仕事ができる人の資料作成のコツ、気になります。質のいい資料に共通することは「シンプル」だということです。それでは、たとえば企画を一枚でまとめるために、どのように情報の整理と再設計をすればいいのでしょうか。

(本記事は、永田豊志氏の著書『 会社では教えてもらえない仕事がデキる人の資料作成のキホン 』すばる舎(2017年5月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

必ず心にとどめておくべき「KISSの法則」

会社では教えてもらえない 仕事がデキる人の 資料作成のキホン
(画像=Webサイトより 画像をクリックするとAmazonに飛びます)

文書や口頭で何かを説明するとき、もっとも重要で、常に心にとめておかなければならないルールがあります。それは、「KISSの法則」というものです。

KISSといっても、もちろん、あのキスではありません。

「Keep it short and simple」の略で、つまり、常に短く、シンプルにしておけ、ということです。

なるべく単純化し、短い言葉でアイデアを伝えることが、アイデアの魅力を際立たせ、聴衆の記憶に深く残ると言われています。

なぜなら人間は、本来的にシンプルなものを好むからです。複数の選択肢があれば、必ずシンプルなものを選ぶようです。

しかし、シンプルにするのは簡単ではありません。仕事のやり方、資料を作るときも、放っておくとすぐに複雑化します。

だからこそ、「常にシンプルに」という強い信念とエネルギーが必要なのです。アップルの生みの親で、希代のカリスマ的経営者のスティーブ・ジョブズはいろいろなふうに表現されます。偉大な発明家、優れたクリエイター、聴衆を魅了するプレゼンター……。しかし、私は彼は複雑なものをシンプルにする王様だったと思います。

アップルの製品は、すべてスタイリッシュです。

しかし、デザインが優れているということは、飾り立てているということではありません。本質的なものが最良の状態で存在し、ムダなものが一切ないということです。
よけいなものを排除した状態がもっとも美しいのです。それは資料も同様です。

枚数も文字数も上限を決める

シンプルな資料を作る上で、基準にしたい上限があります。

・ワードで作る報告書はA41枚
・プレゼンのスライドは10枚以内
・スライドは1枚に1メッセージにする

細かくは後章でご説明させていただきますが、このような上限を決めると、スペースが限られているので、必要最小限のものしか入れられなくなります。そして、上限をこえたものは勇気を持って目をつぶり、捨てるのです。

時間は限られています。資料作りもミーティングも私たちの貴重な時間を投資して行うことです。

シンプルにするということは、資料を作る側にとっても、読む側にとっても大きなメリットがあるのです。

多忙なエグゼクティブは10秒で判断したい

仕事ができる人の資料のコツはどういったものでしょうか。品質のいい資料に共通することは「シンプル」だということです。企画を一枚でまとめるために、どのように情報の整理と再設計をしていくのかという部分に注目して学んでいきましょう。

・パワポは遠くから「眺める」もの

資料をプリントアウトして相手に渡す場合は、A3サイズのような大判1枚や、ワードで作成したA4書類で箇条書きに情報を列挙するパターンでもいいと思います。

しかし、会議室のプロジェクターなどでスライド上映したいという場合も多いはず。

そうした場合にもっとも利用されているのは、パワーポイントなどのプレゼンテーション専用のアプリケーションです。

パワーポイントで資料を作る場合は、サイズはスライド横サイズ(印刷する場合はA4横)なので、気にしなければならないのは何枚におさめるかということです。

1枚のスライドに1つの項目(ページタイトル)となると、放っておくと枚数が増えてしまいがちです。しかし、ここでもシンプルの魔法は効いてきます。なるべく意識して情報量をしぼり、印象的なスライドにすべきです。

私が以前開催したプレゼン資料の改善セミナーでは、参加者にこれまで自分で実際に作った資料を持ってきてもらったことがありました。すると、コンペで負ける、受注がとれないという人ほどスライド枚数が多い傾向があるのです。つまり情報量が多い=魅力が薄れる、という負の相関関係があるようです。

それではどの程度の枚数(情報量)にするのがいいのでしょうか?その目安となるのが、前にもお伝えした通り、スライド10枚です。

スライド10枚といっても、表紙がありますから実質9枚ということです。

パワーポイントの場合は、1枚に入れられる情報量は多くはありません。ワードの資料のような文字サイズで、びっしりとパワーポイントの資料を埋め尽くすのは得策ではありません。

あくまでパワーポイントは「読む」資料ではなく、「眺める」資料であるということを忘れないようにしましょう。

・1スライドに1テーマで

パワーポイントは「眺める」資料ですから、ひと目で何を言っているのか(=メッセージ)、それを裏づける事実やデータ(=グラフ、写真、短い体言止めの文章)が目に飛びこんでくるようにしなければなりません。

そして、1枚のスライドで伝えるべきメッセージは1つだけです。ですから、9枚の説明スライドがあれば、9つのメッセージが伝えられるということです。

サマリー(概要)、問題提起、原因、解決方法の提案、解決方法の詳細、これからの実施計画、期待できる効果で7枚。まだ2枚ほど余裕がありますね。だから、1枚で1メッセージと考えれば10枚あれば十分ということです。

読み手が社長だけなら、全体像を理解するだけでもいいかもしれませんが、担当者ともなると細かい部分をチェックせざるを得ないでしょう。社長は経営的視点から、担当者は現場的視点から判断するからです。

社長や担当者、それに異なる部門も見るという資料を作る場合もあると思います。

その場合は、なるべく前のほうに「概要」「経営的意義」、後ろにいくほど「詳細」「実際の運用」などの情報を配置すればいいでしょう。
具体的には、表紙の次に「エグゼクティブサマリー」と呼ばれる資料全体の骨子や概要を伝えるスライドを入れ、まず社長にはそこで判断いただく。ここで興味を持ってもらえなければ、次はありません。

そして、頭から10枚以内に全体の提案内容をまとめます。担当者向けの情報としては、粒度が粗いところもあると思うので、10枚以降に補足資料としてさまざまな詳細情報やデータなどをつけるというわけです。

このようにすれば、社長は前のほうだけ見て判断し、「細かいところは担当者につめておくように」と指示が出せますし、担当者は補足資料などから細かい部分について確認することができます。

最初の1枚、頭の10枚、足りなければ補足資料を巻末に入れる、と覚えておきましょう。

永田豊志
知的生産研究家/株式会社ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、株式会社ショーケース・ティービーを共同設立。創業11年目で東証一部上場へ導いた。現在は取締役副社長として、経営全般を指揮している。

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