本記事は、桑原晃弥氏の著書『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

成果
(画像=YY apartment / stock.adobe.com)

真面目にやってきた人間が「てっぺん」にいくべきだと思っていますし、
それなりの成果を出すべきだと思っています

―― 『道ひらく、海わたる』

人生というのは必ずしもうまくいかないもので、「正直者が馬鹿を見る」ではありませんが、誠実に正直に生きてきたにもかかわらず思うような結果が出ないとか、不幸に見舞われることもあります。世の不条理を嘆きたくなりますが、それでも誠実に正直に生きることの大切さを信じたいのも事実です。

大谷翔平が花巻東高校時代に作成した目標達成シートの中央には「ドラフト1 8球団」と書かれています。これ自体はいかにもプロ野球を目指す高校生らしいものですが、そのために必要な要素として、「体づくり」や「メンタル」のほかに、「人間性」や「運」が書き込まれているのは意外な気がします。

世の中にはスポーツや芸能などに秀でていれば人間性は関係ないと考える人もいますが、大谷はそう考えていませんでした。トップに立つ人間、成果を挙げる人間はちゃんとした人間、真面目にやってきた人間であるべきで、自分はそう信じるからこそ、自分もそうありたい、というのが大谷の考え方です。

そんな考えからでしょうか、大谷は今でもグラウンドを歩いている時にしゃがんでゴミを拾うことがありますが、高校時代には佐々木洋監督の「球場の一番高いマウンドに立つ人間は、みんなが一番嫌がる仕事をしなさい」という教えを守り、寮のトイレ掃除を文句ひとつ言わずにやっていましたし、運を上げるために行うこととして、あいさつや部屋掃除も大切にしています。

ほかにも大谷はリトルリーグ時代、エースで四番ながら率先してトンボを手にグラウンド整備を行っていました。

グラウンドでゴミを拾うといった行為は、同じく大リーグで活躍する菊池雄星(花巻東高校の先輩)も実行していますが、こうした高校時代の教えを守り続け、習慣にしているところに花巻東の強さの秘密があるのではないでしょうか。

努力には「表の努力」と「裏の努力がある」というのは、桑田真澄の考えですが、アスリートとして大成するためには練習などの「表の努力」だけでなく、挨拶やゴミ拾い、掃除といった「裏の努力」も大切で、それを実行してこそ、野球人として、また人として成功することができるのです。楽しいことよりも正しいことを優先し、表の努力だけでなく、見えない裏の努力も惜しまない。大谷は常に「てっぺん」を目指すに相応しい人間であろうとしているのです。

ワンポイント
仕事に全力を尽くすのは当たり前。人として「裏の努力」も怠らない。

息子である自分が試合に出るためには
圧倒的な実力がなければいけない

―― 『道ひらく、海わたる』

「親ガチャ」という言い方があるように、どんな家に生まれるか、どんな親のもとに生まれるかによって、その子どもの人生が左右されるというのはたしかです。裕福な家に生まれればお金の苦労なしに成長することができますし、代々事業を営む家に生まれれば、ごく当たり前のように後を継ぐことができます。教育熱心な一族に生まれれば、早くから「いい学校へ行く」ことを当然と考えるようになります。

反対に決して裕福とは言えない家庭に生まれると、苦労を強いられることも多いだけに、つい「親ガチャ」という言葉が生まれたのでしょうが、恵まれた家に生まれたらそれだけで幸せかというと、必ずしもそうとばかりは言えません。「親の七光り」という言い方があるように、人気や実力、地位のある親を持つと、その子どもが同じ道を歩むのはなかなか大変です。

実際、長嶋一茂は優れた身体能力の持ち主でしたが、父親である長嶋茂雄と比較されることで苦労をしていますし、有名俳優やタレントを親に持つ二世俳優や二世タレントも何をやっても「親の七光り」と言われ、実力が正当に評価されないという、そんな辛さを味わうことも少なくありません。

大谷翔平の父親・徹は三菱重工横浜で社会人野球のプレイヤーとして活躍した後、地元の岩手に帰り、トヨタグループの関東自動車工業に就職しています。社会人野球の経験者だけに、大谷が所属した水沢リトルリーグでは父親が監督を務め、一関リトルシニアではコーチを務めています。

親子ではあっても、指導者と選手ですから、父親は大谷を特別扱いすることはせず、大谷自身も「同じぐらいの子が自分の息子と同じ実力だったら、息子ではなくその子を試合で使わなければならない」という父親の立場をよく理解していました。同じくらいの実力なら、「監督の息子だからひいきされている」となるからです。

「息子である自分が試合に出るためには圧倒的な実力がなければいけない。チームのみんなに納得してもらえる実力がなければいけない」と幼いながらに覚悟を決めた大谷は、仲間の選手の何倍も練習することで、圧倒的な実力をつけていきます。

結果、リトル時代に18個のアウトの内17個を三振で奪うほどの力をつけるわけですが、そこにあったのは父親や周囲の期待に応え、信頼される選手になりたいという思いだったのです。

ワンポイント
嫉妬を避けるコツは、その地位や役職に相応しい人間であること。
『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』より引用
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『大谷翔平の言葉』『栗山英樹の言葉』(以上、リベラル社)、『大谷翔平は、こう考える』[PHP研究所)、『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
ZUU online library
※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます。