本記事は、木村拓也氏の著書『「会社員」のためのお金の増やし方90』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
投資のリスクを最低限に抑える 資産を分割する「資産三分法」とは?
お金を生み出す手段を持つというのは、何かに投資をすることです。しかし投資というと、やはりリスクについて心配される方も多いでしょう。あるいは、リスクが少ない投資を厳選して、そこにお金をつぎ込みたいと考える方もいるかもしれません。そういう方に知ってほしいのは、「資産三分法」という考え方です。
資産三分法とは、資産を
・現金 ・株 ・不動産
の三種類に分類して保有する、“分散投資”の考え方です。3つの金融商品にはメリットとデメリットがありますが、分散して投資すると、デメリットをメリットが補完しあうのです。例えば現金は、流動性が高いけれども収益性が低いという性質があります。銀行に預けても金利はほとんど付きません。一方で株は、収益性が高いが安全性が低い。ハイリターンなぶん、リスクも大きいものです。
不動産は、流動性が低いぶん安全性が高いという性質があります。不動産は売買に時間がかかりますから、流動性は非常に低いです。
このように、それぞれのメリット・デメリットを押さえつつ、分散して投資をすることでリスクヘッジをしようというのが資産三分法です。欧米では、昔から「卵は一つのカゴに盛るな」と言われています。不測の事態が起こったとき、卵を一つのカゴにしか入れていなければ、卵はすべて割れてしまいます。三つのカゴに入れておけば、一つのカゴの卵がすべて割れてしまっても、あと二つは守ることができる。これが資産を分割する利点です。実はこれはとても古典的な考え方で、さまざまな人が実践をしています。
生活用と投資用の現金は必ず分ける
ところで、手元にほとんど現金がないのに投資をしようとする人がいます。お金がない人ほど、目先の利益につられて投資にお金をつぎ込みたくなるのかもしれませんが、ご自身の生活をきちんと送ることも大切です。有事の際に、「投資をしていたから現金がありませんでした」というのは本末転倒です。手元に現金を残しておき、それ以外を運用できる資産とみなすべきでしょう。
現金の目安としては、毎月の生活費の3か月から6か月分ぐらいです。病気やケガだけでなく、冠婚葬祭などでまとまったお金が必要なときもここから出します。
この金額を貯金してから投資に踏み出すのが理想ですが、不動産投資はお金を使わずともできるやり方がありますので、貯金と投資を並行して行うのもアリです。
貧乏父さんから金持ち父さんになるには ESBIで自分の立ち位置を知る
ここで、一つ図を紹介しましょう。ESBIという有名な図です。
Eはemployee(従業員)、Sはself employee(自営業者)、Bはbusiness owner(社長)、Iはinvestor(投資家)です。
この図のうち左側は、自分の労働で収入を得ている人です。つまり自分の心身を切り売りしているのですね。それに対し右側は、仕組みで収入を得ている人です。権利収入とも呼びます。
経済的自由だけでなく、時間的、心理的自由を得るためには右側にいかなければならないのです。
この図は『金持ち父さん貧乏父さんアメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(ロバート・キヨサキ著、白根美保子訳/筑摩書房)で紹介されていたものです。私はSE時代、体を壊して不安を感じたときにこの本を読んで、人生が変わりました。読んだときに「必ず実行してやろう!」と思ったのですが、家族がいましたので、いきなり左側から右側に移行するのは難しいと思いました。
そこで、不動産投資ならば管理を管理会社に任せることができるので自分に適しているという答えにたどり着いたのですね。まずは中古のマンション1室から始め、最終的には85室まで増やしました。不動産投資を始めて5、6年経った頃には、本業と副業が逆転しかけていて、サラリーマンとして会社に行くのが副業のようになっていきました。投資を始めて10年後には家賃収入だけで4,000万円を得るようになり、Iへの移行に完全に成功したのです。そこで今度は起業もして、Bへの移行にも成功しました。少しずつですが着実に、左側から右側に行くことができたのです。ただ、これは私の場合であって、人によっては数年で移行することができると思います。
日本人は実行力に欠ける
『金持ち父さん貧乏父さんアメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』を読んだ人は多いと思います。ただし、実行した人はほとんどいない。私の周りでもいませんでした。なぜなのでしょうか。
一つには、学校教育や会社の環境のせいだと思います。日本の組織というのは基本的に合議制で、一人の発案で何かを変えづらいです。自分の意見を通すことに圧力がかかっているといっていいでしょう。だから、自然と臆病になってしまうのです。
もう一つは、日本の会社員は自分の身銭を切って自己投資するのが苦手ということです。会社のお金で研修したり能力開発したりするのは慣れていますが、こういうぬるま湯体質は、会社側にも本人にも両方に責任があります。いい面もありますが、自立には向いていない環境です。
日本の会社は決断が遅く、失敗を恐れるのが常です。私は右側への移行を決めたとき、日本の会社の考え方から距離を置こうと決めました。そしてお金に関する知識を徹底的に身につけた。
本を読んだだけでは時間の無駄で、実行しなければ意味がありません。実行力は“金持ち父さん”の第一条件です。
雪だるま式にお金が増える 「お金が働く」再投資と複利
「お金に働いてもらう」という感覚はどういうことなのかをご説明したいと思います。
私は不動産投資以外にファンドを利用しています。アメリカのファンドで、50年ぐらい歴史のあるものです。平均利回りは9%ぐらいです。
この利回りで計算すると、仮に元金100万円で、毎月積立てていくのが5万円。とすると30年間で1億241万円になるのです。元本はたった1,900万円。年によってプラスマイナスがあるので、1年の成績で一喜一憂してはいけませんが、銀行に置いておくよりも圧倒的な数字の上昇が見込めるのです。
もちろん注意点もあります。まず元金保証がないので、リスクをきちんと頭に入れておかなければならないこと。もう一つは、20年、30年のスパンで商品を長く運用していくことが大事です。日本の投資信託はこの風土があまりないですよね。ファンドマネジャーに新しい商品を勧められることが多いのです。新しい商品を契約したら、彼らに手数料が入るからです。1年、2年で解約したら、手数料だけでマイナスになってしまうこともあるので注意してください。
実は私は投資家のなかでも少し特殊で、不動産投資と金融商品の両方を運用しています。これはスポーツで言うと、陸上と水泳の両方をやっているようなもの。普通、両方には目がいかないですよね。ただこれは私にとって自然なことで、不動産で得た利益をファンドに入れてさらに増やしているのです。例えば不動産投資が5,000万円だとして、管理費など除いた利益が年間100万〜150万円ぐらいあるのですが、毎月数万が余剰資金といえるわけです。それをファンドに入れておけばお金が働いてくれる。つまり再投資をしているわけです。そして分野が異なりますから、リスク分散もできる。そしてどちらも「不労型」の収入なので、自分の生活スタイルを変えずにお金を得ることができます。
覚えておきたい「単利」と「複利」
ここで「単利」と「複利」についてご説明しておきます。単利というのは、1,000万円の元金に対して年利が9%だと、1年目には1,090万円になります。2年目も1,000万円に対して9%なので、1,180万円です。
これに対して複利は、1年目は同じく1,090万円ですが、2年目は1,090万円に対して年利が9%なので、1,188万円になるのです。1年ですでに8万円の差がついている。このように雪だるま式に数字が増えていくのが複利です。しかも、長く投資すればするほど複利の威力が大きくなりますから、数字がガンと上がります。
アインシュタインは、「複利は人類最大の発明である」と言っています。
海外の人はこのことをよく知っていて、ファンドにしても長く運用して複利の効果をしっかり得ています。それも、投資家だけでなく普通の人が老後のために普通にやっている。日本人はなぜか、学校も親も教えてくれないですよね。
単利・複利というのはお金に限りません。たとえば、自分の能力開発をしたいというとき、昨日の自分よりも1%向上させられれば、なんと1年で37倍になるのです。1%って、やろうと思えばできる数字ですよね。逆に0.1%落ちると0.03%になってしまう。なぜなら周りの能力が上がるから。
現状維持というのはできないもの。成長か衰退しかない。私はこういう「複利思考」で物事を考えています。
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