(本記事は、山本尚宏氏の著書『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
どうすれば満室を維持することができるのか
不動産投資は、何よりも「満室をいかに維持することができるか」が最重要で成否の分かれ目になります。
都心の物件を買えればいいのですが、中には地方で投資を考えているサラリーマン投資家もいるでしょう。その際にライバルとなるのは、同じサラリーマン投資家ではなく、代々賃貸経営を受け継いでいるような地元の地主や資産家たちです。
彼らは潤沢な資産を持っていますから、キャッシュフロー目的というより、節税目的が多い。ですから、家賃収入などそこまで気にしておらず、相場よりも安いこともあります。
いい換えれば、事業としては真剣にやっていない人もたくさんいるのです。だからこそ、サラリーマン投資家にも勝機があります。
満室にするためには「家賃設定」「リフォーム」「広告料」「敷金・礼金」の4つをうまくコントロールすることが求められます。
競合が多いエリアであれば、相場より低めで家賃設定したほうがいいこともあります。何よりも怖いのは「空室リスク」です。空室は収入がゼロになるため、空室期間がなくなる努力をする必要があります。
入居者は、入居前に部屋の中を見ますから、リフォームでなるべくきれいにしておくことも大事です。といっても、コストをかけすぎてもムダになりますから、バランスを考えましょう。
広告料とは、物件紹介の優先順位を上げるために不動産仲介会社に支払う料金です。家賃の1~2カ月分が相場ですが、これも物件の空室期間を見ながら検討してみてください。最近では「敷金ゼロ・礼金ゼロ」という物件も増えてきました。インターネット接続料もオーナー負担という物件すらあります。稼働率を上げるためには、さまざまな工夫が必要です。
管理会社の選び方、関わり方
都心に住んでいる投資家が、都心の物件を買って、都心の管理会社に委託するなら、コミュニケーションを密にとれますし、自分で物件も見に行けます。
しかし、地方郊外の物件を買うなら、管理会社にほとんど任せきりとなり、かつコミュニケーションもとりづらくなります。
だからこそ、親身になってくれる管理会社を探すのが大事です。区分マンションなら、すでに不動産会社が管理会社を付けていると思いますのでそこまで問題ありませんが、一棟買いのときは自分で選ぶ必要があります。
このときは誰かから紹介してもらうのが確実です。地元の不動産会社、金融機関、地元有力者など誰でも構いません。
また、地元で開かれるセミナーにいけば、別の地元オーナーが来ていることもありますから、そこでどの管理会社を使っているか、仕事ぶりはどうかなど情報収集してみましょう。
ネットで探すなら、問い合わせるとき、実際に何戸管理しているのか、管理物件の稼働率はどのくらいか、現地の巡回回数や報告の仕方、管理手数料はいくらかなど、具体的に聞いてみましょう。しっかり教えてくれるなら安心できますし、情報が少ないようなところなら取引はやめておきましょう。
リフォームをいつどのタイミングで行うべきか
設備が古くなったり、壁紙などが最近のトレンドと合わなくなってきたり、リフォームのタイミングはさまざまかと思います。
まずは入居者のターゲットを絞ってみましょう。女性のニーズが高ければ、おしゃれな壁紙や照明にして、水回りもきれいにしたほうが、稼働率は高くなるかもしれません。男性が多ければ、そこまで内装にこだわらなくても稼働率はあまり変わらないかもしれません。
リフォーム業者も、地元の優良工務店を探せれば一番いいのですが、すぐには見つからないでしょう。その際、不動産投資に詳しい知人や不動産会社から紹介してもらうのも良いでしょう。
家賃保証会社、保険会社について
大半の入居者は家賃をきちんと払ってくれますが、属性次第では何カ月も未納になったりするケースもあります。そうなると、入居者を退去させる訴訟を起こす羽目になりますが、かなり手間とコストがかかります。
家賃滞納リスクをゼロにするのは至難の業です。滞納家賃をオーナーが直接取り立てにいくとトラブルしか生みませんから、管理会社に頼むか、家賃保証会社の利用も考えましょう。
家賃保証会社とは、滞納された家賃を入居者の代わりに立て替えてくれる会社です。連帯保証人を立てるよりも、家賃を回収できるケースが多いです。
保証料は月額家賃の30~100%まで幅があります。実際に家賃の滞納が発生した際、どのくらいまで家賃が保証されるのか、家賃保証会社の経営状況などは最低限確認したいところです。家賃滞納リスクと費用対効果を検証したうえで、必要かどうか判断しましょう。
先述した通り、「サブリース」という方法もありますが、最近はこの制度をめぐるトラブルが頻発しているので要注意です。
サブリースによるトラブルを防止するため、2020年6月、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」いわゆるサブリース規制法が成立しました。ガイドラインが同10月中に策定され、同12月中に施行される予定です。
いずれにせよ、契約内容をしっかり把握し、とくに家賃下落リスクには留意しなければなりません。
マンション経営の経費を削減する方法
不動産投資=賃貸経営ですが、経営としては収益計算がシンプルです。家賃収入から経費を引いた手元に残るお金が利益になります。
といっても、3章で触れた通り、経費には、管理費、修繕積立金、管理会社に払うPMフィー、固定資産税、保険料などさまざまなものがあります。税金を削ることはできないため、ここの経費を削減するならば、管理会社に払うPMフィーと保険料の2つだけになります。
PMフィーは、売り主の不動産会社が管理もしていれば、もう少し値下げできないか交渉の余地はあると思います。不動産会社と管理会社が別で、管理会社のサービスが不満で変えたい場合にはタイミングが大事です。
入居者がいる状態で変えたいと思っても、前オーナーからの引き継ぎを優先させるため、なるべく売買契約から数カ月は変えないほうがいいです。購入段階で空室なら、購入時に変更もできますが、とくに不満がなければ今の管理会社との付き合いを深めて、タイミングを見計らって価格交渉してみるのも手です。
といっても、区分マンションなら1戸あたりのPMフィーはそれほど高くありません。とくに管理に問題がなければ、無理して考えなくてもいいでしょう。管理費の観点から管理会社をどうするか真剣に検討したほうがいいのは一棟物件のケースが多いです。
保険料については、最低限必要な火災保険などは加入し、あとはハザードマップでエリア環境を確認しながら、地震保険など適したものを選ぶようにしましょう。