今年もいよいよ押し詰まってまいりました。

投資家の皆さまの今年の運用成績はいかがでしたでしょうか。

残り3週間ほどとなった12月、運用成績向上のために打てる手は残っていないでしょうか。

そのひとつが、年間120万円までの配当・譲渡益が非課税となるNISA(少額投資非課税制度)の活用かもしれません。

注意しなければならないのは、この非課税枠のうち未使用分を翌年以降に繰り越せないことです。このため、年末はNISAの未使用分を利用しようと「駆け込み」で投資してくる方が増える傾向にあるようです。予想配当利回りの高い銘柄への投資は、NISA枠を活用する場合としない場合で、配当の手取り金額がかなり異なってくることもあり、人気の高い投資戦略のようです。

ただ、銘柄選択を誤ってしまうと、業績悪化等で株価が大きく下がり、譲渡益への課税を考える必要がなくなってしまうというケースも増えてきます。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、日経平均採用銘柄を対象に、業績好調が見込める上、予想配当利回りの高い銘柄を抽出してみました。

業績好調で高配当利回り期待の日経平均採用銘柄は?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

冒頭でご説明した通り、今回の「日本株投資戦略」では、日経平均採用銘柄を対象に、業績好調が見込め、予想配当利回りも高い銘柄を抽出することとしました。NISAの非課税枠を有効活用しようと考えている投資家の方にも参考にしていただけると思います。

(1)日経平均株価採用銘柄であること。
(2)時価総額および純資産が1,000億円以上の銘柄であること。
(3)来期営業利益が10%超の増益予想(市場コンセンサス)であること。
(4)来期純利益が20%超の増益予想(市場コンセンサス)であること。
(5)浮動株比率が50%超あり、浮動株時価総額が1,000億円以上ある銘柄であること。
(6)PBR(前期実績)1倍未満の銘柄であること。
(7)来期予想PER(予想EPSは市場コンセンサス)が18倍未満の銘柄であること。
(8)今期予想配当利回り(市場予想)が3%超の銘柄であること。
(9)同一業種の銘柄が抽出された時は、今期予想配当利回りのもっとも高い銘柄を残すこと。

上記すべての条件を満たしたのが図表1となります。今期予想配当利回りが高い順に並べています。

(1)で分析の対象を「東証1部」より狭い、「日経平均株価採用銘柄」とした理由は、同採用銘柄のパフォーマンスが東証1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)を上回る状況が続くと予想したためです。2020年の年初来騰落率(12/10現在)は日経平均株価が13%超に達したのに対し、TOPIXは3%にとどまりました。東証は2022/4より、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編される予定ですが、東証1部の銘柄の一部は「プライム」に移行できない可能性があります。このため、TOPIXは過渡期的な状態にあり、ベンチマークとして不安定な状態にあると考えられます。これについては、次項で解説いたします。

その点、日経平均採用銘柄は、「プライム」移行よりも厳しい条件とみられる(2)や(5)を付けても、ほとんど削除される銘柄はなく、ほぼすべての銘柄は「プライム」に移行するとみられます。

なお、今期は新型コロナウイルスの感染拡大もあり、減益となっても致し方ない年度であると思いますが、新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトするとの前提に立てば、来期は増益となるのが企業業績の平均的な姿だと思います。株式市場での好評価も、来期増益銘柄中心になるとみられます。このため、今期増益予想であることは抽出条件とせず、(3)、(4)、(7)などで来期を重視する条件にしています。

来期しっかりと増益基調を回復する見込みで、日経平均株価上昇の追い風を受けやすい採用銘柄でありながら、予想PERやPBRの面で出遅れ感があり、予想配当利回りも相対的に高い銘柄を抽出してみました。

業績好調で高配当利回り期待の日経平均採用銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 業績好調で高配当利回り期待の日経平均採用銘柄は?
コード / 銘柄 / 株価(12/9) / 予想配当利回り / 前期PBR / 来期予想PER
<5020> / ENEOSホールディングス / 352.8 / 6.2% / 0.42 / 6.3
<8058> / 三菱商事 / 2,519 / 5.3% / 0.60 / 9.9
<8725> / MS&ADインシュアランスグループホールディング / 3,156 / 4.8% / 0.75 / 8.6
<4208> / 宇部興産 / 1,946 / 4.6% / 0.58 / 9.9
<5703> / 日本軽金属ホールディングス / 1,974 / 4.1% / 0.61 / 9.5
<5101> / 横浜ゴム(12) / 1,611 / 3.6% / 0.64 / 9.7
<3863> / 日本製紙 / 1,203 / 3.3% / 0.36 / 11.0
<5201> / AGC(12) / 3,485 / 3.1% / 0.62 / 14.8
<3289> / 東急不動産ホールディングス / 534 / 3.0% / 0.65 / 9.5
<3101> / 東洋紡 / 1,348 / 3.0% / 0.66 / 11.0

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。銘柄名の右横に(12)とある銘柄は12月決算銘柄で、権利付き最終日は12/28(月)に迫っていますので、要注意です。

「東証1部」の見直しと日経平均株価、TOPIX

上述のように、今回の「日本株投資戦略」では、業績好調が見込め、予想配当利回りも高い銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行いましたが、最初から対象を日経平均株価採用銘柄に絞り込みました。同採用銘柄のパフォーマンスが東証1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)を上回る状況が続くと予想したためですが、図表2で示したように、こうした状況は過去10年にわたって続いています。

NT倍率は日経平均株価をTOPIXで割って求められるもので、日経平均株価とTOPIXのパフォーマンス格差を明確に示してくれる存在です。図2にもあるように、伸び悩む時期もありましたが、ほぼ右肩上がりの直線となっており、もはや、両者のパフォーマンス格差につながる構造的な問題の存在を疑わざるをえない状況にあります。

現状で、この格差をもたらしている要因はおもに、以下の2つであると考えられます。

(1)TOPIXのけん引役である自動車や銀行など一部業種の時価総額が長期的・相対的に低迷していること。
(2)東証マザーズからの指定替え基準が緩かったこともあり、東証1部の中小型株の比率が増加傾向となったこと。

東証はここにきて、東証市場区分の再編に乗り出してきました。これまで、東証上場銘柄は「1部」「2部」「マザーズ」「ジャスダック」の4つに区分されてきましたが、これを「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに区分し直すことになります。「新市場への移行完了」は2022/4に予定されており、将来的には「東証1部」や「TOPIX」がもつ構造問題は改善の方向が期待されています。

ここで問題なのが、主要銘柄が区分される「1部」と「プライム」の差です。これまで、東証マザーズ銘柄が「1部指定替え」を受けるためには、(1)株主数2,200人以上、(2)流通株式2万単位(通常は200万株)以上、(3)時価総額40億円以上、(4)純資産10億円以上、(5)直近2年で経常利益合計5億円、または時価総額500億円以上、他の条件を満たすべきとされました。ただ、これらすべてを満たすハードルは多くの東証マザーズ銘柄にとって、決して高いものではなく、東証1部銘柄を「粗製乱造」する形になり、TOPIX低迷の一因につながったと考えられます。

2020/11以降、この基準は(1)株主数800人以上、(2)流通株式2万単位(通常は200万株)以上、(3)流通株式比率35%以上、(4)流通株式時価総額100億円以上、(5)時価総額250億円以上、(6)純資産50億円以上、(7)直近2年で経常利益合計25億円(少数株主利益を勘案)以上、または売上高100億円かつ時価総額1,000億円以上、他に改められており、ハードルとしては上がっています。最終的には、2022/4をもって、新市場区分に移行する計画になっています。

日経平均採用銘柄は時価総額1,000億円以上の企業が社数ベースで96%を占め、時価総額250億円未満に至っては1社しかなく、おおむね「プライム」の基準を満たす銘柄中心になっており、その面ではもともとの安心感が強いと言えそうです。

図表2 日経平均株価、TOPIXの推移とNT倍率(過去10年・月終値)

日経平均株価、TOPIXの推移とNT倍率(過去10年・月終値)
(画像=SBI証券)

※日経平均およびTOPIXの株価データを用いてSBI証券が作成。ここのグラフでは、日経平均およびTOPIXは2011/1終値を1として指数化した数字から作成しています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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