「住宅ローン」金利と物価
3つ目に考える「住宅ローン」の金利と、物価の動きには深い関係がある。政府と日銀が目指している「物価上昇率2%」が達成されると、そのあとには金利の引き上げが想定される。預金金利が上がるのは嬉しいことだが住宅ローン金利が上がるのはこれから住宅を購入しようとする人々にとって歓迎しにくい。
金利引き上げはまだ数年かかる見通しであるが住宅ローンの返済は長期間である。変動金利で借りている場合や固定金利特約型(選択型)であれば将来的に影響を受けることは考えられる。
仮に5000万円を35年で借りて年利1%だと月額返済額は約14万1150円(ボーナス払い無し)である。5年後に金利が0.5%上がると返済額は約1万円増える。当面の住宅ローン選びに影響はなさそうだが、住宅ローンはもともとの借入額が大きいことからわずかな金利の違いでも家計への影響が大きくなる特徴がある。
いずれ物価が上昇して金利が引き上げられることを考えた住宅ローン選びをしたり、家計に余力を持たせるなどの準備をしておくことが大切だろう。
もどる、もらえる「制度」を上手に使う
そして4つ目は、マイホームを購入すると利用できるいくつかの有利な制度だ。主なものに、納めた所得税がもどる「住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)」や、消費税アップの負担感を抑えるために創設された「すまい給付金」がある。なお2015年3月から始まっていた「省エネ住宅ポイント」はすでに終了した。
「住宅ローン控除」は10年間利用できる
住宅ローン控除はマイホーム購入者の多くが利用している制度で、住宅ローンを借りていれば10年間利用できる。仕組みは、「毎年の年末時点のローン残高×1%」が減税枠となり、その範囲内で納めた所得税がもどる仕組みだ。所得税が減税枠に満たない場合はさらに個人住民税が最大13万6500円もどる。
例えば、2016年末時点の住宅ローン残高が4,000万円だと1%は40万円となりこれが減税枠となる。仮にその年に納めた所得税が30万円であれば枠内に納まるので全てもどってくることになる。さらに減税枠は10万円余る(40万円-30万円=10万円)ため、翌年度に納める個人住民税が10万円ほど減額になるという仕組みだ。これが10年間続くためお得感は大きい。
注意点として、住宅ローンの残高には5000万円(認定住宅以外は4000万円)の上限が設けられていることを知っておきたい。仮に9000万円を借りた場合でも減税枠は5000万円×1%であり、減税枠の上限は50万円(認定住宅以外は40万円)である。
「すまい給付金」は国交省サイトでシミュレーション可
6番目の項目として、マイホームを購入した人がもらえる「すまい給付金」も知っておきたい。ただしすべての人が対象ではない。給付金額は30万円・20万円・10万円の3段階があり「都道府県民税の所得割額」が9.38万円以下の人で、この税額が少なくなれば給付金を多くもらえる仕組みだ。国土交通省のすまい給付金専用サイトでは、収入や家族構成から給付対象になるかどうかのシミュレーションができるため参考にしてほしい。
ここで意外と見落としがちなポイントは「引渡し時期」だ。すまい給付金額は「物件の引渡し時点」での納税額で給付金を計算するのだが、都道府県民税の所得割額が記載される「課税証明書」は毎年概ね6月に前々年度の額から前年度の額に変わる。
例えば2016年6月に引渡しを受けたなら2014年の課税証明書を用いる。同年7月以降に引渡しを受けたなら2015年の課税証明書を用いる。したがって2014年よりも2015年の都道府県民税の所得割額が多いと見込まれる場合(給与が増えた、扶養控除の対象者が減ったなど)には2016年6月までに引渡しを受けたほうが多くもらえるケースもある。
以上6つの項目を中心に検討しながら、完成時期や入居時期の検討をしていくとよいだろう。
中谷俊雄
FPオフィスライズ
代表
個人相談、法人の福利厚生メニュー「FP相談室」、各種マネーセミナーを開催、FP技能士資格の取得講座は累積2000時間を超える。著書に『ズバリわかる!FP技能検定3級』(ナツメ社)がある。帯広コア専門学校・札幌学院大学非常勤講師。
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