新型コロナウイルスの危機からいち早く脱しつつあるといわれている中国。中国では新型コロナの感染拡大期にリモートワーク支援などのさまざまな新サービスが台頭し、アフターコロナにおける新たなテックトレンドを形成するものとして注目を集めている。

新型コロナウイルスと中国

中国,テックトレンド
(画像=PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大は、まず中国の武漢から始まった。感染者数と死者数が世界に先駆けて増え、中国政府や地元当局は感染の抑え込みに向けてさまざまな施策を打ち出した。

感染者数や死者数の推移については、正確性に疑問の声を上げる専門家がいるものの、現在では増加傾向はすでに収まっていると中国政府は発表している。

もしすでにこうした状況を迎えているのであれば、中国は世界で最初に感染が広がり、最初に終息を迎えつつある国だと見ることができる。

こうした状況の中国だが、感染の拡大と終息という視点に加えて、感染拡大が早期に起こったことで、感染拡大防止に貢献するサービスの提供が世界に先駆けて盛んに行われるようなった点にも注目しておきたい。

一時的な感染拡大防止のための外出自粛策などだけでなく、先端テクノロジーを活用した取り組みや従来の常識を覆すサービスが生まれたことは、特筆すべきことだと言えるだろう。

コロナを機に中国で生まれた新たな取り組み・サービス

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、中国において新たに誕生した先端テクノロジーを活用した取り組みや従来の常識を覆すサービスとしては、第5世代の通信規格「5G」を活用したオンライン診療やリモートワーク支援、自動運転技術の活用などが挙げられる。

・5Gを活用したオンライン診療

中国メディアなどによると、今年2月には、中国浙江省の人民病院遠隔超音波医学センターで、新型コロナウイルスに感染した患者の遠隔超音波検査が初めてオンラインで行われたという。 このオンライン検査には5G技術が活用された。同センターの医師が武漢市にいる医師や患者とオンラインでつながり、ロボットアームと超音波機器を遠隔操作して患者の検査にあたった。

5Gの高速通信を活用することで、リアルタイム性が高い状態で無事診察を終えることができたという。

・リモートワーク支援・オンライン学習支援

中国の主要都市では、感染拡大防止のために、住民の外出自粛措置や外出禁止措置が早期に始まった。こうした措置に伴って、在宅でのリモートワーク(テレワーク)を余儀なくされる人が出てきたが、リモートワークを支援するツールを無償提供する企業も出現した。

例えば中国のIT大手企業テンセントは、自社開発のオンライン会議システム「Tencent Meeting」を無償で広く公開した。民間企業がオンラインでも会議や商談ができるようにするためだ。

また、中国の巨大企業であるアリババグループは、企業用インスタントメッセンジャーアプリ「DingTalk」を学校にも提供し、児童や生徒たちが自宅にいながらオンライン授業を受けられる体制作りに貢献したという。

もちろんこうした無償公開には、新型コロナウイルス感染拡大を機にユーザーを獲得したいという狙いもあると考えられるが、コロナ禍の経済活動を下支えする存在になったことは間違いないだろう。

・自動運転技術の活用

中国では自動運転技術の有用性が広く認知されることにもつながった。中国国内で自動運転による無人消毒車が登場し、人と人との接触を減らしながら街中の消毒ができると話題になった。有人運転ではどうしても運転手の感染リスクがつきまとう。

さらに、自動運転車に食料品や料理、医療品を運ばせるという取り組みも注目を集めた。こうした中で特に存在感を高めた企業の一社が北京のスタートアップ企業・新石器(ネオリックス)だ。同社の自動運転車の販売台数は新型コロナによって一気に増えたという。

アフターコロナは中国市場の成長が顕著に?

オンライン診療、リモートワーク支援、自動運転……。これらは中長期的には利用が広がることが元々期待されていたが、新型コロナがそのトレンドを数年もしくは十数年早くする可能性が高いといわれている。実際に人々に利用され、便利さに対する理解が広がったからだ。

こうした視点で見れば、次世代型サービスを今回の新型コロナでいち早く展開した中国企業そして中国は、今後大きく成長を遂げる可能性があることが分かる。このような点に着目し、中国企業への投資やビジネス展開をする企業は今後増えてきそうだ。

ソフトバンクグループの孫正義会長は5月18日の決算説明会で、1929年の世界恐慌のあと自動車が経済の回復の主役となったことに触れ、経済危機のあとの回復は新産業がけん引すると持論を展開した。

こうした歴史が繰り返すのではあれば、リモートワーク支援や自動運転などのサービスを手掛ける企業は、今後有望なはずだ。こうした状況を踏まえて、今後の投資戦略を考えてみてはいかがだろうか。

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