月相場も残り少なくなってきました。8月下旬に安倍前首相が辞意を表明し、官房長官であった菅義偉氏が9/16(水)に第99代内閣総理大臣に就任。一方米国では、グロース銘柄に波乱の兆しが広がるなど、さまざまな動きがみられる月になりました。
ちなみに、9月は主力の3月決算銘柄にとっては第2四半期末(中間期末)に相当することもあり、多くの上場銘柄について配当や株主優待の権利が確定する月となっています。中長期保有を前提に投資パフォーマンスを考える投資家にとっては、せっかくの配当や株主優待をどう巧みに利用するのかが、重要なポイントの1つであると考えられます。
今回の「日本株投資戦略」では、配当や株主優待について、1年程度の保有を前提に総合的に検討し、両者を合わせた株主還元が魅力的と評価できるのみならず、足元の業績も堅調な銘柄を抽出してみました。
配当も株主優待も業績も、どれも魅力的な「欲張り銘柄」とは!?
冒頭でご説明したように、9月は主力の3月決算銘柄にとっては中間期末に相当することもあり、多くの上場銘柄について配当や株主優待の権利が確定する月となっています。中長期保有を前提に投資パフォーマンスを考える投資家にとっては、せっかくの配当や株主優待をどう巧みに利用するのかが、重要なポイントの1つであると考えられます。 ちなみに、配当利回りは通常、中間期末と年度末に予想される配当をすべて受け取ったとして年間予想配当を計算し、その利回りを算出します。また、株主優待を含めたパフォーマンスも年間で計算すべきということになります。なお、配当を予想する主体としては、アナリストや会社自体、新聞や雑誌など各種メディアがあります。
通常「日本株投資戦略」で株主優待の内容をご説明する時、今回のように9月優待の銘柄を検討する場合は、9月に権利が確定する株主優待の内容を中心に検討してきました。しかし今回は、3月まで保有した場合も前提に検討しています。9月末と3月末に権利が確定する配当と株主優待をすべて勘案し、年間すべての株主還元のパフォーマンスを計算することにしました。
(1)から(5)のすべての条件を満たした銘柄が以下の表にあるご紹介銘柄です。なお、(4)と(5)については、いずれかを満たしていれば良いことにしています。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)年間の予想配当利回りが2%を上回る銘柄であること。
(3)3月末、9月末ともに株主優待の実施を予定している3月決算銘柄であること。
(4)第1四半期の営業利益が前年同期比で増益であること。
(5)第1四半期の営業利益が前年同期比で減益の場合、減益率が中間期の会社予想営業減益率を下回ること。
なお、SBI証券の株主優待検索ページでは、優待権利確定月を絞り込んだり、「こだわり条件」で東証1部銘柄への限定や、配当利回りを平均(市場平均)以上にする機能があるため、個人投資家の方で、ここでのスクリーニングに近い分析を行うことが可能です。
ちなみに、業績面でのスクリーニングについて、減益銘柄にも抽出される可能性を残したのは、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、多くの銘柄が減益や赤字に陥っているためです。今回の分析で重視されるのは、株主優待、配当の順であり、ある程度、業績予想下方修正リスクが限定的であれば、必ずしも増益銘柄にこだわる必要はないと考えられます。
表 配当も株主優待も業績も!どれも魅力的な「欲張り銘柄」とは!?
コード / 銘柄 / 株価(9/17) / 予想配当利回り / 最低投資単位(100株)での株主優待内容の概要
<9831> / ヤマダ電機 / 529 / 2.0% / 優待割引券(500円)を3月2枚、9月4枚
<9882> / イエローハット / 1,739 / 3.0% / 割引券(300円)を半期ごとに10枚および商品引換券
<1828> / 田辺工業 / 789 / 3.2% / クオカード(500円)を半期ごとに1枚
<8252> / 丸井グループ / 1,960 / 2.6% / 買物券(1,000円相当)およびWebクーポン(同)を半期に1枚他、3月にポイント付与
<1878> / 大東建託 / 9,835 / 4.3% / 建築工事請負代金キャッシュバック(30万円)他
<9728> / 日本管財 / 2,039 / 2.5% / 半期ごとにカタログギフト(2,000円相当)より1点選択
<7504> / 高速 / 1,650 / 2.5% / 半期ごとに2,000円相当のクオカード
<5121> / 藤倉コンポジット / 365 / 2.2% / グループ会社指定のアウトドア用品を優待価格で通信販売その他
<4319> / TAC / 228 / 2.2% / 受講割引券(定価の10%割引)を半期に1枚
<8173> / 上新電機 / 2,358 / 2.1% / 3月は買物優待券(200円)を11枚、9月は5,000円相当の買物優待券(200円×25枚)
<8850 / スターツコーポレーション / 2,339 / 2.8% / 半期ごとに不動産仲介手数料割引などに利用できる優待券12枚
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。予想配当利回りは、年間に予定されたすべての配当を受けとった時に予想される配当利回りで、計算に用いる予想1株配当について、市場予想(市場コンセンサス)がある銘柄はそれを、市場予想がない銘柄は会社予想を使っています。「最低投資単位での株主優待内容の概要」は、株主優待の内容すべてを説明したものではありません。保有株式数や保有期間により、優待内容が異なる場合もあります。掲載順はレポート作成時点での、SBI証券株主優待検索ページにおいて閲覧回数の多い順となっています。
株主優待内容出所元:東洋経済新報社
小売業を中心に配当・株主優待の実例をご紹介
ここではまず、日常生活で接することの多い小売業を中心に、配当や株主優待などについてご説明します。
ヤマダ電機(9831)は国内外に12,570店(国内FC店は11,571店)を展開する家電量販チェーンです。営業利益が1千億円を超えていた時期からみると、現在の営業利益は数百億円レベルで推移しており、一時の勢いはみられません。しかし、足元はテレワーク需要の拡大等を背景に家電量販チェーン業界の業績は堅調で、同社も今期は大幅営業増益の見込みです。
市場の今期1株予想配当は10.75円(上半期は無配の計画・9/17現在の年予想配当利回りは2.0%)となっています。9/28(月)時点で100株以上を保有する株主に優待割引券(500円)が4枚贈呈されます。前回と同じであれば、3月は100株以上保有で優待割引券(500円)が2枚贈呈されます。保有株式数や保有期間により、贈呈枚数が異なるため、最新の情報は当該企業のホームページ等をご確認ください。なお、10/1(木)以降、商号がヤマダホールディングスに変更となります。
イエローハット(9882)は国内に736店舗、海外に3店舗を展開するカー用品店です。第1四半期は前年同期比16.1%の営業減益でしたが、これは中間期の予想減益率(同49.1%減益)を下回っています。予想配当(会社予想)は上半期・下半期ともに26円ずつで計52円(9/17現在の年予想配当利回りは3.0%)となっています。9/28(現在)100株以上保有の株主に対し、割引券(300円)10枚が贈呈されます。前回と同じであれば、3月は100株以上保有で優待割引券(300円)が同枚数贈呈されます。さらに、油膜取りウォッシャー液1本と引換可能な商品引換券が贈呈されます。割引券は保有株式数により、贈呈枚数が異なっています。
このように、小売店の株主優待は優待(割引)額やその枚数も重要ですが、利用したい店舗やサービスが自分の行動範囲内にあるか否かも重要です。上記の2社は広く全国展開しており、株主への利便性も高いと思われます。
丸井グループ(8252)は今期市場予想1株配当は51.2円(上半期は会社予想で25円・9/17現在の年予想配当利回りは2.6%)となっています。9/28(月)時点で100株以上を保有する株主に買物券(1,000円)が1枚、Webクーポン(同社通販チャネルで利用可能)が1枚贈呈されます。前回と同じであれば、3月は上記と同サービスに加えさらに、「エポスカード」保有を前提に、100株以上の保有で1,000ポイント(1ポイント1,000円相当)が贈呈されます。これらは保有株式数により、贈呈数量が異なっています。関東中心に展開しており、他の地域に住む投資家の場合は注意が必要です。
上新電機(8173)は家電量販チェーンで、本社は大阪にあり、店舗は全国に幅広く展開しています。ただし、北海道や九州など展開していない地域もあり、そこは注意です。今期会社予想1株配当は50円(上半期は会社予想で無配・9/17現在の年予想配当利回りは2.1%)となっています。9/28(月)時点で100株以上を保有する株主に買物優待券(200円)が25枚贈呈されます。前回と同じであれば、3月は買物優待券(200円)が11枚贈呈されます。なお、3月は保有株式数により、贈呈数量が異なっており、500株以上で60枚、2,500株以上で120枚、5,000株以上で180枚となっています。
小売業以外では、投資家によっては非常に有用である場合と、ほとんど有用でない場合が分かれる株主優待もあります。
大東建託(1878)では、9/28(月)時点で100株以上を保有する株主に建築工事請負代金キャッシュバック(30万円)、分譲マンション購入金額キャッシュバック(30万円)、紹介報奨金10%アップ、建築工事オプション設備サービス(上限30万円)、賃貸仲介手数料無料券1枚等の権利が付与されます。これらサービスの利用予定がない株主にとっては、優待の魅力が薄れると考えられます。なお、3月はこれに加え、100株以上の保有で全国共通ギフト券1,000円相当が贈呈されます。
スターツ(8850)では、9/28(月)時点で100株以上を保有する株主に「優待券」12枚が付与されます。優待券の内容は、不動産賃貸および売買の仲介手数料10%割引、ハワイコンドミニアム宿泊料金20%割引、温泉旅館宿泊料金20%割引、グアムリゾートホテル宿泊料金およびゴルフプレーフィー20%割引、カンボジアリゾートホテル宿泊料金20%割引、ビジネスホテル宿泊料金20%割引、リゾートホテル「ホテルエミオン東京ベイ」宿泊・飲食料金20%割引、同「ホテルエミオン京都」宿泊料金30%割引、国内ゴルフプレーフィー20%割引、和食レストラン飲食料金20%割引などとなっています。これらも、投資家の用途によっては非常に有用とみられます。
図 ヤマダ電機(9831)・週足
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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