(本記事は、博報堂 ヒット習慣メーカーズ、中川 悠の著書『カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)

習慣化コンセプト①

「A(現状)からB(理想)へ」を考える

優待,音楽,株主優待
(画像=PIXTA)

ここからは、いよいよ新習慣の中身を考えていきます。その最初のステップが「習慣化コンセプト」の検討です。

コンセプトという言葉はさまざまな場面で使われますが、人によって解釈が異なり、曖昧なまま使われることが多い印象です。ちなみに辞書で「コンセプト」を引いてみると、「概念や観念の意」と、こちらも抽象度の高い定義が記されています。そこで本書では、「習慣化コンセプト」を「新習慣で実現したい理想の世界」と定義します。商品やサービスを通じて生まれる新習慣の前後で、世界の何が変わるのか?を重要視しています。もっと踏み込んで言うと、「A(現状)からB(理想)へ」と何をどのように変化させるのかを明確にすることが、「習慣化コンセプト」の役割です。

コンセプトについて理解を深めるため、具体例で考えます。現在、社会に浸透しつつある音楽のサブスクリプションサービス。先ほどの定義で考えると、音楽のサブスクリプションサービスの習慣化コンセプトは、「好きな音楽を、曲数やお金の制約なくいつでも楽しめる世界」になります。今までの音楽は持ち歩ける曲数に制限があったり、好きな音楽をすべて手に入れようと思うと膨大なお金がかかっていました。しかし、サブスクリプションサービスがあることで、持ち歩ける曲数の制限なく、しかも定額制でいくらでも音楽を楽しめる全く新しい世界ができたのです。音楽のサブスクリプションサービスは、そのサービス内容自体も革新的でしたが、現状から理想の変化の度合いが大きく、共感度も高かったため、グローバルな規模で人々に受け入れられたのです。

このときに重要なのは、「こんな理想の世界があればきっと世の中はもっと良くなる」という想いをもつこと。習慣をつくっていくのはとても根気のいる作業ですし、ときにはなかなか思うように進まず、くじけてしまいそうになることもあります。しかし実現したい世界への想いをしっかりともつことで、折れない気持ちをもつことができますし、その世界を一緒につくろうと賛同してくる人も出てきます。そういう意味で、「習慣化コンセプト」の設定で一番大切になってくるのは、自分自身が思い入れのもてるものになっているか?ということなのです。

カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

習慣化コンセプト②

強い習慣化コンセプトをつくる方法

スマホ決済
(画像=Getty Images)

習慣化コンセプトとは「新習慣で実現する理想の世界」と説明しました。でも、実際にそれを言語化するのは、実に難しい作業です。コンセプトのつくり方だけで一冊の本が書けるほど。ここでは、極力シンプルに強い習慣化コンセプトをつくる方法を説明します。

まずは、Predictionであぶり出した「習慣インサイト」をもとに考えはじめます。例えばあなたが新しいスマホアプリをつくるとします。前章で「運動せずに手軽に痩せる」という習慣インサイトが見つかりましたが、そこから「(運動せずに)見るだけで痩せるダイエットアプリ」というコンセプトを考えつきました。さっそく検索してみると、「見るだけで痩せる動画」や「見るだけで痩せるとうたった本」などがありました。可能性がありそうです。次に、自社らしさを探ります。所属する会社がアプリだけではなく動画制作も得意だったとしたら、コンセプトを「≪動画≫を見るだけで痩せるダイエットアプリ」にチャレンジしてみてもいいでしょう。

ここまできて、ビジネス化の芽がありそうなら、次のステップの習慣化ループを描いてしまいます。具体的にどんなタイミングでどんなことをやってもらうかを考えることで、コンセプトを少し修正したくなってくるでしょう。例えば、朝の通勤中に10分だけ毎日見れば痩せるという習慣化ループを描いたとしたら、その要素を習慣化コンセプトにも盛り込んでみたくなると思います。

「朝通勤中に10分動画を見るだけで痩せるダイエットアプリ」という習慣化コンセプトになりました。最後に、すでに世の中にないか新規性を調べます。日本だけではなく海外の事例も調べます。もし似た事例があったとしても、それを超えるように強いコンセプトに磨き上げればいいでしょう。ただ、強くしようとして、あまり長くなると重要なポイントがわからなくなるので、なるべくシンプルに仕上げましょう

強い習慣化コンセプトとは?
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

習慣化ループ

「習慣化ループ」の4要素を理解する

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(画像=Bojan Milinkov/Shutterstock.com)

「習慣化コンセプト」が設定できたら、次は「習慣化ループ」を描きます。「実現したい理想の世界」の中で、人々にどんな行動をしてほしいか? を具体的に思い描きます。私たちは、チャールズ・デュヒッグ著の『習慣の力』で提示された「習慣化ループ」を参考に、それをよりプラニングしやすい形にカスタマイズしました。「習慣化ループ」は以下の4つの要素に分かれています。

(1)きっかけ

習慣をはじめるきっかけとなるものです。きっかけには「最初にはじめるきっかけ」と「毎回続けるきっかけ」の2種類あります。例えばジムだと、「健康診断に引っかかったから」が「最初にはじめたきっかけ」、「毎週木曜日の朝に行く」が「毎回続けるきっかけ」です。

(2)ルーチン

きっかけの後に行われる具体的な行動です。ジムの場合は、「ランニングマシーンで走る」「筋トレをする」などがルーチンにあたります。これからつくろうとする習慣の行動そのものがルーチンです。

(3)報酬

習慣を行うことで得られる具体的なメリットです。ジムだと「健康的で美しい体が手に入る」などが報酬にあたります。

(4)触媒

習慣を行っている最中に、「やっている感」や快感を演出するものです。ジムだと、「汗だくになること」は運動をしている感を演出する触媒だと言えます。

次節以降はこれらの4つの要素について細かく見ていきます。その際、具体的な事例として前出の『習慣の力』にある「歯磨き粉」の例を取り上げます。20世紀初頭の米国では歯を磨くという行為が習慣化されていない中、歯磨き粉ブランド「ペプソデント」の出現により、一気に歯磨きが習慣になったという非常に興味深い事例です。

習慣化ループ
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

習慣化ループ〜きっかけ〜①

習慣を「最初にはじめるきっかけ」をつくる

歯磨き
(画像=bbernard/Shutterstock.com)

習慣化ループの最初のステップは「きっかけ」づくりです。「きっかけ」には2種類あって、「最初にはじめるきっかけ」と「毎回続けるきっかけ」があります。まずは「最初にはじめるきっかけ」について説明します。

新年になると資格取得や習い事に関するサービスのテレビCMが一斉に流されますが、これは新年を機に何か新しい習慣をはじめてみようという人々の気持ちをうまくついたタイミングだと言えます。このように、人が何か新しい習慣をはじめようと思うときには、何かしらのきっかけがあります。そのきっかけは「人生の転機」によるものと、「社会の転機」によるものの2種類に分類できます。

「人生の転機」の代表的なものとしては、入学、就職、結婚、出産、引っ越し、病気などの生活で起きる大きな変化が挙げられます。これらは生活全体に大きな影響を与えるものであるため、そこではじまる新習慣は定着しやすい傾向にあります。これらほどインパクトの大きいものではなくても、健康診断の結果や体重の変化など、個人が自分の生活を見直すタイミングなども人生の転機に含まれます。

次に「社会の転機」です。これは、多くの人が一様に影響を受けるものです。新年や新年度のタイミング、法制度の変化や自然災害、スマートフォンなどの技術革新もこれにあたります。増税のため家でご飯をつくる習慣が増えたり、働き方改革の推進によって夕方の時間帯に新しい趣味をはじめたりなどは、社会の転機をきっかけに生まれた習慣です。

歯磨き粉の例でいうと、20世紀初頭の米国には歯を磨く習慣がなく、虫歯が蔓延したため、口腔衛生に対する意識の低さが国家的な問題だと政府が公式見解を出したほどでした。この政府の注意喚起によって、米国中で口腔衛生に関する問題意識が高まったことは歯磨き習慣が広がる1つのきっかけだったと言えるでしょう。

歯磨き粉の習慣化ループ
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)
カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-
博報堂 ヒット習慣メーカーズ
何度も買いたくなる「仕組み」づくりをしたいという想いをもった博報堂の社内プロジェクト。
戦略から制作まで、リアルイベントからシステム開発まで、多様な専門性をもつ精鋭メンバーが揃った組織横断型のチーム。
中川 悠(なかがわ・ゆう)
株式会社博報堂 統合プラニング局/ヒット習慣メーカーズ リーダー。
大学卒業後、電機メーカーにエンジニアとして入社。携帯電話の設計に携わる。その後広告会社を経て、2008年に博報堂入社。
ストラテジックプラニング職として、商品開発、ブランド戦略、コミュニケーション立案に携わる。
2015年に統合プラニング局のチームリーダーに就任。クリエイティブ・ストラテジストとして、戦略から戦術まで一貫したディレクションを行う。
2017年にヒット習慣メーカーズを立ち上げ、顧客の習慣化による事業成長の仕組みづくりを実践している。


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