っていることが問題です。みんなが「おかしいじゃないか」と言えないといけない。理念が先にこないといけない。企業や集団、コミュニティがあれば、必ず理念が必要です。
僕らが「いい会社」という時、自分たちは覚悟している、いろんな方から指摘や批判を受けることを。お客さんに、その会社がやっていることや、やろうとしていることについて説明します。いいと思う理由も含めて。それが納得してもらえない、もしくは自分たちが説明できなくなったら、外すしかない。言い換えれば、いい会社は、社会が決めることなんです。そこに対して、僕は善良なる管理者として接するし、運用責任者としてプロとしての結果を提供する責任を果たすだけです。これは明確で、そこには覚悟が必要ですね。
--次は子どもたちに向けて本を出すそうですね。
日本の教育で問題だと思っているのは、お金の教育です。誰にでも必要なのに、誰も教えてくれないんです。お金については親も知らない。お金との付き合い方、距離の取り方、お金でできること、できないこと――。要はお金とは何かということについて考えさせる時間が必要です。主に高校生とその親御さんに読んでもらいたいと思っています。
そこではテクニカルに、投資とか貯蓄とか、経済がどうのこうのと書くつもりはないんです。それは他のものを読んでもらって、もっと根源的で大切なことを伝えたい。
親子でお金について議論ができる状況をつくりたいんですね。基本的に日本は、お金に関して食卓でしゃべることはないんですよ。そのきっかけをつくりたい。そうしないと、働く意味も分からないし、お金のために働くことになってしまう。お金を稼ぐことが目的化しちゃって、楽しい生き方にはならない。幸せになるために人は生きるので、幸せになるための手段としてのお金であって、それが目的ではないんです。お金が第一優先になっちゃったら、人生も駄目になるし、会社でいえば経営も駄目になる。経営の仕方も人としてのあり方も、基本的には同じです。
優先順位は、人としてどうありたいか、それを達成する手段としてのお金。お金が大事じゃないとは一言もいってない。ただ、この順番を入れ替えると何でもありになってしまう。
銀行預金替わりになればいい 若い人が資産形成を続けていけるように
--今、投信はどういう形で回しているんですか?
ハイブリッド型といっていて、ジャッジメンタルにいい会社を選び、決めたらあとは100年続くように論理的にオペレーションする。投資先のウェートはほぼ1%ずつとすべて同じで、その比率の維持を毎日やってます。比率が上がったら上がった分を売るし、下がったら買い増す。
--個別企業の株価の高低でなく、ポートフォリオ全体のバランスだけで判断するんですね。
お客様にとっての運用成果そのものは全体が重要で個別銘柄はあまり関係ないんです。ポートフォリオ全体のリスク管理を考えると、よく「この企業は今調子いいからもっと上がるだろう。だから今は売りたくない」とずっと持つことになったりする。それはもうその人の予測になっちゃっているというリスクが発生してます。
もっと上がるだろうと予想してるのはその人ですから。僕らは誰がやっても結果が出るような仕組みをつくろうとしている。仕組みで勝てるようにつくらないと、100年続かない。その人がやめたら終わってしまうから。
僕は新卒で信託銀行に入ったバブル最終入社組で、半沢直樹と同期という設定なんですけど(笑)、当時は5年ものの商品で利回りは年率4~5%あった。その頃なら誰でも財産形成できたんです。そういうもの、仕組みをつくらないと若い人たちが財産をつくれない。だからファンドの期待リターンは年率4%に設定していて、それさえ確保できればいいと考えています。
--基本的に4パーセントをとり続ける。
長期的に年率4%が達成できるようリスクは最小限にする。だから現金比率が高いんですよ。投資を積極的にしたいわけでない方々にとってみれば、預金にかわるものが欲しいだけだから。
でもそれは今の環境下では、元本保証の商品はできない。リスクをとらないといけないから、最低限のリスクになるように商品設計です。投資先がいい会社であれば、お客様は長く続けてくださる。社会性を持っていて、自分のお金が役に立っているという実感があって、なおかつ銀行預金するよりはよかったなと思えるようものを提供したい。
--どの銘柄を買ったらいいか、どう運用したらいいのと聞かれることがあると思います。どう答えますか?
その人の知識と経験にもよりますが、必ず申し上げるのは、「全額を、鎌倉投信のファンドに投じるというような投資はやめてください」ということ。僕自身は、分散投資したらみんなが不安になるから全額投じていますが、基本的にそんなことやっちゃ駄目なんです。
基本的には分散投資で、投資対象とタイミングを分散する。たとえば100万あったら10分割したりして、投資するタイミングを分けるとか。あとあまり強欲にならない、あせって投資をしない。そういうことばかりいってます。
--ロボアドなど簡単に投資できるサービスが誕生していますが、その辺はどう見てらっしゃいますか?
僕はクオンツ(計量調査)をずっとやってきたので、違和感はないですが……これも自分が分からないものは買わないということだけです。お任せするのは構わないでしょうが、分からないものに投資するのは危険です。分からないものへの投資は、何も見ないで運転するようなものです。
--よりよい投資、資産形成を続けるにはどうしたらいいのでしょうか。
消費も投資も基本的には同じで、何からできているのかに関心を持っていただきたい。例えば、顔が見えるもの、見える関係性を大切にして欲しい。
関心を持ってつながりつづける。でないと、投資をしたときは「いい会社」「いい投信」だったかもしれませんが、関係性がなければそれが維持されているかどうか分からない。自分の思い込み、決め付けになっているかもしれない。たとえば運用している間に、全然違うところに投資しているかもしれない。しっかり相手の顔が見えるもの、コンセプトやポリシーに確信が持てる、共感できるものに対して投資をしてほしいですね。
--そして自分が善良なる管理者でいられるコミュニティにだけ所属していたいですね。
それは投資に限らず何についても言えますね。
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