本記事は、桑原晃弥氏の著書『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

自信
(画像=kieferpix / stock.adobe.com)

僕は今まで、結果を出すためにやり尽くしたと言える1日1日を、
誰よりも大事に過ごしてきた自信を持ってます

―― 『大谷翔平 野球翔年Ⅰ』

「怠惰であることには隠された無意識の駆け引きがあることが分かる」は心理学者アルフレッド・アドラーの言葉です。アドラーによると、怠惰な子どもたちは、綱渡りをする人に似ているといいます。ロープの下には網が張ってあり、たとえ落ちたとしても衝撃は柔らかなものになります。

努力をしたのに成果が上がらない時、普通は努力不足や能力不足に向き合うことになりますが、怠惰な人は「もっと一生懸命にやれば成果は上がったはずだ」という逃げ道をつくることができます。「全力で頑張ったけれどダメだった」は自分の限界や能力のなさを思い知らされることになるのに対し、「中途半端な努力で結果が出なかった」人は、「本気でやればもっとできる」と言い訳ができるし、能力のなさと向き合う必要もありません。

全力を尽くさないこと、それは最初から失敗の言い訳を用意することであり、自分の弱さを隠すことでもあるのです。気分的には「楽」かもしれませんが、こうした人が圧倒的な成果を手にすることは決してありません。

「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのなら、それはまだ努力とは呼べない」は王貞治の言葉です。成功には努力が欠かせないことは誰しも知っていますが、多くの人はそこそこの努力で「もう十分にやった」と納得してしまいます。しかし、それではダメで、「成果が出るまで」やり尽くして初めて本当の努力と呼べるのです。

大谷翔平の二刀流への挑戦を提案し、支え続けたのは日本ハムファイターズの監督・栗山英樹ですが、栗山が「大谷ならできる」と思えた理由の1つは大谷が子ども時代から実践してきた「自分がこうだと決めたら最後までやり続ける強さと忍耐力」だといいます。大谷は高校時代も、プロに入ってからも「こうするんだ」と本気になったら、できるまで必ず「やり切る」といいますが、だからこそ栗山は大谷に二刀流ができると信じたし、大谷自身も二刀流を形にすることができたのです。大谷はこう言い切っています。

「僕は今まで、結果を出すためにやり尽くしたと言える1日1日を、誰よりも大事に過ごしてきた自信を持ってます」

「やる」ことはできても、最後まで「やり切る」ことが出来る人は案外少ないし、ましてや大谷のように何年にも渡って「やり続ける」ことのできる人はほとんどいません。大谷の「やり切る」力こそがメジャーリーグでの成功を可能にしたのです。

ワンポイント
本当に成功したいなら「言い訳」ができないほどの努力を続ける。

やらされていたメニューではなくて、
取り組むトレーニングがどういう成果に結びつくのかを
ちゃんと理解してやるのと、しないでやるのとでは、
成果は大きく違ってくる

――『道ひらく、海わたる』

「仕事は何のためにやるのか」という目的によって働く人の気持ちや取り組み方は大きく変わることを教えてくれる「3人の石工の話」があります。ピーター・ドラッカーが著書の中で紹介したことで広く知られるようになったエピソードです。

旅人がある村を訪れたところ、3人の石工が作業をしていました。旅人が「あなたは何をしているのですか」と尋ねると、1人目の男は「金を稼ぐためにこんなきつい仕事をしているのさ」と答えます。2人目の男は「国一番の石工を目指してがんばっている」と答え、3人目の男は「私は皆さんの心の拠り所になる教会を建築しています」と答えました。

「仕事は何のためにやるのか」は人によって考え方も違いますし、目指すものも違うわけですが、お金のためだけにいやいややる仕事より、目的を明確に持ったうえで仕事に励む方がより良いものができるし、人としても成長できるのではないでしょうか。

「仕事には納得が必要だ」はビジネスの世界でよく言われる言葉です。「上司から指示された」という理由だけで納得のいかないままに仕事をすると、良い結果が出ないことがよくあります。そして失敗しても、「上司がやれと言ったからやっただけ」と責任転嫁するようではいつまで経っても成長できませんし、成果も上がりません。

成果と成長に欠かせないのが「納得」なのですが、スポーツの世界でしばしば見受けるのが「なぜやるのか」が分からないままの「やらされる」練習やトレーニングです。もし「何のためにやるんですか」などと聞こうものなら、「いいから黙ってやれ」と一喝され、やってはみるものの、何だかすっきりしない気持ちが残ることになります。

大谷翔平は自分で「これをやりたい」と決めたことに対しては圧倒的に頑張れるという自信があるだけに、誰よりも「それは何のためにやるのか」「それをやることでどんな成果が期待できるのか」を重視します。こう話しています。

「やらされていたメニューではなくて、取り組むトレーニングがどういう成果に結びつくのかをちゃんと理解してやるのと、しないでやるのとでは、成果は大きく違ってくる。そこはちゃんと理解してやってきた自信はあります」トレーニングに限らず、何かをやる時は「納得」や「理解」を大切にして、「目的」も明確にします。その方ががんばれるし、自分の成長につながりやすいのです。

ワンポイント
仕事をやるときは「何のため」「誰のため」を理解して取り組もう。
『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』より引用
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『大谷翔平の言葉』『栗山英樹の言葉』(以上、リベラル社)、『大谷翔平は、こう考える』[PHP研究所)、『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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