この記事は2023年3月3日にSBI証券で公開された「《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄」を一部編集し、転載したものです。

《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄
(画像=SBI証券)

目次

  1. 《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄
  2. 高配当・好業績銘柄のご紹介
    1. 商船三井(9104)~海運大手。当面は利益がピークアウトの公算も、高配当利回りが継続か
    2. 日本製鉄(5401)~高炉トップ。2023年に入り株価が上昇基調
    3. 日本特殊陶業(5334)~配当方針は完全業績連動型
    4. 住友商事(8053)~「5大総合商社」の一角だが、予想配当利回りは最高
    5. 日本曹達(4041) ~ 国内外で展開する化学会社。4期連続で増配実施予定
    6. 住友倉庫(9303)~10期連続で増配実施を予定
    7. いすゞ自動車(7202)~世界的トラックメーカー。海外需要堅調による業績見通し拡大、今期も増配実施を予定
    8. 東京精密(7729)~半導体製造装置メーカー
    9. 大林組(1802)~大手ゼネコン。豊富な自己資本の下、増配実施を予定

《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄

東京株式市場は3月相場に入りました。3月末を年度末としている投資家にとっては、非常に重要な月と考えられます。また、3月末に決算を迎える上場企業はTOPIX構成銘柄の約3分の2、日経平均採用銘柄の8割強に相当します。その中の多くの企業で、配当や株主優待の権利が確定することになります。

3/1(水)現在、日経平均株価および東証プライム市場の予想配当利回りはともに2.3%台になっています。同配当利回りは、当面のピークとなった2020年3月に付けた2.9%台からは下げていますが、当時は「コロナ2019」の急拡大を警戒し、株価が急落した特殊な時期でした。それを考えると、「2.3%」も十分高い水準であると考えられます。上場企業が株主還元を強化する流れの中、配当を増やす企業が増えており、株価が高水準であるにもかかわらず、配当利回りも高水準を維持しています。

投資家としては、高い配当利回りを期待できる投資環境を生かさない手はないと思います。海運株のように、企業業績の拡大とともに、配当も大幅に増やし、株価も大きく水準を上げた例も出てきました。海運株は、株式投資における配当の魅力を、投資家にわかりやすく示してくれた存在であると考えられます。

ちなみに、受け取る配当金が多くなってくると、配当金から税金が引かれるか、引かれないかの差も、投資パフォーマンスに大きく影響してくると考えられます。すなわち、120万円を元本とする少額投資の利益や配当金に対し、従来課税される20.315%の税金が非課税となるNISA(少額投資非課税制度)を活用したい投資家にとっても、3月は重要な月であるとみられます。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では、高配当利回りが期待でき、業績的な裏付けもある銘柄をご紹介すべく、以下のスクリーニング(データは2023年2月末時点)を行ってみました。

(1)東証プライム市場上場銘柄(広義の金融を除く)
(2)3月に配当の権利確定を予定する3月決算銘柄(権利付最終日は3/29)
(3)時価総額が1,000億円超
(4)予想純利益を公表するアナリストが2名以上
(5)年間予想配当利回り(市場予想ベース)が4%超
(6)第3四半期累計純利益が黒字かつ前年同期比で増益
(7)上述の第3四半期累計増益率が通期市場予想純利益の増益率より大きい、または第3四半期累計純利益の通期市場予想純利益に対する進捗率が75%超
(8)信用取引規制が実施されていない

図表2の銘柄は、(1)~(8)のすべての条件を満たしており、予想配当利回りの高い順に並べています。同一業種の銘柄があるときは原則予想配当利回りの高い銘柄のみを残し、予想配当利回りが最低4%超の組み合わせになるようにしています。ご紹介した銘柄はすべて、日経平均株価および東証プライム市場の予想配当利回りである2.3%台を大きく上回る4.0%以上の予想配当利回りとなっており、9銘柄の単純平均は6.1%で、「高配当利回り銘柄」と考えてよいと思われます。

《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄
(画像=SBI証券)
《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄 《NISA活用も!》平均6.1%期待の高配当・好業績銘柄
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高配当・好業績銘柄のご紹介

以下、高配当・好業績銘柄について、ポイントをご紹介します。

商船三井(9104)~海運大手。当面は利益がピークアウトの公算も、高配当利回りが継続か

海運大手企業です。コンテナ(貨物を入れて輸送するための入れ物)を用いた海上輸送事業(コンテナ事業)を、日本郵船(9101)および川崎汽船(9107)との共同出資(ONE社)で営んでいます。同事業は、持ち分法投資損益として業績に貢献し、同社経常利益(2023/3期第3四半期累計)の86%を占めています。米中貿易摩擦によるコンテナ不足や、コロナ2019を背景とした物流の混乱等を背景に、2020年以降、コンテナ運賃が歴史的高騰となり、当社業績も急拡大しました。経常利益は20/3期550億円→21/3期1,336億円→22/3期7,217億円と急拡大。23/3期は第3四半期累計経常利益が7,392億円(前年同期比51.6%増)と好調。通期会社予想は経常利益7,850億円(前期比8.8%増)です。

なお、コンテナ市況は2022年2月にピークアウトし、現在は2020年秋の水準に回帰しています。2024/3期は経常利益ベースで前期比72%程度の減益となる市場予想です。1株配当については、今上期実績300円+期末会社予想260円=通期会社予想560円の計画。市場では533円(年間予想配当利回り15.0%)を予想しています。

日本製鉄(5401)~高炉トップ。2023年に入り株価が上昇基調

鉄鉱石を原材料に各種鉄鋼製品を生産する高炉の国内トップ企業で、世界的にも大手企業です。2023/3期第3四半期は売上高5兆9,616億円(前年同期比20.6%増)、事業利益7,618億円(同2.4%増)と増収増益でした。世界的に景気・企業業績に不透明感が強まる中、鉄鋼需要にも逆風がふきやすくなっていますが、収益構造の抜本的な見直しが奏功したようです。

1株配当については、今上期実績90円+期末会社予想90円=通期会社予想180円の計画です。市場でも181円(年間予想配当利回り6.0%)を予想しています。中国経済の再開に対する期待や、値上げ力に対する評価、予想配当利回りの高さ、低PBR・低PER等への評価等があり、2023年の同社株は上昇基調です。ただ、市場コンセンサスをみる限り、2024/3期は減益になる可能性が大きそうです。

日本特殊陶業(5334)~配当方針は完全業績連動型

自動車などに搭載されるスパーク(点火)プラグや、半導体ICなどのセラミックを扱う企業です。スパークプラグの世界シェアはNo.1で、海外売上高比率は83%、世界21カ国で事業を展開しています。

配当方針は完全業績連動としており、配当性向の目安は40%です。円安や半導体不足の解消に伴う新車組付用製品の増加等が寄与し、2Q(2022年10-12月)決算発表時に業績の上方修正と増配の実施を発表しました。前回予想の年間予定配当152円→166円と大幅増額です。

住友商事(8053)~「5大総合商社」の一角だが、予想配当利回りは最高

日本の5大総合商社(同社と三菱商事、三井物産、伊藤忠、丸紅)の一角を占めています。部門別の純利益構成比(2023/3期第3四半期)は、「資源・化学品」(銅、ニッケル、リチウム、コバルト、アルミ他)が47%、「金属」(鋼管他)が17%、「輸送機・建機」が16%、「生活・不動産」が10%他となっています。2023/3期第3四半期(累計)は純利益が4,642億円(前年同期比38.5%増)と好調でした。資源・エネルギー価格の高騰で「資源・化学品」が大幅増益となった他、北米鋼管事業で市況が良好だった「金属」が増益になりました。通期では純利益5,500億円(前期比18.6%増)を見込んでいます。

1株配当については上期実績57.5円+下期予想57.5円=年間115円が会社予想です。ROE3.5%~4.5%の範囲内で連結配当性向30%を目安にしています。市場コンセンサスでは予想1株配当が116.25円で、予想配当利回り(2/28)は5.0%の計算です。5大総合商社のうち、他の4社の平均市場予想配当利回りは3.8%で、当社の予想配当利回りが相対的に高くなっています。2/7(火)~4/28(金)の期間で、株数で3,300万株、金額で500億円を上限に自己株式の買い入れを実施中です。なお、2/28(火)までに、689.8万株(162億円)を買い入れ済みです。

日本曹達(4041) ~ 国内外で展開する化学会社。4期連続で増配実施予定

アグリビジネス、機能性化学品事業、医薬品事業、環境化学品事業、クローアルカリ事業の5つの分野にわたって国内外で活躍する化学会社です。海外売上高比率は4割弱で、年々増加傾向にあります。自社技術にこだわった研究開発型の企業であり、農薬から医薬品原料、半導体フォトレジストの材料まであらゆる製品を展開しています。

配当性向は40%が目安で、1株当たり年間配当金の下限は80円です。3期連続で増配を実施し、今期3Q(2022年10-12月期)決算発表でも堅調な業績見通しを背景に、4期連続となる増配実施予定を発表。業績面も販売増などを背景に、売上高1,700億円(前年同期比11%増)、営業利益161億円(同35%増)と増収増益の見通しです。

住友倉庫(9303)~10期連続で増配実施を予定

住友グループの倉庫大手です。

物流事業の売上高が77%(22.3期)と事業の主軸です。 前期(22.3期)は世界的な海運市況の好調さを背景に、海運事業が寄与する形で大幅増益となりました。しかし、今期は孫会社である海運会社の全株式を売却。その影響もあり、今期(23.3期)は純利益は前期比20%弱の増益予想ですが、営業利益は6%の減益予想です。会社側は、今後、主軸の物流事業や不動産事業に経営資源を集中する方針です。

今期が最終年度の中計では、増配の継続を目指し、10期連続で増配予定です。また、利益水準にかかわらず1株につき47円の年間配当金を維持することとしています。

いすゞ自動車(7202)~世界的トラックメーカー。海外需要堅調による業績見通し拡大、今期も増配実施を予定

大手商用車(トラック)メーカーです。

150ヵ国以上で製品を販売し、海外に3,560以上のサービス網を有しています。海外売上高比率は65%で、うちタイが27%を占め高水準の割合です(22.3期)。

業績は、2期連続で過去最高益を更新の予想(会社予想)です。3Q(2022年10-12月期)決算発表でも同時期で過去最高の純利益達成となりました。日本では、半導体不足による生産制約は残ると想定していますが、タイで高水準の生産計画を見込んでいます。海外市場で需要が好調なもようです。また、整備・サービスや中古車の販売なども手掛けており、半導体不足により中古価格は上昇中です。

今期(23.3期)2Q(2022年7-9月期)決算発表時点では、通期業績見通しの上昇修正と同時に増配計画(66円~72円)を発表。配当性向のメドとしては40%を掲げています。

東京精密(7729)~半導体製造装置メーカー

世界トップレベルのシェアをもつ半導体製造装置や国内トップシェアの精密測定機器を展開する企業です。

同社のコア技術である「精密に測る力」を基に、半導体や自動車などを生産する企業のモノづくりを支えています。海外売上高比率は71%を誇るグローバル企業です。

配当性向の目安は40%とし、利益水準にかかわらず年20円の配当金は維持する方針です。業績と連動し、3期連続で増収・増益を達成予定となっています。なお、半導体市況に関しては、半導体製造装置部門は民生品需要の減少を背景に設備投資も減速が続く見通しです。一方、SiCパワー半導体向けは、他半導体関連企業同様、需要は堅調に推移しています。

大林組(1802)~大手ゼネコン。豊富な自己資本の下、増配実施を予定

関西発の大手ゼネコンの一角です。首都圏でも実績多数で東京のシンボル「東京スカイツリー」も同社が手掛けました。

国内建築事業を中核に、海外建設事業、開発事業、グリーンエネルギー事業、新領域ビジネスの5つの分野で事業を展開。海外売上高比率は、約20%(22.3期)です。

配当政策では今期(23.3期)から、自己資本配当率(DOE)を基準とした新たな株主還元方針を採用しています。DOEベースになったことで、自己資本に応じて配当額の目安が決まります。同社のように長年の利益の蓄積を有する企業の場合、自己資本も豊富なケースが多くなっています。よって、歴史ある企業だと配当性向よりDOEベースの方が、株主により多く還元されるという傾向があります。

同社においては、19.3期~22.3期の配当実績は32円でした。このうち22.3期の純利益は前期比60%減でしたが、32円配当は維持されました。今期は純利益が19.3期~21.3期の水準を下振れる会社予想であるのにかかわらず、今期予想年間配当金は42円で10円増額される予定です。

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数