本記事は、桑原晃弥氏の著書『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

正解
(画像=Day Of Victory Stu. / stock.adobe.com)

何が正解だったのか、何が失敗だったのかは、
死ぬ間際にならないと分からないんじゃないかな

―― 『Number』1094・1095

人生というのは「選択」の連続です。

右か左かというY字路に立ち、どちらを選ぶかで迷った挙げ句、結局は「どちらか1つ」しか選べないわけですが、時には「これで良かった」ということもあれば、「ああ、失敗したなあ。あちらを選んでいればなあ」と後悔することもあります。

大谷翔平は高校卒業を前に、表明した通り日本のプロ野球を経ることなく直接メジャーリーグを目指すか、それともドラフトで指名してくれた日本ハムに入団するかはとても大きな選択でした。

次には日本ハムからメジャーリーグに移籍する際、いくつもの球団から声を掛けられ、どこを選ぶかも大問題でした。さらに2023年のシーズンオフにはFAとなり、いくつもの球団が交渉に乗り出す「争奪戦」の末にドジャースを選んでいます。

さらに遡れば、日本ハム入団に際して、「投手か打者か」ではなく、両方をやる「二刀流」という前代未聞の選択もしています。こんな岐路に立たされれば、誰だって迷うし、あとになって「ああしていれば、こうしていれば」と後悔することもあるのではとも思いますが、大谷自身は「何が正解だったのか、何が失敗だったのかは、死ぬ間際にならないと分からないんじゃないかな」と言っています。こうも付け加えています。

「その瞬間、良かったなと思えれば全部良かったし、ダメだったなと思うようならどう転んでもダメだったろうし」

科学の実験ならさまざまなシミュレーションをすることで、「何が正解か」を導き出すことはできますが、大谷に限らず誰もが人生を生き直すことができない以上、所詮は「興味深い議論」に過ぎません。大谷自身二刀流についてこんなことを言っています。

「もしかしたら、片方をやっていたほうがいいのかもしれない。でもやっぱり、2つをやっていたほうがいいのかもしれない。そこには正解がなくて、僕としては『やったことが正解』というだけなんです」

選択を迫られた時、人は「どちらが正解か」を考え、迷いますが、1つしか選ぶことができない以上、やるべきはどちらを選んだとしても、「これを選んで正解だった」と思えるような悔いのない生き方をすることです。大谷が言うように「何が正解か」は死ぬ間際にならないと分からない以上、選んだ道で最善を尽くせばそれでいいのです。

ワンポイント
選んだ場所で最善を尽くすことが、悔いのない生き方につながる。

やってみてダメだと実感したら、それはそれでいい。
やらないというのがもったいないでしょう。
だから、やってみる。で、実感する。
自信はそのあとについてくる

―― 『大谷翔平 野球翔年Ⅰ』

「ファーストペンギン」という言葉があります。集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海の中へ、魚を求めて果敢に飛び込むペンギンのことを指す言葉です。転じて、リスクを恐れることなく、初めての挑戦をするベンチャー精神を持つ人や企業を指す言葉ともなっています。

大谷翔平は日本のプロ野球界にとっては紛れもないファーストペンギンでした。

プロ野球選手のアマチュア時代に目を向けてみると、プロになるほどの選手ですから、リトルリーグや高校時代には「エースで四番」だった選手はたくさんいるわけですが、ある時期からはどちらかに絞っていますし、プロ入りに際して「両方やりたい」と言う人はいませんでした。

もちろんプロでも過去に二刀流をやった人は何人かいたものの、両方で輝かしい成績を挙げる選手はいなかっただけに、二刀流というのは「プロではあり得ないもの」「やるだけムダ」という考えが常識になっていました。

そのために二刀流での挑戦を明言した大谷や日本ハムの監督・栗山英樹はプロ野球界のOBや評論家からいろいろな批判を浴びますが、大谷自身は「両方やることが失敗だったとしても、自分にプラスになる」と前向きに考えていました。こう話していました。

「やってみてダメだと実感したら、それはそれでいい。やらないというのがもったいないでしょう。だから、やってみる。で、実感する。自信はそのあとについてくるものなのかなと思います」

何かをやる時、「自信はありますか?」と質問する人がいますが、自信というのは最初からあるわけではなく、実際にやった結果として生まれるというのが大谷の考え方です。自信のあるなしよりもまずやってみるという姿勢が大切なのです。

いろいろ言われることで、「やってやるんだ」という気持ちになりますし、たとえ失敗しても、この先、2つをやりたいと思う子どもたちが出て来た時、「僕の挑戦が1つのモデルとなって、それを成功につなげてくれればいいという思いもあった」といいます。

それだけにメジャーリーグが大谷にオファーを出すにあたって、二刀流を認めてくれたことは「嬉しかったし、2つやってきて良かったなと思った」と話しています。2023年MLBドラフトでいの一番に指名されたのは大谷に憧れて二刀流を志したポール・スキーンズでした。

ワンポイント
たとえ自信がなくてもまずやってみる。自信はその結果としてついてくる。
『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』より引用
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『大谷翔平の言葉』『栗山英樹の言葉』(以上、リベラル社)、『大谷翔平は、こう考える』[PHP研究所)、『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』
  1. 先入観は可能を不可能にする ―― 大谷翔平の名言
  2. 「どちらが正解か」ではない、選んだ道で最善を尽くせばいい ―― 大谷翔平の名言
  3. 「指針」や「期待」は超えていくもの ―― 大谷翔平の名言
  4. 本当の成功は「やり尽くした」努力の先にある ―― 大谷翔平の名言
  5. 「メンタルも含めて技術」こそが成果の理由 ―― 大谷翔平の名言
  6. 与えられた条件の中で何ができるかに集中し、最善を尽くす ―― 大谷翔平の名言
  7. 地位や役職に相応しい人間であるとは、圧倒的な実力が必要 ―― 大谷翔平の名言
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