(本記事は、西村 貴好氏の著書『ほめ下手だから上手くいく 「ほめられない」を魅力に変える方法』ユサブルの中から一部を抜粋・編集しています)

禁止,ダメ
(画像=PIXTA)

「ほめる」を他人のコントロールに使わない

このあと、ほめるポイントと実践についてお伝えしていくのですが、最初にこれだけはぜひ知っておいていただきたいという大切な点をお伝えいたします。「ほめ達」がもっとも大切にしていることです。このポイントをしっかり押さえておかないと、あなたのほめ言葉が相手に生臭く伝わります。逆にこのポイントをしっかり腹に落としておくと、どんなほめ方をしても大丈夫です。

それは、
「ほめることを相手のコントロールには使わない」
ということです。

ほめて相手を上手に動かそうと思うと、その意図が知らず知らずのうちに相手に伝わってしまいます。「ほめる」ことを相手のコントロールには使えないのです。人は自ら気づき、変わることはあっても、他人を変えることはできないのです。

他人には影響を与えることしかできません。そして影響を与えているように思えないときもあります。それでもなお、その人のことを信じることはできるのです。その人のことを信じることができたとき、それは自分を信じるという自分自身のしなやかな心の強さとなります。

「ほめる」は人のためならず、回り回って我が身の幸せ。「ほめる」ことの効果は、自己完結なのです。

それでは「ほめる」の一番の効用とは何か。それは「ほめる」ことで自分自身の心が整いだす、この一点です。「ほめる」ことができると自分の心が整い、余裕ができて、周りの人との関係性が良くなるのです。

逆に言うと、自分の心に余裕がない状態では、周りの人のいいところは探せない、ほめることができないのです。ですからほめられない状態というのは、「今の私には心に余裕がないのです」ということを自分にも周りにも伝えているようなもの。

逆説的に聞こえるかもしれませんが、自分の心に余裕をつくるために、周りの人のいいところを意識して意識して、丹念に探していく。これが「ほめ達」が実践していることです。

なぜ、このポイントについて力を入れて説明するかというと、「ほめる」を学んだ人からこんな質問をいただいたからです。

「「ほめる」を学んで、すごく心が楽になりました。ただ、ほめたときに相手がうれしそうにしてくれないんです。私のほめ言葉がどうも相手の心に刺さっていないようなのです。私のほめ方、どこか間違っているのでしょうか」

この質問に対して、あなたならどう答えますか。「ほめ達」の答えはこうです。

相手の喜ぶ顔が見たい、自分の言葉が相手に刺さる反応を見たい。そこには悪意はないけれど、残念ながら潜在的なコントロールの気持ちがあり、それが相手に伝わってしまっているのです。そう、ほめて相手の反応を期待しない。これも大切なポイントです。「ほめる」は自己完結するもの、自分が豊かになるものと心に刻んでおいてください。

「ほめる」筋トレ、使えば強くなる

この章の最初にも書かせていただきましたが、「ほめる」ことは何よりも実践が大切です。実際にやってみること。「ほめる」をどれだけ頭の中で考えていても何も変わりません。まずは行動してみること、やれることをやってみること。肉体改造における筋肉をつけるトレーニングと同じ。トレーニングしないと筋肉はつかず、筋肉量は増えないのです。筋肉は使えば使うほど太く、力を増していきます。それと同じように「ほめる」筋肉も使えば使うほど力強くなっていきます。

まずは簡単なトレーニングから、そして継続して行っていく。

「ほめ下手」だから正しく学べる

今この本を読まれている「ほめ下手」なあなた。「ほめ下手」でよかったのです。「ほめ下手」だという自覚があるからこの本を手に取った。そんな謙虚さを持つあなたには、

学びを受け取る素直さがあります。成長のために必要な素直さです。このような素直さを持つ人は、どのようなジャンルに挑戦しても必ず成果を得ることができます。

私は成長のためには三つの勇気が必要だと考えています。

① 失敗を恐れない勇気
失敗を恐れていては、何にも挑戦することはできません。一番成長している人は、一番多くの失敗をしている人。失敗は自分の限界を広げている証拠なのです。さらに言うと「この世に失敗はない!」すべては気づきであり、経験なのです。
② 変化を恐れない勇気
失敗を恐れない人もいます。すでに自分に確たる地位や評価があり、少々の失敗では自分に対する評価が揺るがない人は、失敗を恐れません。ただ、そのような人に必要なのが、変化してみる勇気です。今いる場所に安住するのではなく、次のステージに挑戦してみる。そのための変化を恐れない勇気が必要です。
③ すべてを受け入れる勇気
人にはプライドというものがあります。周りからの助言やアドバイスがうまく受け取れないときもあるのではないでしょうか。そんなときに、いったんは相手の言い分を受け入れてみる。自分の価値観とは違う異質な意見を受け入れてみる。最終的に、その意見を採用するかどうかは別として、一旦はすべてを受け入れてみる。これも意思が必要な勇気。そして、成長に欠かすことができないものです。

きっとあなたは、この三つの勇気のうちのどれかを使って、この本をお読みになられているのでしょう。素晴らしいご決断です。「ほめ下手」だから、そして素直さを持っているから我流にならず正しく学べるのです。最短距離で成果を手にすることができるのです。素晴らしい。

「ほめ下手」だから時間をかけて学べる

「ほめ下手」だから、これまで「ほめる」を積極的に活用してこなかったあなただから、焦る必要はありません。時間をかけて学び、実践していくことができるのです。

「ほめる」の効能には、すぐに出る効果と時間をかけて体感していく成果と2種類あります。時間をかけて体感していく成果こそが「ほめ達」の真価なのですが、その収穫を焦ってしまうと上手くいかないのです。

「ほめる」は種蒔きのようなもの。

種を蒔いてもその成果はすぐには表れません。「蒔く」とは草冠に時(とき)と書きます。時間がかかるのです。土の中に蒔かれた種はすぐには地表に出てきません。発芽して芽が出るまでに時間がかかる。その時間を待ちきれなくて、掘り起こしたり、いじったりするとうまく発芽するものも芽が出なくなります。

大切なことは、蒔いたことを忘れるぐらい、常に次の種を蒔き続けることです。

「ほめ下手」だからこそ、急な成果を求めることなく、じっくりと「ほめる」種蒔きができると考えて、やがてくる、発芽、芽吹き、開花、収穫の時期を楽しみにお待ちください。

「ほめ下手」だから成果が大きい

「ほめ達」から見ると「ほめ下手」な人とは、常に低酸素トレーニング、あるいは加圧トレーニングをしているような人です。すごいです。これだけほめられたい人が多い今の時代において、「ほめる」ことを活用せずに人間関係を構築し、結果を出せていることはすごいこと。「ほめ下手」でやってこられたということはある意味、本当にすごいことだと思います。

そんな「ほめ下手」なあなたが「ほめ下手」を脱出し、「ほめ達」を身につけることができれば、これまで低酸素の環境でトレーニングしていた人が酸素たっぷりの環境で試合をするようなもの。加圧チューブをつけ負荷をかけてトレーニングしていた人が、すべての負荷から解放され自分の最大能力を発揮できるようになる。きっと自分でも驚くほどの成果を実感されることでしょう。

成果の体感が大きいので、さらに学び、実践しようという意欲も強くなります。さらなる成長への好循環も生まれるのです。なんだか始める前からワクワクしてきませんか。

ほめ下手だから上手くいく 「ほめられない」を魅力に変える方法
西村 貴好(にしむら・たかよし)
一般社団法人日本ほめる達人協会理事長 1968年生まれ。関西大学法学部卒業。 「泣く子もほめる! 」ほめる達人(ほめ達)として、あらゆるものに価値を見出すことを理念に2010年に「ほめ達検定」をスタートさせる。検定3級受講者は全国で5万2千人を突破(19年8月現在)。受講者数は年々拡大している。企業向け研修、講演会やセミナーなども年間200回以上。「ほめ達! 」を導入し、「ほめちぎる教習所」に生まれ変わった三重県・南部教習所は、生徒数増加、免許合格率アップ、卒業生の事故率が半減と素晴らしい成果を上げている。 著書に、「結果を引き出す大人のほめ言葉」(同文館出版)、「人に好かれる話し方41」(三笠書房)、「ほめる生き方」(マガジンハウス)などがある。