本記事は、山口貴大氏の著書『年収300万円FIRE 貯金ゼロから7年でセミリタイアする「お金の増やし方」』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています
ポートフォリオの3大ポイント
「ポートフォリオ」とは、資産形成をするうえでの金融商品の組み合わせのことをいいます。
FIRE後は資産の一部を4%の範囲内で取り崩しながら生活することになりますが、その前提となっているのが「FIRE後も運用成果をあげて一定のリターンを出し続ける」ことです。
現金クッションにする一部の資金を除いては、運用を続けることになるわけですが、そのとき必要になってくるのがどの金融商品にどれくらいの資産を配分するか、FIRE継続に適したポートフォリオを組むことです。
これもまた年齢などの条件によって異なるので一概にはいえませんが、ここでは3つのポイントについてお話ししましょう。
「ETF」の利用を検討
資産形成している過程においては、インデックスファンド(投資信託)のほうがETFよりも使い勝手がいいというお話をしました。
分配金が自動的に再投資されて、複利でお金が増えていくからです。
しかし、いざFIRE生活を始める段階まできたら、インデックスファンドよりもETFのほうが使い勝手がよくなるケースが多いです。
というのもETFのほうが信託報酬が安く、株価暴落時に資産を切り売りしなくても分配金が出るからです。
生活のために現金が欲しいFIRE達成者にとっては、米国ETFのほうにメリットを感じる人が多いのではないでしょうか?
また、S&P500や全米株式に連動した米国ETFなら、リアルタイムで売買できる流動性の高さがあり、純資産残高も日本のインデックスファンドの100倍の規模なので、インデックスファンドにはない信頼感があります。
ただし、インデックスファンドで資産形成してFIREやセミリタイアを達成した方は、無理に売却してETFに切り替える必要はないと考えます。というのも資産をすべて売却すると多額の税金がかかりますので、非効率だからです。インデックスファンドでFIREを達成した方はそのまま運用していけばいいと思います。
S&P500に連動するETFには、先ほどご紹介したVOO以外にも、
・SPY:「SPDR(スパイダー)S&P500ETF」 ・IVV:「iシェアーズ・コアS&P500ETF」
などがあります。
VOOというティッカーコードで知られる「バンガードS&P500ETF」はアメリカのペンシルバニア州に本社がある世界最大規模の資産運用会社バンガード社が提供するS&P500連動型のETFで、信託報酬は年率0.03%です。
仮に1億円の資産をこの商品で運用した場合、1ドル100円で計算すると、1年間にかかる信託報酬の額は約3万円になります。
一方、このVOOを買い付ける形でS&P500に連動する成績を目指しているSBI証券系列の「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の信託報酬は約0.0938%です。
つまり同じ条件で計算した場合、年間コストは9万3,800円となります。
その差、実に3倍以上です。
そう考えると、資産額の大きな人ほど、信託報酬の安い米国ETFを検討する価値があるといえます。
「債券」を組み入れリスクヘッジ
資産額がすでに大きな人の場合、資産を増やすためにあえてリスクをとる必要がありません。そんなケースではポートフォリオの債券の比率を高くするといいでしょう。
債券は最初から利回りが決まっておりリターンが安定しているので、年単位の収入を計算しやすくなります。
債券を保有するなら、日本国債よりは米国債がおすすめです。
なぜなら、同じ国債でも米国債の格付けはトリプルA、一方の日本国債の格付けはシングルAで、米国債の信用度のほうが高いからです。
また、2020年3月の新型コロナウイルス感染症の世界的流行で、多くの先進国では短期国債の金利がマイナスになるなど、空前の低金利時代が続いています。
そんな中でも、持ち前の経済力でコロナ禍によるダメージからいち早く回復した米国の国債利回りは突出して高い点も魅力です。
国債の中で最もポピュラーなのは10年満期のものですが、利回りは日本国債が年利0.07%に対して、米国債は1.47%(2021年11月26日現在)と21倍になっています。
金利が高かった過去と比べると低水準ですが、資産がすでにたくさんあってリスクをとる必要のない人は米国債へ投資するのも1つの考え方です。
米国債以上の利回りを求めるなら、世界的な企業の社債に投資するのもいいでしょう。
アップル、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾン・ドット・コムなど米国企業の社債は、日本の証券会社でも購入できます。
たとえば、2021年11月末現在では、
・アップル税引前利回り1.71%2029年9月償還 ・アマゾン・ドット・コム税引前利回り1.84%2031年5月償還 ・アルファベット税引前利回り2.3%2050年8月償還 ・マイクロソフト税引前利回り3.5%2035年2月償還
といった社債が証券会社の「外国債券」のページで売り出されています。
大手証券会社のほうが品ぞろえが豊富ですが、SBI証券などネット証券でも買えないことはないので、興味のある方は外国債券のサイトで商品のラインナップをご確認ください。
表示した利回りは債券価格の変動によって変化するものの、米国債よりも高い利回りを得たいなら、こういった世界的企業の社債を米ドル建てで購入するのもいいでしょう。
では、お金を貸しても安心な世界的な企業とは具体的にはどんな企業でしょうか。
図48に会社名を表示しましたが、こうした企業の社債なら安全度は高いと思います。また社債ではなく、個別株に投資する際も、図48に挙げた企業であれば、今後10年20年は世界屈指の大企業として業績も株価も右肩上がりに上昇していくのではないか、と考えています。
「世界的」といえる米国企業について、簡単に解説しておきますので参考にしてください。
・アップル(AAPL)
時価総額が世界一の企業。iPhone、MacBook、iCloudなどは世界的なデジタル・インフラになっています。世界一、自社株買いをする企業で投資家への利益還元率の高さが魅力です。投資の神様、ウォーレン・バフェット氏が大量に保有する銘柄としても有名。
・アルファベット(GOOGL)
大手インターネット関連企業。グーグルやYouTubeなどの広告事業が収益の中心です。自己資本比率が高く、フリーキャッシュフローが潤沢でキャッシュリッチな会社。GAFAの中でも堅調な成長が見込めると思います。
・アマゾン・ドット・コム(AMZN)
世界的なECサイトを運営。コンテンツ会社を買収したり、独自の世界的な物流網や自動運転技術を開発したり、宇宙事業にも進出したりするなど、多岐にわたる事業を展開しています。最近はコロナ禍の巣ごもり需要を先食いした感がありますが、今後の決算で挽回できるかに注目したいところです。
・メタ・プラットフォームズ(FB)
2021年10月に社名をフェイスブック(Facebook)から変更しました。アップルの仕様変更で広告事業にダメージを受け、株価は一時的に下落基調です。しかし、仮装空間(メタバース)の構築に力を入れ、再起をはかっています。
・マイクロソフト(MSFT)
法人向けのAzureや個人向けのWindows365など、クラウド事業が好調です。成長性は他社と比べて高くありませんが、収益の安定感と利益率の向上で株価は堅調です。アップルやグーグル、アマゾンなどのように今のところ反トラスト法(独占禁止法)などで訴えられていないのも、株価が上がりやすい要因となっています。
・エヌビディア(NVDA)
半導体の中でも特にGPU(グラフィック系の演算装置)の設計に特化している企業。利益率が高く、成長性も高いのが特徴です。将来的に仮想空間(メタバース)の進化・発展からの需要が見込めるとの発表もありました。好決算が続いて株価も右肩上がりで上昇しています。
・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)
半導体メーカー。コンピューターやグラフィックス、家電市場のマイクロプロセッサの製造、ノート型パソコンのチップセットなどを提供しています。ライバル会社のインテルからシェアを奪って勢いがある点が魅力です。
・テスラ(TSLA)
カリスマCEO、イーロン・マスク氏の言動で、何かと話題の電気自動車メーカー。増収率、増益率ではGAFAをしのぐ成長性があります。ただし人気が集中して株価が高騰し、割高な水準にあるので、金利上昇時などにボラティリティが激しくなるリスクもあります。
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