東京株式市場では上値の重い展開が続いています。

4月後半(4/15~4/28)の日経平均株価は2.0%下落。同期間の東証1部値上がり銘柄数は平均で38.6%にとどまり、値下がり銘柄数が過半を占める日が続いています。

国内では、新型コロナウイルスの感染再拡大により、慎重な業績見通しを発表し、売られる銘柄も多いようです。

そうした中、決算発表が次第に本格化してきました。4/28(水)の取引では、好決算銘柄の一角が買われるなど、変化の兆しもみえています。

そこで今回は、好決算で強い見通しが示された銘柄をチェックし、今後の値上がりに期待してみたいと思います。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

好決算&強い業績見通しを発表した銘柄を早速チェック!

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

今回の3月決算銘柄の決算発表では、2021/3期業績の実績と2022/3期の業績見通しが発表されています。

決算発表後に株価が上昇するには、以下の条件などを満たす必要があると考えます。

特に、短期的な株価推移にとっては(A)や(B)は重要です。

(A)2021/3期(通期)の収益(特に営業利益などの利益)実績が事前の市場コンセンサスを上回っていること。
(B)2022/3期(通期)の会社予想収益(特に営業利益などの利益)が事前の市場コンセンサスを上回っていること。
(C)2021/3期(通期)や同期・第4四半期の収益(特に営業利益などの利益)が前期(前年同期比)を上回っていいること。
(D)会社が予想する2022/3期(通期)の収益(特に営業利益などの利益)が2021/3期比で増える見込みであること。

新型コロナウイルスの影響により、慎重な業績見通しを発表する上場企業も多く、(B)や(D)の条件を満たせないことで、株価が下がるケースも多くみられます。

今回の決算発表シーズンでは、決算発表の結果を確認してから投資を考える戦術の方が有効かもしれません。

なお、会社側が増益見通しを公表し、(D)を満たしても、市場コンセンサスを下回る形で(B)に反していれば、短期的には売られるケースが多い傾向にあります。しかし、売りが一巡した後は再評価され、株価が上昇に転じるケースも期待できそうです。

そこで今回は以下の条件でスクリーニングを行い、下記図表に掲載しました。

(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額(2021/3末)が1,000億円以上の銘柄であること。
(3)3月決算銘柄であること。決算発表では2021/3期実績、2022/3期予想(ただし未公表の銘柄も)が発表されています。
(4)2021/3期(通期)の営業損益が黒字で、事前の市場コンセンサスを上回っていること。
(5)2021/3期・第4四半期(2021/1~3期)の営業損益が黒字で、前年同期比10%以上の増益であること。
(6)2022/3期の会社予想営業利益が事前の市場コンセンサスを上回っていること。
(7)2022/3期の市場予想営業利益が10%以上の増益(対21/3期市場予想営業利益)見通しとなっていること。
(8)4/28(水)までに決算発表が行われていること。

上記の条件を満たすことで“希少価値”が評価され、株価が大きく上昇する銘柄が出てくることが期待されます。

好決算と強い業績見通しを発表した銘柄
(画像=SBI証券)

図表 好決算と強い業績見通しを発表した銘柄
コード / 銘柄 / 株価(4/28) / 21/3期Q4増益率 / 21/3期上振れ率 / 22/3期予想営業増益率 上振れ率 / 22/3期予想営業増益率 増益率
<7205> / 日野自動車 / 910 / +100.2% / +79.6% / +2.7% / +283.7%
<6807> / 日本航空電子工業 / 1,940 / +42.9% / +18.7% / +7.5% / +78.0%
<6995> / 東海理化電機製作所 / 1,825 / +117.6% / +20.5% / -8.6% / +56.6%
<6967> / 新光電気工業 / 3,585 / +165.9% / +4.8% / +15.7% / +43.2%
<5333> / 日本ガイシ / 2,015 / +72.5% / +5.5% / +2.1% / +37.7%
<6954> / ファナック / 25,930 / +139.4% / +5.7% / -10.1% / +31.9%
<6201> / 豊田自動織機 / 9,050 / +43.4% / +0.5% / -4.0% / +26.9%
<3116> / トヨタ紡織 / 1,985 / +196.9% / +15.2% / +11.8% / +26.1%
<6504> / 富士電機 / 5,260 / +34.4% / +14.2% / +7.7% / +23.5%
<6857> / アドバンテスト / 10,520 / +112.0% / +5.5% / +2.9% / +20.2%
<4062> / イビデン / 5,440 / +72.9% / +2.1% / -5.0% / +16.5%
<6503> / 三菱電機 / 1,626 / +19.5% / +10.2% / -6.7% / +12.9%
<6594> / 日本電産 / 13,215 / +159.8% / +1.2% / -9.0% / +12.5%
<6645> / オムロン / 8,530 / +36.7% / +5.0% / -3.1% / +12.0%

※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成
※「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。
※2022/3期の会社予想増益率の大きい順に掲載。

掲載銘柄の投資ポイント

ここでは図表に掲載した銘柄の一部について、吟味していきます。

なお、2021/4/1以降に始まる事業年度から、「収益認識に関する会計基準」が強制適用になっています。

このため今回の決算発表のうち、上場企業が発表する2022/3期の業績予想では、原則として売上高や利益の変動率に関する記載がなくなっています。そこで当ページでは、多くのメディアと同様に、変化率を用いて計算しています。

日野自動車(7205) トヨタ傘下のトラック・バス大手。業績は下半期から回復傾向

トヨタ自動車が50.1%(2020/9末)の株式を保有するトラック・バスの大手メーカーです。国内売上高が72%で、他はインドネシアなどアジア中心に90ヵ国で製品の供給を行っています。

前期(2021/3期)は新型コロナウイルスの影響や、北米工場の生産停止などに苦戦。前期比77.7%の営業減益となり、最終損益は10年ぶりの赤字(▲74億円)に沈みました。

しかし、営業損益の推移をみると、上半期の▲116億円から、下半期は239億円の黒字と改善傾向にあります。2022/3期は販売台数で5.2%の増加見込み。会社予想の営業利益は470億円(前期比283%増)。下半期並みの利益を上半期と下半期で稼げれば、達成できる計算です。

4/27(火)の取引(終値は899円)終了後に決算発表し、4/28(水)は11円高と好感しました。

1/5(火)安値842円に続き、4/21(水)も858円の安値を付け、下値は固まりつつあるように見受けられます。

日野自動車(7205

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

新光電気工業(6967)&イビデン(4062)~「半導体パッケージ」の成長が予想以上

両社とも、半導体パッケージの大手企業として知られています。

本来、数年かけて進むはずだったDX化の動きが新型コロナウイルスの影響により加速。加えて、自動車のEV化や自動化の流れが広がり、半導体需要が大きく高まったことが追い風になっています。

新光電気工業の営業利益は市場予想では、2021/3期233億円から、2022/3期は23%増、2023/3期は28%増。

イビデンの営業利益についても市場予想では2021/3期386億円から同じ時期、22%増、25%増と拡大。

両社とも、生産能力を拡大することで半導体需要の拡大に応えていく方針です。

また、2社の主要顧客であるインテルによる微細化の動きも活況とされるもうひとつの理由です。

この他、半導体の国内生産の増加をめざす米国の国策もあり、インテルが200億ドルの設備投資(2021年)を計画していることも追い風といえます。

近年はインテルのみならず、AMDやエヌビディアなど他の米国大手半導体メーカーにも取引が拡大しており、成長の勢いは続きそうです。

ただし、同時に株価水準も高くなってきており、調整が入りやすくなっている面には注意が必要です。

■新光電気工業(6967)

新光電気工業(6967)

■イビデン(4062)

イビデン(4062)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

日本航空電子工業(6807) 電子部品であるコネクターの大手。携帯電話・車載向けに中計で急拡大を指向

電子部品のひとつであるコネクターの大手企業で、NECが35.2%を保有(2020/9現在)しています。

コネクターは電子機器をつなぐ部品で、ありとあらゆる電子機器に使われており、多種多様な製品仕様を反映して、種類が多いのが特徴です。同社製品だけでも3万種類の製品が存在します。

2021/3期の営業利益は、前期比37.9%減益に終わりましたが、四半期別にみると、第1四半期17億円の赤字をボトムに、第2四半期26億円、第3四半期34億円、第4四半期43億円と黒字基調に転じました。

こうした中、会社側が提示した2026/3期を最終年度とする中期計画に注目。経常利益について、2021/3期87億円から、2026/3期には250億円まで拡大することを記しています。

新型コロナウイルスの感染拡大に加え、脱炭素の動き、所要国労働人口の減少などの背景から、工場や自動車運転の自動化、EVの拡大、5Gの浸透など、搭載電子機器の市場は拡大が続くことが期待されます。

日本航空電子工業(6807)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

アドバンテスト(6857) 半導体微細化でテスター需要は飛躍的に拡大か

半導体テスター(検査装置)の大手企業です。

NAND型フラッシュメモリやDRAMなど、メモリの分野では世界シェアで推定55%を占めます。

営業利益は2021/3期の707億円(前期比20.5%増)から、2022/3期は826億円(16.8%増)、2023/3期は1,004億円(21.5%増)と拡大が続くというのが市場予想です。今期の2022/3期についてはそうした市場予想を上回る850億円という見通しを会社側が公表し、ポジティブショックの形になっています。

株価は昨年末の7,730円から4/30(金)には10,380円まで34.3%も上昇し、株価は好業績を織り込みつつあるようです。

ただし、微細化が一層進んだDDR5型という種類のDRAMが本格的に増えてくると、旧型のDDR4型向け装置は使えなくなるため、装置需要はさらに高まると考えられます。 半導体「スーパー・サイクル」の追い風が続く可能性が期待されます。

アドバンテスト(6857)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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