要旨
- 5月23日~26日の欧州議会選挙では、EUの統合を推進してきた中道右派、中道左派の2大グループの初の過半数割れが予想されている。
- その背景として、EU懐疑派への支持拡大が注目されがちだが、マクロン大統領の与党など、より深い統合を望む中道グループや環境グループへの票の分散も影響する。
- 政党グループの構成は、選挙後に変わる見通しだ。イタリアのサルビーニ副首相は右派のEU懐疑派を結集したグループ形成に動いている。国内で高い支持を誇る一方、EUと価値観を巡って対立するハンガリー、ポーランドの与党とも連携を探る。
- 新議会では、広義のEU懐疑派の獲得議席数は、全体の3分の1に届く勢いだが、親EU派が優位を保つ見通しだ。
- EU懐疑派が広く持続的に共同歩調をとることも難しい。EU懐疑派には、右派ポピュリストのほか、左派EU懐疑派などのタイプがあり問題意識は異なる。ロシアに対するスタンスには隔たりがあり、移民対策では右派の間でも利害が対立する。
- 議会選挙後のEUの政策の急展開やEU懐疑派のEU機関のトップの誕生という展開は考え難い。
- むしろ問題となるのは政策の停滞だろう。分断した政治・社会状況で「多年次財政枠組み」の議論の難航は避けられず、米国との通商協議の行き詰まるリスクも気掛かりだ。