要旨
- 中国では、2019年1月から税金と社会保険料の徴収を税務局で一本化する体制となった。少子高齢化が進展し、国の財政赤字が拡大する中で、社会保障に関する支出が急増している。これまで見逃してきた社会保険料の徴収漏れにメスを入れ、少しでも社会保障財政をカバーすることが目的であろう。
- 「中国企業社会保険白書2018」によると、2018年、社会保険料をきちんと納めた企業はわずか27.1%であった。およそ7割の企業は、社会保険料を本来より少なく納付していたことになる。
- 中国の国泰君安証券研究所は、2017年の徴収漏れの総額をおよそ2兆元と試算している。これは同年に政府が社会保険向けに支出した財政補填1.2兆元のおよそ2倍の金額である。
- 社会保険制度を運営していく上で、適正な保険料が徴収できない事態が20年以上も続いていたことになるが、企業側を一方的に責めるわけにもいかないであろう。企業の負担割合は世界的にみても高いからである。
- 中央政府としては、保険料率を下げることで、まず、正しい基準に基いた保険料納付を企業に徹底させるつもりであろう。保険料率はその後、段階的に調整することも可能である。
- しかし、今後、規定通り保険料を納めるとなると、中小企業や個人事業主では手元に収益がほとんど残らない状態も考えられる。慎重な調整がされなければ、企業活動に与えるマイナスの影響は相当大きいものとなるであろう。