(本記事は、博報堂 ヒット習慣メーカーズ、中川 悠の著書『カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)

「1→10」が大切な理由

習慣を広げるのはカンタンじゃない

スマホ
(画像=Getty Images)

局所的に攻める(1→10)ステップで、少数でも熱狂的なファンをつくることが、これからのコミュニケーションにおいて大切な理由は、いくつかあります。

(1)理由1 情報を届きやすくする

博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所の定点調査によると、スマートフォンへの接触時間が急激に増加したためメディアへの総接触時間が増加し、2019年には1日平均400分以上になりました。スマートフォンから常に情報が与えられ続けるだけでなく、家族、友人との会話や電車内の広告、チラシ、店頭などのリアルな情報もあふれかえる環境で生活する人々に、短時間で印象に残る情報を伝えるのは難しくなってきています。だから、最初からマスに向かって端的に情報を伝えるよりも、まずは局所的に丁寧に情報を届けるほうが得策なのです。

(2)理由2 習慣が広がる土壌をつくる

デジタル化やソーシャルメディアの発展を背景に、前述したように「Fファクター(Friend、Family、Fan、Follower)」によるオンライン上の情報が人々を動かす時代になりました。つまり、マスよりも興味関心を軸にした人々の集まりのことを指す「トライブ」が、マーケティング上、大切になってきたのです。いきなり一方的な情報をさまざまな価値観をもった「トライブ」へ均一に与えても、どのトライブからも無視されてしまう懸念が大きくなったということです。

そのような事態を避けるために、1→10のステップによって新しい習慣のファンとなる小さな「トライブ」と向き合い、習慣が広がっていく土壌を丁寧に育むことが必要なのです。

(3)理由3 トライ&エラーを行う

最後の理由は、トライ&エラーができることです。Prediction、Addictionのステップによって優れた習慣を考えついたとしても、その習慣が定着するという確証はありません。そこで、まずは1→10のステップを踏むことで、少数でも濃い生活者からの反応を確かめることが大切です。その反応をもとに習慣を修正し、また1→10のステップを実施してみる。この繰り返しによって、習慣が広がる確度が高まっていくのです。

1→10が大切な3つの理由
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

1→10|体験をリッチにする

強い体験がConversationを生む

シャンパン
(画像=kirill guzhvinsky/Shutterstock.com)

ここからは1→10と10→100のそれぞれのステップにおいて、例えばどういう手法があるのかについて、具体的に解説していきます。これから説明するいくつかの手法を参考に、それらを組み合わせてみたり、応用してみたり、時系列で整理してみたりさまざまな形で利用してみてください。

最初の1→10の手法は「体験をリッチにする」です。習慣は体験することで効果を実感でき、その良さを理解することができます。しかし、いくら身近な人からその習慣の魅力や効果を饒舌に語られても、なかなか腰が重く最初の一歩が踏み出せないという経験は誰しもがあることでしょう。そこで体験してもらう最初の一歩をつくり出すのが「体験のリッチ化」です。

例えば、炭酸飲料を飲む習慣を広げたいとします。炭酸は強い爽快感を触媒とする「快楽」の習慣ですが、この爽快感を口頭でいくら説明しても、実際に体験してもらわないと五感で感じることはできません。そこで、この爽快感をリッチ化してみることを試みてみましょう。例えば、キンキンに冷やした状態で提供してみたらどうでしょう。冷却効果と炭酸の相乗効果で、さらに強い爽快感を提供することができるはずです。

さらにリッチに、夏の暑い日にキンキンに冷えた室内、それこそ氷でできたバーで提供してみたらどうでしょう。体感温度と、まるで南極にあるバーで飲んでいるような視覚的な冷たさも相まって、さらに強い爽快感を提供することができ、体験者に炭酸飲料との印象的な出会いを演出することができます。

これが、体験をリッチにするということです。味覚だけでなく触覚に、視覚にと、五感を刺激することで強いきっかけを演出します。このようなリッチな体験をマスに実践するのは予算的に難しいかもしれません。まず、1→10のステップにおいては、量に捉われるのではなく、少数の人にできるだけ強くてリッチな体験を提供することを心掛けましょう。それがSNSや口コミで習慣を広めてもらう行動を喚起することにつながるのです。

体験をリッチにするには?
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

1→10|味方を見つける

Conversationを生んでくれる味方を見つける

SNS
(画像=Getty Images)

次の手法は「味方を見つける」です。ここでいう味方はシンプルに言うと、習慣の魅力や実践方法を周囲に広めてくれる人を指します。SNSで多くのフォロワーをもち、等身大で習慣の魅力を語ってくれるインフルエンサーや、メディアから信頼が厚くその知識やデータとともに習慣の魅力を語ってくれる有識者、影響力のあるメディアで習慣の魅力をわかりやすく記事にしてくれる編集者・ライターなど、「味方」のバリエーションは多岐にわたります。

ここで大切なのは、味方の「見つけ方」です。習慣を早く多くの人に知ってもらいたいと焦ってしまうと、誰もが知っている著名人や、できるだけ多くのフォロワーをもつインフルエンサーに味方になってもらいたいと考えてしまうかもしれません。つまり、認知度やフォロワー数といった「量」の発想で選んでしまうということです。もちろん「量」の発想も大切です。しかしそれ以前に、大切な尺度は「質」の発想です。そもそも広げたい習慣に対して共感してくれる人なのか、熱量をもって伝えたいと思ってくれる人なのか。「質」の発想を前提にしないと、その人の意見に影響を受ける周囲の人が無理やり新しい習慣に接触することになり、行動も喚起されず、さらなる拡散も期待できないという最悪な結果を招きかねません。たとえ1万の「いいね!」がついたとしても、それは習慣に対する「いいね!」ではありません。

次に、「味方」を巻き込む方法について、「お金」は最終手段として考えましょう。「○○○円お支払いするので、ぜひこの商品や習慣を宣伝してくれませんか」と最初にお金で味方になってもらおうとすると、利害関係(=ビジネス)のためにその商品を紹介することになるので、それは本質的な「味方」になることを意味しません。そもそも、その商品のことを相手が全く好きじゃない可能性だってあるのです。

まずは、商品や習慣をその人が発信することの「相手のメリット」を考えましょう。ライターを味方にするのであれば読者からの反響が期待できる理由を、有識者を味方にするのであればその人の世間からの評価や次のビジネスにつながる可能性を、まずはじっくり考えて提示するようにしましょう。

味方の見つけ方
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

1→10|局地的ブームをつくる

あえて場所を限定することでConversationを生む

行列
(画像=Sorbis / Shutterstock.com)

次の手法は「局地的なブームをつくる」です。ある習慣をいきなり全国的に定着させるのは容易ではありません。最初にも述べましたが、いきなりマスを狙うと、コストもリスクも大きいのが現実です。そこで、とてもシンプルな発想ですが、あえて場所を絞ってみるというのがこの手法です。

あなたも街で行列ができている店を見かけたとき、知らない店でも気になって店内をのぞいてみたり、少し時間があればその列に並んでみた経験があるでしょう。つまり、どんなに局地的であっても、「人気」という事実を知ると少なからず生活者は興味をもってしまうのです。これは新しい習慣を広める際にも応用することができます。その局地は、福岡市といった中核都市でもいいですし、表参道のような象徴的な街でもいいですし、特定の施設でもいいでしょう。場所を絞る際に大事なのは、その場所で人気になることで「新習慣に箔がつくか」どうかです

例えば、脳をリラックスさせて集中力を高めるストレッチの習慣を広げたいとします。どこで人気だという事実をつくれるといいでしょうか?ビジネスパーソンがたくさんいる東京のオフィス街、全国展開する人気ストレッチ教室、などさまざまな親和性のある場所が思いつくかもしれません。

しかし親和性はもちろんですが、大事なのは「新習慣に箔がつくか」どうかです。例えば、有名国立大学で広めてみるのはどうでしょう。もし成功すれば「集中力が高まるストレッチだから頭のいい大学生が取り組んでいるのか」「頭のいい大学生たちがこぞって取り組んでいるストレッチってなんだろう」と、その習慣が少し気になって他の人に話したくなりますよね。また、納得できる理由があるからこそ、メディアも取材してくれる可能性が高まります。

このように1→10のステップでは、何百万人に体験してもらおうといった「量」ではなく、例えば300人だったとしても本質的で小さな一歩を踏み出すための「質」を追求する試行錯誤が大事になってきます。小さい一歩だからこそ、もし有名国立大学で人気にならなかったとしても、次はもう少し年齢を上げて有名ベンチャー企業で試してみるなどのようにトライしてみることもできます。

局地的でもブームは気になってしまう
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)
カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-
博報堂 ヒット習慣メーカーズ
何度も買いたくなる「仕組み」づくりをしたいという想いをもった博報堂の社内プロジェクト。
戦略から制作まで、リアルイベントからシステム開発まで、多様な専門性をもつ精鋭メンバーが揃った組織横断型のチーム。
中川 悠(なかがわ・ゆう)
株式会社博報堂 統合プラニング局/ヒット習慣メーカーズ リーダー。
大学卒業後、電機メーカーにエンジニアとして入社。携帯電話の設計に携わる。その後広告会社を経て、2008年に博報堂入社。
ストラテジックプラニング職として、商品開発、ブランド戦略、コミュニケーション立案に携わる。
2015年に統合プラニング局のチームリーダーに就任。クリエイティブ・ストラテジストとして、戦略から戦術まで一貫したディレクションを行う。
2017年にヒット習慣メーカーズを立ち上げ、顧客の習慣化による事業成長の仕組みづくりを実践している。


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