「お客様の数を増やす社長」に共通する二つの姿勢とは?
昨今、結婚式も、葬儀も、身内だけでコンパクトにする傾向がある。葬儀の際に出す料理をつくっているI社は、売り上げがどんどんと下がってきており、社長は「何か手を打たねば」と危機感を感じていた。
「このままではいけない」と書店に行っては、経営書を買いあさった。その中に理事長の牟田學の本があった。藁にもすがる思いで無門塾に参加したという。
社長の凄いところは、何といっても行動のスピードだ。無門塾で言われたことは、翌月には形にして「先月に言われたパンフレットをつくったのですが、見てもらえますか?」と持ってくるのだ。
「お客様は会社の中にいてもやって来ないよ」と言われると、お客様を外に獲りに行くことにした。目をつけたのが定期的にお弁当の注文をしてくれるお客様だった。訊くと会議用のお弁当だという。社長は早速、需要がどの程度あるのか調べた。他県では会議用弁当のポータルサイトまであり、かなりの激戦だ。しかし、市内には数社ライバルはあるが、社長は「これならばいける」と確信した。
駅周辺にある規模の比較的大きい、社員数の多い会社を調べ上げた。最初は六〇社からのスタートだった。担当者の名前がわからないので、最初は総務部宛でDMを出した。やはり個人名の書いていないものは開封率が悪かったが、二社から注文が入った。注文用紙には「試食ができます」と書いてあり、八人分の名前を書く欄がある。「試食ができるなら」と、当然ビッシリと名前を書いてくる。これで個人名を引き出すのだ。
味にはもともと自信がある。実際に食べた人から、「次回からここのお弁当がいい」と担当者に話がいったのだろう。これがきっかけで二社からは次々に注文が入った。お弁当を届けに行けば、担当者から名刺をもらい、Eメールでも案内をするようになった。スマートフォンのアプリをつくり、携帯からすぐに注文できるようにもするという。進化をし続けているのだ。
どんな新事業でも最初は小さなきっかけだ。それを「そんなのやってもたかが知れている」「利幅が小さい」と否定的なことを言い、バカにする者も必ずいる。新しい仕事が増えると嫌な顔をする社員もいるだろう。しかし、重要なことは「とにかくやってみる」ことだ。そして「やり続ける」ことだ。
I社が会議用弁当を始めて二年目になる。いまはお客様の会社の数も二桁になり、月曜日から金曜日まで、毎日、一〇〇個から二〇〇個のお弁当をつくっている。先日、社長とお会いしたが、「今期で会議用弁当が一番大きい事業の柱となります」とおっしゃっていた。その顔は、最初に無門塾でお会いしたときとは別人のように明るくなっていた。
工作機械メーカーであるY社は、業界では一位、二位を争うトップメーカーである。しかし、市場規模はそれほど大きくなく、一度買うと買い替えというのもなかなか起きないので売り上げは横ばいが続いていた。
展示会なども、東京国際展示場などで業界のイベントにブースは出していたが、そこは色々な会社の競争の場である。お客様を獲得するのは難しい。
そこで、アドバイスにより、自社で展示会を開催することにチャレンジした。既に購入されているお客様や、展示会などでいただいた名刺に案内を出した。驚いたことに、FAXで出席の確認を送ってもらうと、参加の返事を出してきたお客様全員に、新幹線のチケットを送ったというのだ。
展示会は好評に終わり、会社は初めて売り上げの壁を超えた。そして、自社で展示会を開催するようになってから八年、この会社の売り上げは三倍にまで伸びている。
このように、ちょっと売り方を変えたり、売り先を変えたりすれば、そこには新しいお客様が存在するのである。売り方は五つしかない。訪問販売、店頭販売、媒体販売、配置販売、展示販売だ。扱う商品によって、「これはウチにはできない」というのも、もちろんあるだろう。
しかし、できる方法を考えることもしないで、「その方法は、業界でご法度」「業界的にエリアを飛んで商売することはできない」などと言い訳をしていないだろうか。
先に出てきたI社とY社の二人の社長は、「どうしたらウチでできるようになるのだろう」と、考えて考えてやってみた結果、お客様を増やすことに成功している。
しつこいくらい言うが、「とにかくやってみる」「やり続ける」こと。すぐに結果が出るというのは、いまの時代、難しい。五年先、十年先を見据えて、いまからお客様を増やす努力をしてほしい。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます