本記事は、木村拓也氏の著書『「会社員」のためのお金の増やし方90』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
20代・30代のための資産形成のポイント 数多くの成功談・失敗談から学べ
年代別に投資のポイントをお伝えしていきます。
まずは20代。社会人になったばかりで手取りも少なく、投資の経験はないという方が大半だと思います。まずは小さな投資商品でいいので、始めてみることが大切です。
それこそNISAでもよいですし、不動産投資ならば、ワンルームで十分です。東京の中古物件などは手堅くてお勧めです。
20代は小さな「お金を生む」投資から始めよう
まず「お金を生む」ものを持ち、年度末に確定申告をしてみましょう。小規模でいいのでとにかく始めてみてください。
複利の項目でお話ししましたが、長期にわたって運用すればするほど雪だるま式に利息がついていきます。24歳から運用すれば、30歳で開始するよりも有利になるわけです。
大半の方が結婚する前だと思いますので、独身の自由なうちに自分の思い通りに投資することもポイントです。
気をつける点は詐欺です。社会人経験が少ないので、おいしい話、うまい話の裏がまだよくわからないと思います。
知人の話ですが、カードローンで300万円ぐらい借りて、友人から勧められた怪しげな投資をしたら、大損をしてしまったという若者がいます。カードローンは金利が高く、本人の年収はまだ低いので返せなくなり、自己破産するか家族で話し合っているそうです。社会人としての経験や知識は未熟なのに、社会人だからお金を借りることができてしまう。非常に危ないことだと思っています。
30代は資産価値の高い投資へ挑戦しよう
30代は、結婚して小さな子どもがいる世代です。小さなことを始めるのが大事ですが、もう始めていたら、投資の規模を拡大してみるといいと思います。不動産であれば部屋数を増やしたり、1棟ものに挑戦したりということですね。社会人として経験を積み、知識も得ている上に、年収も上がっているので融資を受けやすく、挑戦のしどころです。
マイホームの購入を迷う方もいるかもしれません。もし購入するなら、リセールバリュー(再販価値)、つまり資産価値が高いものにしてください。首都圏であれば、駅から近い場所が鉄則です。徒歩15分ぐらいまでにしてください。地方であれば、いずれ開発して人気が出るだろうという場所がいいと思います。ただし、その判断は難しいです。やはり都市部になればなるほど安定性は高くなります。
これも知人の話になりますが、「子育てのために緑の多いところがいい」と、埼玉県で駅までバスが必要な場所に家を買った人がいました。価格は4,000万円ほどでした。後に売ろうとしたら買い手がつかず、価格も下がりに下がってしまい、「売り出しても千数百万円しか値段がつかない」と嘆いているそうです。
不動産は、“緑が多いところがいい”などというふわっとした理由で買わないようにしてください。
逆の例で言うと、これも知人の話ですが、15年ぐらい前に東京・赤羽に買ったマンションが値上がりしているそうです。まだ赤羽がメジャーではない頃に買ったのが今、人気が出たのですね。
また、4,800万円で買った東京・豊洲のマンションが、7,800万円で売れたという人もいました。
成功談・失敗談をたくさん聞いて、判断力を付けてほしいと思います。
40代のための資産形成のポイント すでに出遅れ! もっと焦るべき
40代の働き盛りは、ある程度収入が増える時期。子どもの教育や住宅購入などライフイベントが続く世代でもあります。マンションの購入にしても、今、全国平均で約4,000万円弱がかかります。
教育費はどうでしょうか。小学校から大学までかかるお金を計算すると、国公立で約1,000万円、私立で約2,300万円かかるそうです。
40代でマイホームを購入するのは危険
ただ住宅購入に関しては、私自身は購入をお勧めしていません。マイホームが欲しいというときは、結婚して子どもが増えたときだと思うのですが、子どもはいずれ家を出ていくものです。遠くない将来には夫婦二人きりになってしまうのですね。歳をとると、駅から遠い場所や車でないと生活できない場所がつらくなってきます。お店が少なくて買い物しづらい場所も、不便さを感じるようになるでしょう。
一軒家だとして、足腰が弱くなってしまい階段の上り下りができなくなるかもしれません。そうなると、郊外に買ったマイホームは生活しづらくなってくるのです。30歳、40歳のときに「ここに死ぬまで住むんだ」なんて決められないのではないでしょうか。
さらに、転勤の際にどうするかという問題もあります。「転勤が嫌だ」、「マイホームに家族といたいから転職する」という人もいるかもしれませんが、そう簡単に希望の会社に転職できないと思います。
家というのは、長く住めば住むほど古くなってきて、修繕費もかかります。住宅には耐用年数があって、木造住宅の法定耐用年数はわずか22年です。
22年経ったときの建物の価値を考えたとき、リセールバリューがどれだけあるか、少しお考えいただければわかるのではないかと思います。
少しでも早く資産形成を始めよう
40代は、いろいろなライフイベントを乗り越えて、将来を見据えて資産形成をしていかなければならない年代です。
特に40代後半で何もしていない方は、もう少し焦ったほうがいいと思います。20代、30代からコツコツと動いていた人と比べて、すでに大幅な遅れが出ています。
不動産投資でいうと、30代より地位も年収も上がっているので、融資を受けやすいですから、それを生かさない手はないです。手元のお金も増えているだろう……と言いたいところですが、教育費などで使ってしまっている人も多いですよね。そういう方は、まず不動産投資をやってみて、それで得たキャッシュでファンドに再投資をするというサイクルを早く確立されたほうがいいと思います。
「お金がないなら70歳まで働けばいい」と思うかもしれません。しかし、会社に貢献できるまで働けるだけの体力が70歳になってもあると思いますか? ただ、40歳から健康に気をつけていれば違うかもしれませんね。
資産形成も同じことです。少しでも早くから動いてください。
50代・60代のための資産形成のポイント 資産運用すればインフレにも備えられる
50代は、リタイア後のための資金を作る最終段階です。子どもが家を出て、教育費の支出がなくなり、家計の収支が変わったという方も多いかもしれません。住宅ローンを借りていた人は、完済を考えるかもしれませんね。
老後の資金について、どれだけの人が正確に把握をしているでしょうか。2014年の総務省「家計調査年報」で高齢無職夫婦世帯の1カ月あたりの収支を見ると、収入が約21万円、税金などの非消費支出が約3万円で可処分所得は約18万円です。一方、消費支出は約24万円で、毎月およそ6万円の赤字なのです。
50代は、毎月まとまった額を資産運用する
老後の資金を少しでも多くするため、使いながら運用するというスタイルを50代には確立してください。
資産形成のためには、家計の収支に余裕が生まれたぶんは貯蓄し、まとまった額を資産運用に回しましょう。資産を守るという意味でも、資産運用は有用性が高いです。政府と日本銀行はデフレ脱却を目指して年2%の物価上昇を目標に掲げていて、今後インフレが進む可能性があります。日本はこれまで長くデフレが続いていたので、貯金していればその額だけの価値を守ることができました。しかしインフレになったら、貯金しているお金の実質的な価値は減ってしまうのです。
20、30歳ならば、毎月少しの額を投資すれば資産形成につながっていました。なぜなら、投資するのが長い期間であればあるほど利子がついていたからです。50歳の方にそんな余裕はありませんから、毎月まとまった額を投資に回す必要があります。
少し工夫すれば、お金は捻出できると思います。子どもが家を出たので、大型の自家用車を中古の軽自動車に買い替えるとか、飲み会の回数を減らすとか。
老後のための資産形成のラストスパートだと思って、勝負をかけてください。
60代は、資産運用前に総資産を算出しよう
そして60代、ついにセカンドライフの突入です。
これまでに貯めてきたお金や、退職金などの資金をどうすべきか考えている人も多いのではないでしょうか。資産運用を始める前に、自分が持っている金融資産を把握し、どの程度運用に資金をあてられるかチェックしてみてください。
複数の金融機関の口座に分かれている場合は、資産を一覧表にまとめましょう。終身保険や養老保険など貯蓄型保険に加入している場合は、解約返戻金に相当する額も合わせて、現在の資産額を算出します。
当面の生活費にあてる資金や医療費などは引き出しやすい預金に入れておいてください。
一方で、70代以降にかかる生活費や住宅のリフォーム費用、車の買い替え費用、子どもや孫のために使いたいお金などは、実際に使うまで運用することが可能です。
このほかに、配偶者や子どもに相続させたい資産も運用に回すことを検討してもよいでしょう。
60代は使いながら運用することが大切です。引き出すタイミングを考えながら賢く運用してください。
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