本記事は、熊谷徹氏の著書『GDPで日本を超えた!のんびり稼ぐドイツ人の幸せな働き方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
日本の1人当たり名目GDPがG7で最下位に転落
経済学者の間では、国民の満足度や幸福度を測るための物差しとして、GDPの総額ではなく、GDPを人口で割った1人当たりGDPがしばしば使われる。GDPの総額だけでは、国富が国民1人1人にどの程度行きわたっているかを把握できないからだ。
2023年12月25日、内閣府はこの1人当たりGDPについて、衝撃的な数字を発表した。内閣府は、OECDの統計などを基にして、「2022年の日本の1人当たり名目GDPが34,064ドルと、OECD加盟国中で第21位になった」と発表した。日本は2021年の第20位から、第21位に転落した。日本はイタリア(34,733ドル)に抜かれて、G7諸国の中で最下位になった。ドイツの1人当たりGDPは48,718ドルで、第16位。日本よりも43%多かった。
内閣府はこの統計の中では主要国だけをげており、OECD加盟国の全ての数字を公表しなかった。IMFは、内閣府よりも多くの国を網羅した、2023年の1人当たり名目GDPのランキングを公表している。
IMFの統計によると、日本(33,950ドル)の順位は第34位。G7の中で最も低かった。ドイツの1人当たり名目GDPは52,824ドルで、第20位だった。ドイツの1人当たり名目GDPは、日本よりも約55%多いことになる。つまり国民1人当たりの名目GDPを比べた場合、ドイツと日本の間の格差は、名目GDPの総額を比べた場合よりもはるかに大きい。1人の日本人として、残念に思う。
ある日本人の知り合いは、「1人当たりの名目GDPが第34位では、日本は後進国だ」と私に言った。
私はOECDの統計を使って、2000年から2022年の日独の1人当たりの実質GDPの推移も比べてみた。2022のドイツの1人当たりの実質GDPは40,869ドルで、日本(32,964ドル)よりも約24%多かった。ドイツの1人当たり実質GDPは、2002年から2022年までに22.2%増えたが、日本では同時期に9.9%しか増えなかった。ドイツの成長率のほぼ半分だ。
日本を大きく上回るドイツの賃金水準
OECDはもう1つ、我々日本人にとって衝撃的な統計を発表している。2023年のドイツの市民1人当たりの年間実質平均賃金は62,473ドルで、日本(42,118ドル)を48.3%も上回った。ドイツはOECD加盟国38ヶ国中12位、日本は25位だ。日本の平均賃金はG7で最も低いほか、OECDの平均値よりも24%少なかった。我が国の平均賃金は韓国(47,715ドル)にも抜かれている。
OECDの別の統計によると、ドイツの賃金水準は1995年~2021年に68.2%上昇したが、日本の賃金水準はこの期間に3%減った。これでは、日本の国内消費が大きく増えないのも無理はない。ドイツの賃金水準がこれだけ上昇したのは、労働組合が経営者との交渉の際に、時にはストライキなどの強硬手段を取り、賃上げを勝ち取ってきたためだ。ドイツの労働組合は、日本よりもはるかに戦闘的で、自分たちの要求を貫徹するためには、ストライキに踏み切り、顧客にも
著書に『ドイツ人はなぜ、年収アップと環境対策を両立できるのか』『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』(以上、青春出版社)、『日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ』(洋泉社)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリズム基金賞奨励賞受賞。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
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