毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか、迷ってしまう方も多くいるかと思われます。

本稿では、読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」で、6月にアクセスの多かった書籍ベスト5を業界ごとにご紹介。金融業界を銀行関連・証券関連・保険関連の3つに分け、それぞれのユーザーがどのような本を多く読んでいるのかを解説いたします。

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(画像=PIXTA)

目次

  1. 金融業界ユーザー別ランキング(五十音順)
    1. 銀行業界ランキング
    2. 証券業界ランキング
    3. 保険業界ランキング
  2. なぜビジネスの「センス」を磨く必要があるのか
  3. これからの銀行経営のあり方とは
  4. すべての企業がサービス業化していく
  5. スタートアップ業界とどう向き合うか
  6. テレワーク下の効果的なコミュニケーションを追求する
  7. 編集後記

金融業界ユーザー別ランキング(五十音順)

銀行業界ランキング

第1位:『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建 / 山口周著、宝島社)
第2位:『人工知能と銀行経営』(大久保豊 / 西村拓也 / 稲葉大明 / 尾藤剛 / 小野寺亮著、きんざい)
第3位:『教養として知りたい日本酒』(八木・ボン・秀峰著、PHP研究所)
第4位:『「数字で考える」は武器になる』(中尾隆一郎著、かんき出版)
第5位:『ぜんぶ、すてれば』(中野善壽著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

証券業界ランキング

第1位:『CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略』(田中達雄著、東洋経済新報社)
第2位:『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建 / 山口周著、宝島社)
第3位:『教養として知りたい日本酒』(八木・ボン・秀峰著、PHP研究所)
第4位:『エンジェル投資家とは何か』(小川悠介著、新潮社)
第5位:『交渉力』(橋下徹著、PHP研究所)

保険業界ランキング

第1位:『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建 / 山口周著、宝島社)
第2位:『教養として知りたい日本酒』(八木・ボン・秀峰著、PHP研究所)
第3位:『「数字で考える」は武器になる』(中尾隆一郎著、かんき出版)
第4位:『ビジネスチャット時短革命』(越川慎司著、インプレス)
第5位:『ぜんぶ、すてれば』(中野善壽著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

※本の要約サイト「flier(フライヤー)」の有料会員を対象にした、2020年6月の閲覧数ランキング

なぜビジネスの「センス」を磨く必要があるのか

まず目につくのが、すべてのユーザーの業界別ランキングで、『「仕事ができる」とはどういうことか?』が多く読まれたことです。銀行業界や保険業界では第1位、証券業界でも第2位にランクインしており、幅広い層の関心を得たことがわかります。 本書はビジネスにおける「センス」について、楠木建氏と山口周氏という気鋭の論者2人が熱論を振るったもの。一般的にセンスというと、「先天的に身についているもの」と捉えられますが、本書の著者2人は、「センスは後天的に身に着けられるもの」と力強く断言します。

ビジネスをしていると、どうしてもすぐに役立つスキルばかり伸ばそうとしてしまいます。ですがあらゆる業界で再編が起きており、技術革新が業界構造そのものに影響を与えかねないいま、すぐに通用するスキルだけでなく、根本的なセンスを磨くことも必要になるでしょう。今回、金融業界にお勤めの方に多く読まれたのは、そうしたある種の危機意識をお持ちの方が多かったからだと考えられます。「時代の一歩先を読む」センスを身につけるためのヒントが詰まった一冊です。

「仕事ができる」とはどういうことか?
「仕事ができる」とはどういうことか?
楠木建 / 山口周著
出版社:宝島社
発売日:2019年12月10日
ジャンル:スキルアップ・キャリア、自己啓発・マインド、リーダーシップ・マネジメント

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これからの銀行経営のあり方とは

銀行業界にお勤めの方から、今月とりわけ読まれたのが『人工知能と銀行経営』です。銀行業界ランキングでは第2位に入っている一方で、証券業界や保険業界ではランキング外になっていることからも、本書の主要ターゲットが銀行関連で働くユーザーであることが伺えます。

AIやロボティクスの発展が目覚ましい現在、どの分野でも変革が求められており、それは銀行に関しても同様です。「AIがあらゆる業界の雇用を奪うのでないか」と一部で恐れられておりますが、AIと人間を対立させて考えるのは生産的ではありません。むしろAIをいかに業務に組み込むかを考えるべきです。

これまでFinTechというと、電子による決済や送金、ロボアドバイザーによる資産運用や仮想通貨、ソーシャルレンディングやクラウドファンディングなど、目新しいサービスや事業に関するものが中心でした。しかし今後は銀行も、否応なくその流れに飲み込まれることになります。本書が注目を集めたのは、そうした危機感のあらわれだと言えます。

人工知能と銀行経営
人工知能と銀行経営
大久保豊 / 西村拓也 / 稲葉大明 / 尾藤剛 / 小野寺亮著
出版社:きんざい
発売日:2019年12月03日
ジャンル:経営戦略、起業・イノベーション、産業・業界、ファイナンス、テクノロジー・IT、トレンド

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すべての企業がサービス業化していく

証券業界では、『CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略』が今月最も読まれるという結果になりました。フライヤーでの要約公開が2019年1月だったにもかかわらず、本書が2020年6月時点で多く読まれたのは、CXが証券業界でも重視されるようになってきたことを表しています。

CXは「顧客経験(体験)価値」と訳され、「おもてなし」に近い概念だと言えます。技術革新が進み、AIに基づくサービスが次々と登場する昨今、最後に人間の手に残るのは、まさしくこうした「人の心」が関わる領域なのではないでしょうか。

以前からCXの追求は、小売業界やサービス業で強調されていましたが、今後は証券業界に限らずあらゆる分野で、CX戦略の必要性が叫ばれるようになるでしょう。CXで訴求されるのは感情的な価値です。ここにうまくテコ入れできた企業が、これから生き残れる時代がやってきます。

CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略
CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略
田中達雄著
出版社:東洋経済新報社
発売日:2018年09月27日
ジャンル:経営戦略、マーケティング、テクノロジー・IT、トレンド

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スタートアップ業界とどう向き合うか

証券業界のランキングの中で、もうひとつ取り上げたいのが『エンジェル投資家とは何か』(第4位)です。コロナ禍で状況は変わりつつあるとはいえ、日本では近年スタートアップが盛り上がりを見せており、それに伴って彼らへの投資をめぐる勢力図にも変化が表れています。

本書は、スタートアップとそれを支援するエンジェル投資家のリアルを描き出したものです。個人で活躍するエンジェル投資家についてはもちろんのこと、ミレニアル世代のエンジェル投資家が立ち上げたVC(ベンチャー・キャピタル)などについても触れられており、これ一冊でベンチャーを取り巻く環境がおおよそわかるように構成されています。

じつは東京は「アジアのシリコンバレー」と呼ばれるほど、スタートアップ業界から注目されている街。ですが、そこに問題が潜んでいることも事実です。今後スタートアップとどう付き合うべきかを考えるうえで示唆に富んだ一冊であり、証券業界にお勤めのユーザーから多く読まれたのも納得です。

エンジェル投資家とは何か
エンジェル投資家とは何か
小川悠介著
出版社:新潮社
発売日:2019年12月20日
ジャンル:経営戦略、起業・イノベーション、人事

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テレワーク下の効果的なコミュニケーションを追求する

保険関連の企業にお勤めの方に多く読まれた本のなかで、注目したいのは『ビジネスチャット時短革命』。保険関連ユーザーランキングで第4位、フライヤー全体のランキングでも第8位にランクインしました。

コロナ禍により、多くの人がテレワークへの移行を体験されたのではないでしょうか。その際に問題となったのが、どうやってコミュニケーションを取るかということ。社内でのコミュニケーションにおいて、メールは非効率であるということから、ビジネスチャットの導入が各企業で進みました。本書ではビジネスチャットを導入する際のポイントや、代表的なビジネスチャットツールの特徴について、詳しく解説されています。チャットマナーやトラブルの対処法についても紹介されており、テレワークでほしかった情報がこれ一冊にまとまっています。

現在、徐々に出社する人も増えてきてはいますが、テレワークを続行するにせよそうでないにせよ、ビジネスチャットツールの導入はビジネスをより円滑に進めるうえで効果的です。まだビジネスチャットを導入していない企業はもちろんのこと、すでにビジネスチャットを導入している企業においても、本書からは知見を得られるでしょう。

ビジネスチャット時短革命
ビジネスチャット時短革命
越川慎司著
出版社:インプレス
発売日:2020年03月21日
ジャンル:スキルアップ・キャリア、生産性・時間管理

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編集後記

興味深いことに、ビジネス一般や金融業界に直接関わらないにもかかわらず、『教養として知りたい日本酒』がすべての業界別ランキングでトップ5に入りました。近年、日本酒業界には次々と若い造り手が参入しており、伝統的な酒造メーカーも負けじと意欲的なプロダクトを世に送り出しています。新型コロナウイルスの影響により、どうしても経済は内向きになりがちですが、日本酒はこれからさらに世界進出することが見込まれる分野。いまのうちに知見を増やしていても損はしないでしょう。

本の要約サイト「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

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