(本記事は、西村 貴好氏の著書『ほめ下手だから上手くいく 「ほめられない」を魅力に変える方法』ユサブルの中から一部を抜粋・編集しています)

言葉
(画像=PIXTA)

言われたい言葉を決めて生きていく

自分が言われてうれしいほめ言葉、その言葉の中から二つか三つの言葉を選んでいただきます。選ぶ基準は、自分がこれから生きていく上で、こんな言葉を言われたいな、こんな言葉を集めて生きる人生って、きっと素敵な人生になるだろうな、そのような言葉を選んでいただきます。

このワークとその先のいくつかのプロセスは、自分自身の人生を「ほめ達」らしく、より主体的に生きていく上で非常に重要なので、この本をお読みのあなたもぜひ、実際に挑戦してみてください。

まずは、自分が言われたい言葉を5分程度で書き出してみる。そして、その中から言葉を選ぶ、選ぶ言葉は、今自分がすでに言われている言葉でもOK。まだ言われていないけれども、こんな言葉を言われたいなぁなど、自分が目指す姿でもOKです。

ちなみに私もこのワークを自ら実施しました。私が選んだ言葉は、この三つです。

「元気ですね」「笑顔がいい」「勉強熱心」。そして、この三つの言葉を言われようと決めたのです。

「西村さんって、いつでもめちゃくちゃ元気ですよね!」
「西村さんって、笑顔がいいですよね!」
「西村さんって、勉強熱心で話題が新鮮で面白い、話を聞いていて時間があっという間に過ぎます!」

と、言われたいと決めたのです。そして、そのように常に意識して実践しています。

私も人間なので、年間220回以上、全国を移動して講演会や研修をしていると、たまのたまには疲れているときも実際にはあるのです。ただ、「西村さんって、いつでもめちゃくちゃ元気ですよね!」と言われたいと決めたので、人前に出るときには、「こんにちはー!」と元気いっぱいに振舞っています。

その実、ホテルの部屋に戻って、ひとりきりになった瞬間「はぁー」とベッドにへたり込んでしまうこともあります。ただし、人前に出るときには、元気いっぱい!

笑顔もそうです。意識しています。笑顔して生きていくと決めましたから。ただそれを続けるのもなかなか難しいものです。

先日もこんなことがありました。「この前、新大阪駅で西村さんを見かけましたよ!」

「えっ、声掛けていただいたらいいのに!」
「いや、難しい顔をして歩かれていたので、声掛けられなくて」

大いに反省しました。それ以来、自分の笑顔のチェックポイントというか創造ポイントを設けるようにしました。電車移動時は、Suicaを改札にピッとしながら「笑顔」。エレベーターのボタンを押しながら「笑顔」。強制的にここを通るときには笑顔、あるいは笑顔に見えるまぶしそうな顔をすると決めているポイントを作っています。

このように意識して生きていくと、次第にそのような言葉を言われることが、多くなってきます。「西村さんって、本当にいつでも元気ですよね」「西村さんの笑顔って素敵ですよね」という風に。

人間生まれ持っての性格はあります。生まれつきの性格はありますが、自分が周りの人にどのように評価されるかは、自分が周りの人にどのような表現をしているか次第なのです。

自分では、明るい性格のつもりでも、表現の仕方、声の大きさや表情がそうでないと違う評価になってしまうのです。

一度きりの人生、限りある命なら、なりたい自分になって生きていきませんか。

「なりたい自分」をイメージして、その姿を演じて生きていく。

するとだんだん、少しずつ少しずつ、時間をかけて自分がなりたい自分に近づいていきます。

どうでしょう、なりたい自分、言われたい言葉、イメージできましたでしょうか。言葉が明確になり、その言葉をもらっているイメージが明確になると、それはやがて現実となります。

言われたい言葉を選ぶポイント

時間の関係上、実際の検定参加者に言葉を選んでいただき、実践を宣言していただくことはできないのですが、本書をお読みのあなたは、ぜひ、この時間の中で言われたい言葉を選び、その実践を宣言していただきたいのです。いい話を聞いたな、で終わるのではなく、二度目の人生を体験していただくために。そして、言われたい言葉を選ぶポイントについても解説させていただきます。ポイントを押さえて、言われたい言葉を選んでいただくと、さらに自分自身の成長が加速します。

言われたい言葉選びのポイント
・自分が今できていないこと、少し意識しないとできないこと
・他者からの評価が可能なこと
・誰かの役に立つ内容であること
・自分にとっても価値があること

まず一つ目は、自分が今できていないこと、苦手なこと、意識しないとついつい忘れがちであるということです。自分が今、何もしなくても自然にできていることではなく、今はできていないけど、そうなりたい姿をイメージする。少し意識しておかないと、あるいは、かなり意識しないと難しいという姿で、自分がなりたい姿を選んでください。少し背伸びした姿をイメージするということです。

「ほめ達」になる前の私は、笑顔が苦手だったのです。今も意識しないと、ついつい難しい顔になってしまいます。ですから、私にとって「笑顔して」生きていくということは、少し背伸びしながら生きていくということ。「背伸びもやがて身の丈となる」。私の好きな言葉です。

二つ目は、他者評価が可能な言葉を選ぶということです。「言われたい言葉」というところがポイントなので、周りの人が見て、そのような姿に見えることが大切です。「私は、何があっても「心の中で」笑顔して生きていきます」。素敵な生き方ではありますが、「心の中で」は、周りが見ても分かりません。「いつでも笑顔」や「笑顔しか見たことない」「ネガティブな言葉を使っているのを聞いたことがない」。周りが、「確かにこの人は、そのように生きている」と評価可能な言葉を選んでくださいね。

三つ目は、選んだ言葉を実践することで、誰かが喜んでくれる、誰かの役に立つことができる言葉を選ぶということ。せっかく素敵な自分に成長していくならば、誰かの役に立つ、喜んでもらえることを目指しませんか。「ほめ達」の考え方の基本は、自利利他一体。人を幸せにする人が最も幸せになる。「ほめる」人が、最も豊か。自分自身の成長への挑戦も誰かを幸せにするため。そう考えて実践していくと、不思議なほど、この挑戦が継続できてしまうのです。

そして、最後は、この挑戦の結果が自分にも喜びをもたらすものを選ぶということです。なりたい自分になって、自分自身が心からうれしく、楽しく、安心して生きていけるものを選ぶということ。

私が選んだ言葉「いつでも元気」「笑顔がいい」「いつも勉強していて話が面白い」。この三つの言葉をいつも言われる状況になると、私は孤独な状態ではなくなります。ありたい姿になることが求めている環境を作り上げてくれるのです。ありがたいことに私は、今、これらの言葉を集めることに成功して、安心の中で生きることができています。

「シャンパンタワーは自分から」という言葉があります。平べったいシャンパングラスをピラミッド状に積み上げて、一番上のグラスにシャンパンを注ぐ。一番上のグラスがいっぱいになると2段目にシャンパンが流れ込む、2段目がいっぱいになると、その下の段へ。上が満たされて、つぎの下の段へ。この一番上のグラスが自分の心なのです。

自分が満たされて、はじめてその次へ、それは家族であったり、大切な仲間であったり、友人であったり、そしてまた次の段へ。会社の仲間やお客様、そしてさらに社会へ。

どんどん広がっていくけれども、最初の一番上のグラス、自分の心が満たされていないと、周りに広げていくことはできない。

この自分の心を満たすシャンパンが、世のため人のためになるものであるならば、シャンパンがどんどん自分の手元に集まり続けます。まず、自分が満たされ、さらに次の段へというサイクルが永遠に途切れることなく廻り続けるのです。

ありがたいことに私は今、その体験をさせていただいています。「ほめ達」をお伝えすることで、多くの人に喜んでいただいているのですが、この「ほめ達」というシャンパンがどんどん私の心に流れ込み、私の心が安心に満たされ続けています。

多くの方から感謝をいただき、まさに「ほめ達」は私に第二の人生を与えてくれました。

言われたい言葉を決めることで、自分の人生を決めることができるのです。

一度きりの人生、限りある命、自分の人生を主体的に、自分自身でハンドルを握り、しっかりとアクセルを踏み込んで生きていきませんか。

そして、もし、言われたい言葉のことを忘れていても大丈夫です。人間ですから忘れることもあります。

「ほめる」とは種蒔き

「ほめる」とは種を蒔くことです。成果が出るまでにはとても時間がかかります。透明の容器の中に入れられた球根ではなく、土の中に蒔かれた種です。透明の容器の中の球根は、根が生え、芽が出るところをリアルタイムで観察することができますが、土の中の種は、発芽の瞬間を見ることはできません。時間をかけて地表に現れるまでは、まったく変化を見ることができないのです。

変化を見ることができない、イコール、変化がないと思い込んでしまう。そうではなく、種は蒔かれた、と信じて待つことが大切なのです。待つことができないと、掘り起こしたり、いじったりして本来なら芽が出るはずのものも出なくなってしまう。

「ほめる」ことは信じること。種は蒔かれた、いつ芽が出るか、花が咲くか、実をつけるのか、それは分からない。ただ、種は蒔かれた、時期が来れば必ず、芽吹き開花する。そう信じることができる人、信じて待つことができる人、これが「ほめ達」です。

そして、待つことが苦手な人にお勧めなのが、蒔いたことを忘れるぐらい種を蒔き続けるということ。蒔いて蒔いて蒔き続けていると、ふと視線を移した瞬間、そこに芽吹きを発見できるようになります。うかうかすると、花まで咲いている! その花があなたに話しかけるのです。「私は、あなたが蒔いた種から生まれた花なのですよ」と。

種を蒔くという生き方は、感動ある生き方です。

小さな花と出会った、ある認定講師のお話です。

ある日、「ほめ達」協会の支部でもある南部自動車学校に、とある親御さんから電話がかかってきました。聞くと、その方の息子さんは人と接するのがあまりうまくなく、コミュニケーションを取るのが苦手。以前に通っていた教習所では怒鳴られて心が折れてしまい、途中で通うのを止めてしまった。そちらは「ほめちぎる教習所」と言われているが、うちの息子のような子でも教習してもらえるのか?という問い合わせでした。

南部自動車学校は、もちろんその生徒を受け入れ、「ほめ達」認定講師がその子の担当教官となりました。いざその子が通うようになると、会話が成り立たないだけでなく、顔すらも合わせてくれようとしない。担当の認定講師はそれでもその子をほめ続け、他の生徒よりもあきらかに技能取得のスピードは遅いですが、支え続け、教習レベルを少しずつ上げていったそうです。

どんなにほめても反応がないことから、さすがの認定講師も途中で心が折れてしまいそうになったといいます。しかし、その教官はあきらめずに、ほめて支え続けました。

時間はかかりましたが、その子はめでたく教習所を卒業し、免許を取得しました。

卒業時、その教習所では、卒業生全員にアンケートをお願いしています。その子のアンケートにはこう記してありました。

「僕は今まで何も成し遂げたことがありませんでした。最後まで継続して成功できた体験もありません。今回初めて免許を取って、何かを達成する感覚を味わえました。教官にたくさんほめてもらって、それが自分の心の支えとなり、ここまで来ることができました。本当は教習中にもお礼を言いたかったのですが言えませんでした。僕が免許を取れたのはT教官が支えてくれたおかげです。ありがとうございました」

そのアンケートを読んだ担当教官の認定講師は『やっぱり響いていたんだ』とうれしく感じると同時に、途中であきらめることなく、ほめ続けてよかったと思ったそうです。

十人十色というように、世間には色々な人がいます。打てばすぐに響く人もいれば、なかなか響かない人、先述した教習生のように「まったく反応のないように見える人」もいます。

しかし、「ほめる」「支える」という行為は、聞こえていないようでも相手にはちゃんと響いています。

打てば響いていることを、私たち「ほめ達」は経験として知っています。「信じている」ではなく「知っている」のです。多くの芽吹きと開花を目にし、多くの変化を見てきて知っているから「あなたの言葉は相手に響いていますよ」と言えるのです。

最初の開花との出会いまでは、時間はかかるのですが、ある時期からは時間が「ほめ達」の味方になってくれるようになります。時間がたてばたつほど、蒔いてきた種がどんどん開花して、花が咲く姿に囲まれて生きることができるようになります。

種さえ蒔いておけば、時間の経過とともに感動に包まれる「ほめ達」という生き方。あなたも小さな種、蒔き始めませんか。蒔いておくだけでOK。忘れてしまうぐらいがちょうどいいのです。

ほめ下手だから上手くいく 「ほめられない」を魅力に変える方法
西村 貴好(にしむら・たかよし)
一般社団法人日本ほめる達人協会理事長 1968年生まれ。関西大学法学部卒業。 「泣く子もほめる! 」ほめる達人(ほめ達)として、あらゆるものに価値を見出すことを理念に2010年に「ほめ達検定」をスタートさせる。検定3級受講者は全国で5万2千人を突破(19年8月現在)。受講者数は年々拡大している。企業向け研修、講演会やセミナーなども年間200回以上。「ほめ達! 」を導入し、「ほめちぎる教習所」に生まれ変わった三重県・南部教習所は、生徒数増加、免許合格率アップ、卒業生の事故率が半減と素晴らしい成果を上げている。 著書に、「結果を引き出す大人のほめ言葉」(同文館出版)、「人に好かれる話し方41」(三笠書房)、「ほめる生き方」(マガジンハウス)などがある。