株式市場は4月下旬に入り、利益確定売りが増え、徐々に上値が重くなりつつあります。景気・企業業績について厳しい現状を示す数字が出始め、警戒感が強まりつつあるようです。
こうした中、4月中旬以降は米国で、同下旬以降は日本でも、2020年3月期・本決算の発表が本格化してきました。景気・企業業績の急激な悪化が見込まれる中、収益が会社予想や市場予想を下回る企業が支配的となり、多くの企業が業績予想すら公表できない事態に陥りそうです。ただ、そうした中でも、決算発表で業績が予想を上回り、2021年3月期も増益基調になりそうな企業は、いつも以上に希少性が高くなり、場合によっては株価が大きく上昇するケースも出てきそうです。今回の「日本株投資戦略」では、このような局面でも、足元の業績が拡大基調を維持し、続く2021年3月期も増益を維持できそうな主力銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
なお、後半では業績下方修正が進む株式市場の現状についても、やや詳細にご説明しました。
景況感が悪化する中、逆に業績拡大が期待される銘柄はコチラ!?
東京株式市場は反発一巡後のもみ合い場面に転じています。新型コロナウイルスの感染拡大が世界的にピークアウトする兆しをみせ、米国などでは経済活動再開を模索する動きも見られつつある中、4月中旬までの世界の株価および日経平均株価は堅調に推移してきました。しかし、4月下旬に入ると、株式市場では利益確定売りが増え、徐々に上値が重くなりつつあります。景気・企業業績について厳しい現状を示す数字が出始め、警戒感が強まりつつあるのが背景のようです。また、WTI原油先物価格が、まさかのマイナス価格を付け、市場に動揺が広がったことも影響しているとみられます。
こうした中、4月中旬以降は米国で、同下旬以降は日本でも、2020年3月期・本決算の発表が本格化してきました。景気・企業業績の急激な悪化が見込まれる中、収益が会社予想や市場予想を下回る企業が支配的となり、多くの企業が業績予想すら公表できない事態に陥りそうです。ただ、そうした中でも、決算発表で業績が予想を上回り、2021年3月期も増益基調になりそうな企業は、いつも以上に希少性が高くなり、場合によっては株価が大きく上昇するケースも出てきそうです。
今回の「日本株投資戦略」では、このような局面でも、足元の業績が拡大基調を維持し、続く2021年3月期も増益を維持できそうな主力銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証1部に上場する銘柄であること。
(2)時価総額1,000億円以上の銘柄であること。
(3)これから決算発表を予定している3月決算銘柄であること。
(4)広義の金融(銀行、証券・商品先物、保険、その他金融)以外の業種に属す銘柄であること。
(5)業績予想を公表しているアナリストが2社以上ある銘柄であること。
(6)2020年3月期の予想営業利益(市場コンセンサス)が2019年末から直近(4/23)にかけ、増額された銘柄(赤字は除く)であること。
(7)2021年3月期の予想営業利益(市場コンセンサス)が増益予想となっている銘柄であること。
(1)~(7)の条件をすべて満たした銘柄について、(6)に掲げた2020年3月期予想営業利益の増額率が大きい順に10銘柄ならべたものが表1となっています。これらの銘柄は、その希少性が評価され、場合によっては株価が大きく上昇するケースも出てきそうです。なお、株価の項目には、ご参考までに、昨年12月末以降の株価騰落率を記載しています。この間、日経平均株価は17.9%下落していますので、掲載銘柄のほとんどは、パフォーマンスで市場に対し、優位にあると考えることができます。
表1 景況感が悪化する中、逆に業績拡大が期待される銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(4/23)終値 / 株価(4/23)前年末比 / 今期予想営業利益増額率 / 今期予想営業利益増益率 / 来期営業増益率
<8129> / 東邦ホールディングス / 2,248 / -7.4% / +15.2% / -3.7% / +1.3%
<3941> / レンゴー / 830 / -0.5% / +7.8% / +60.0% / +2.4%
<3774> / インターネットイニシアティブ / 3,800 / +29.0% / +6.1% / +43.0% / +13.7%
<6134> / FUJI / 1,698 / -15.6% / +5.9% / -16.6% / +7.3%
<2897> / 日清食品ホールディングス / 9,100 / +12.1% / +2.5% / +36.5% / +10.8%
<9502> / 中部電力 / 1,537.5 / -0.3% / +1.4% / -5.8% / +1.8%
<2875> / 東洋水産 / 5,500 / +18.8% / +1.2% / +17.0% / +7.1%
<1820> / 西松建設 / 1,973 / -20.1% / +1.1% / +2.3% / +3.3%
<7575> / 日本ライフライン / 1,199 / -19.7% / +0.5% / -0.3% / +3.1%
<9437> / NTTドコモ / 3,294 / +8.4% / +0.4% / -15.3% / +1.7%
※各社株価データ等をもとにSBI証券が作成。今期予想営業利益はBloombergが集計した市場コンセンサス。「増額率」は、同コンセンサスが2019年末から現在(4/23終値)まで何%増額されたかを示しています。なお、2020年3月期予想営業利益が増益か否かについては、市場の織り込みが進んでいるとの理解から、スクリーニング条件に入れませんでした。
業績下方修正が進む株式市場の現状
図1は日経平均株価と、その予想PER(株価収益率)等との関係をグラフにしたものです。4/23(木)現在、日経平均株価の予想PERは13.97倍となっていますので、日経平均株価を示す黒い線は、予想PER14倍相当線を示す紺色の線の近くに位置しています。ちなみに、この予想PER14倍相当線は、現在の予想EPS(1株利益)に14倍をかけて計算されます。3月以降、紺色の線は急低下しており、予想EPSが急速に下がったことを示しています。
2019年10月末時点での、日経平均株価の予想EPSは1,767円でしたが、直近は1,390円程度まで下がっています。このことは、日経平均採用銘柄の予想EPSが21%程度下がったことを意味しています。残念ながら、この数字はもう少し下がると考えた方が良さそうです。
なお、予想EPSの「予想」の対象は、多くの企業で現在は2020年3月期ですが、決算発表シーズンを経て2021年3月期に変わっていくと考えられます。もし、2021年3月期における上場企業の純利益が減益予想となるならば、予想EPSはさらに下がる可能性があります。ただ、業績予想を未公表とする企業も多いとみられ、日経平均株価の予想EPSはやや信ぴょう性の低い指標と理解されそうです。このため、株式市場における日経平均株価の予想EPSや、それをベースとする予想PERについて、投資家はあまり参考にしなくなるかもしれません。
一方、日経平均株価の予想BPS(1株純資産)や、それをベースとするPBR(株価純資産倍率)は、企業の純資産という実績数字を使います。このため、投資家はどちらかというと日経平均株価のBPSやPBRを参考にする動きを強める可能性がありそうです。
現在、日経平均株価はPBRで0.93倍となっています。PBRが1倍を割れているということは、株価が別名「解散価値」と言われる純資産の1株当たりの数値を割り込んでいる状態であり、割安感の強い状態と考えられます。現在、BPSは20,891円(ただし、日々常に変動)ですが、もし、我々が新型コロナウイルスを克服できるメドがついてくれば、日経平均株価も取りあえず、PBR1倍のラインを目指して上昇してくる可能性もありそうです。
図1 本格的な業績予想下方修正局面に入った日経平均株価
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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