(本記事は、博報堂 ヒット習慣メーカーズ、中川 悠の著書『カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)

「1→10」が大切な理由

習慣を広げるのはカンタンじゃない

次の手法は「味方を見つける」です。ここでいう味方はシンプルに言うと、習慣の魅力や実践方法を周囲に広めてくれる人を指します。SNSで多くのフォロワーをもち、等身大で習慣の魅力を語ってくれるインフルエンサーや、メディアから信頼が厚くその知識やデータとともに習慣の魅力を語ってくれる有識者、影響力のあるメディアで習慣の魅力をわかりやすく記事にしてくれる編集者・ライターなど、「味方」のバリエーションは多岐にわたります。

ここで大切なのは、味方の「見つけ方」です。習慣を早く多くの人に知ってもらいたいと焦ってしまうと、誰もが知っている著名人や、できるだけ多くのフォロワーをもつインフルエンサーに味方になってもらいたいと考えてしまうかもしれません。つまり、認知度やフォロワー数といった「量」の発想で選んでしまうということです。もちろん「量」の発想も大切です。しかしそれ以前に、大切な尺度は「質」の発想です。そもそも広げたい習慣に対して共感してくれる人なのか、熱量をもって伝えたいと思ってくれる人なのか。「質」の発想を前提にしないと、その人の意見に影響を受ける周囲の人が無理やり新しい習慣に接触することになり、行動も喚起されず、さらなる拡散も期待できないという最悪な結果を招きかねません。たとえ1万の「いいね!」がついたとしても、それは習慣に対する「いいね!」ではありません。

次に、「味方」を巻き込む方法について、「お金」は最終手段として考えましょう。「○○○円お支払いするので、ぜひこの商品や習慣を宣伝してくれませんか」と最初にお金で味方になってもらおうとすると、利害関係(=ビジネス)のためにその商品を紹介することになるので、それは本質的な「味方」になることを意味しません。そもそも、その商品のことを相手が全く好きじゃない可能性だってあるのです。

まずは、商品や習慣をその人が発信することの「相手のメリット」を考えましょう。ライターを味方にするのであれば読者からの反響が期待できる理由を、有識者を味方にするのであればその人の世間からの評価や次のビジネスにつながる可能性を、まずはじっくり考えて提示するようにしましょう。

味方の見つけ方
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)

1→10|局地的ブームをつくる

あえて場所を限定することでConversationを生む

行列
(画像=Sorbis / Shutterstock.com)

次の手法は「局地的なブームをつくる」です。ある習慣をいきなり全国的に定着させるのは容易ではありません。最初にも述べましたが、いきなりマスを狙うと、コストもリスクも大きいのが現実です。そこで、とてもシンプルな発想ですが、あえて場所を絞ってみるというのがこの手法です。

あなたも街で行列ができている店を見かけたとき、知らない店でも気になって店内をのぞいてみたり、少し時間があればその列に並んでみた経験があるでしょう。つまり、どんなに局地的であっても、「人気」という事実を知ると少なからず生活者は興味をもってしまうのです。これは新しい習慣を広める際にも応用することができます。その局地は、福岡市といった中核都市でもいいですし、表参道のような象徴的な街でもいいですし、特定の施設でもいいでしょう。場所を絞る際に大事なのは、その場所で人気になることで「新習慣に箔がつくか」どうかです

例えば、脳をリラックスさせて集中力を高めるストレッチの習慣を広げたいとします。どこで人気だという事実をつくれるといいでしょうか?ビジネスパーソンがたくさんいる東京のオフィス街、全国展開する人気ストレッチ教室、などさまざまな親和性のある場所が思いつくかもしれません。

しかし親和性はもちろんですが、大事なのは「新習慣に箔がつくか」どうかです。例えば、有名国立大学で広めてみるのはどうでしょう。もし成功すれば「集中力が高まるストレッチだから頭のいい大学生が取り組んでいるのか」「頭のいい大学生たちがこぞって取り組んでいるストレッチってなんだろう」と、その習慣が少し気になって他の人に話したくなりますよね。また、納得できる理由があるからこそ、メディアも取材してくれる可能性が高まります。

このように1→10のステップでは、何百万人に体験してもらおうといった「量」ではなく、例えば300人だったとしても本質的で小さな一歩を踏み出すための「質」を追求する試行錯誤が大事になってきます。小さい一歩だからこそ、もし有名国立大学で人気にならなかったとしても、次はもう少し年齢を上げて有名ベンチャー企業で試してみるなどのようにトライしてみることもできます。

局地的でもブームは気になってしまう
(画像=カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-)
カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-
博報堂 ヒット習慣メーカーズ
何度も買いたくなる「仕組み」づくりをしたいという想いをもった博報堂の社内プロジェクト。
戦略から制作まで、リアルイベントからシステム開発まで、多様な専門性をもつ精鋭メンバーが揃った組織横断型のチーム。
中川 悠(なかがわ・ゆう)
株式会社博報堂 統合プラニング局/ヒット習慣メーカーズ リーダー。
大学卒業後、電機メーカーにエンジニアとして入社。携帯電話の設計に携わる。その後広告会社を経て、2008年に博報堂入社。
ストラテジックプラニング職として、商品開発、ブランド戦略、コミュニケーション立案に携わる。
2015年に統合プラニング局のチームリーダーに就任。クリエイティブ・ストラテジストとして、戦略から戦術まで一貫したディレクションを行う。
2017年にヒット習慣メーカーズを立ち上げ、顧客の習慣化による事業成長の仕組みづくりを実践している。


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