“早食い”や“ながら食べ”をやめて、毎日の食事を豊かに

マインドフルイーティング
(画像=cheetah/写真AC)

「忙しくて食事はいつも“ながら食べ”」「ストレスで食べすぎてしまい後悔する」……楽しいはずの食事が苦悩のタネになっている人は少なくありません。これは人と食べものの関係がバランスを失った状態であり、その原因の1つに心の必須成分「マインドフルネス」が失われていることが挙げられます。

小児科医であり、瞑想の指導者であるジャン・チョーズン・ベイズは『Mindful eating 人生を豊かにする食べ方の習慣』のなかで、マインドフルネスとは「それぞれの瞬間に起きることに判断を加えることなく意識を集中させること」であるといいます。

そして、マインドフルネスは毎日の食事に取り入れることもできます。これを実践することで食べることは楽しくなり、肥満や食習慣の改善、ストレス軽減にも効果的です。今回は、忙しい人でも実践できて、毎日の食事が豊かになる習慣を紹介します。

※本稿は『Mindful eating 人生を豊かにする食べ方の習慣』(ジャン・チョーズン・ベイズ:著)の一部を再編集したものです。

忙しい人でも毎日実践できる「食べるマインドフルネス」

「マインドフルに食べること」においてもっとも重要なのは、食べるスピードを落とすことです。食事とはただおなかを満たすだけのものでなく、料理が来るのを待つ楽しみや、人とともに過ごす楽しみなども同時に味わうものです。食べるスピードを落とすだけで、こうした楽しみの気持ちを取り戻すことができます。

また、「食べる速度を落とす訓練をすると、健康改善に有効である」ことは研究によっても証明されています。さまざまな年代の人を対象にした世界各地の研究結果が、単に食べる速さを落とすだけで、体重増加(肥満手術後の体重増加も含む)、肥満、高血圧、高血糖、高脂血症、メタボリックシンドロームのリスクを減らすということを示しているのです。

そうは言っても、仕事や子育て、家事とただでさえ忙しいスケジュールの中で「マインドフルに食べている時間なんてない」「毎日忙しくて15分の時間もままならない」という人も少なくありません。

しかし、「食べるマインドフルネス」は忙しいスケジュールの中に、むりやり組み込まなければならないような「特別に何かをすること」ではありません。だから余分な時間は必要ないのです。

ここでは、本書の中から、すぐに実践できる2つの練習を紹介します。

利き手でないほうの手で食べる

1つめは「1週間、毎食、食事の一部を利き手でないほうの手で食べる」という練習です。これは食事だけでなく、飲みものやおやつも含めても問題ありません。

この取り組みを日々の生活に取り入れると、自分の中に「焦りの感情」があることに気づく、と著者はいいます。

そもそも、私たちはなぜ、食べることをそんなに早く終わらせたがるのでしょうか。朝食を慌てて食べて、それで何をしたいのか? メールチェック? メールチェックを大急ぎですませるのは、何のため? 仕事のスケジュールを調整するため……それから明日の天気を見るため……それからランチを食べるため……それから買い物に行く……と、やることはどこまでも続きます。

こういう日々を過ごしていたとき、著者は、はっと気がついたそうです。「そんな風に毎日を過しても、自分の中になにも残らないのでは」と……。それがきっかけとなって、不慣れな行為を食事に取り入れることで、手軽にマインドフルネスができることに気づいたそうです。

利き手でないほうの手を使うことによって、より柔軟な思考を持つことができます。そして、新しい技を習得するのは、何歳からでも遅くないということもわかります。(168ページ)

この練習で、日々マインドフルネスを実践して「今、この瞬間」の生き生きとした経験や喜びに集中し、普段どれだけ無作為に過ごしていたのかに気づくことができるのです。

【POINT】

利き手でないほうの手を使うだけで、無為に毎日を慌ただしく過ごしていた自分に気づく。

ひと口食べるごとに、フォークや箸を置く

2つめの練習は「食べものを口に入れたら、フォークや箸を、食器の上に戻す」というものです。ひと口を十分に味わって飲み込むまで、意識を口の中に向けて、食べものを楽しみます。それが終わったら、フォークや箸を取り上げて、次を口に入れます。

これをやってみると、ほとんどの人が食べものを重層的に口の中に押し込む習慣があることに気づくといいます。つまり、食べものを口に入れるともう意識がそこから離れてしまい、無意識のまま次のひと口をすくいとり、まだ最初の食べものが口の中に残っているのに放り込んでいるのです。みなさんにも心当たりがないでしょうか?

例として、著者が知人の看護師さんから聞いた話があります。

女性患者が、肥満外科手術のあと、食べものをひと口ずつよく噛んで食べるように指導されました。これは単に術後の注意だったのですが、その通りにしたところ、食べるという行為がこれまでとは大違いの、豊かで味わい深い経験になって、びっくりしたそうです。そして、その女性は言ったそうです。

「これをもっと早くに知っていたら、手術なんて受けなくてもよかった!」(172ページ)

この練習もまた、自分の「焦りの感情」に気づかせてくれると著者はいいます。まだ食べものが口の中にあるのに、さらに次のひと口を押し込もうとするのは、焦りの表れだからです。この練習をすると、自分の「焦りの感情」が、食べる以外の場面でも表れていることに気づきます。

電車がなかなか来ない……、病院で全然名前が呼ばれない……みなさんは、何かで待たされると、イライラしませんか。そんなときは自分に問いかけてみましょう。

「何でそんなに人生を生き急ぐの? 人生を楽しみたいと思っているのに」

意識がよそにいってしまっていると、食べものの味は半分もわかりません。意識を口の中にとどめ、食べているその瞬間に本当に集中し、ひと口ごとに間を置きながらゆったり食べることができ、それぞれのひと口が、食事のはじめのひと口のように、豊かで興味深い味わいに満ちたものになるそうです。

【POINT】

マインドフルに食べることによって、生活の中の無数の小さな瞬間に、喜びが生まれる。

食べることは、自然で喜びに満ちた行為です。しかし、心ここにあらずの状態でせかせかと食べてしまえば、それを楽しむことができません。

マインドフルに食べるようにすれば、日々の暮らしの中にマインドフルを練習する機会が、1日何回か自然に組み込まれることになるのです。

他にも、

・舌の状態を意識してみる(舌が休まず、いかに働いてくれているかがわかる)
・食べたことのない果物を食べてみる(食の習慣を通して自分の人生に対する姿勢を知り、新しい選択肢を見出す)
・自分をお客様のように扱う(自分のための食事をお客様に心を込めて用意すると、心に栄養が取り組まれる)

など、忙しい日々でもすぐに実践できる練習が楽しく紹介されています。紹介される23の「食べ方」の練習を通して、自分にとっての「よりよい人生とは何か?」を考えるきっかけにもなる1冊です。

(提供:日本実業出版社)

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