次世代通信規格といわれる「5G」。高速・大容量のほか同時接続性などの特徴があり、医療や交通、コンテンツ業界にも大きな革新を起こすといわれている。そんな5Gで世界を一歩リードしているのが中国だ。コロナ禍においても国を挙げてインフラ整備にまい進している。
そもそも次世代通信規格「5G」とはどのようなものか?
この記事では中国における最新の5G事情について解説する。まずはそもそも5Gとはどのようなものなのか、簡単に説明しておきたい。
5Gは第5世代の移動通信システムだ。移動通信システムはアナログ方式の「1G」に始まり、デジタル方式の「2G」、世界共通のデジタル方式の「3G」、高精細動画の閲覧も可能にする「4G」と進化してきた。そして今、世界標準が5Gに移行しようとしている。
5Gの強みは3つ挙げられる。最高伝送速度が10Gbpsという「超高速」、遅延はわずか1ミリ秒程度の「超低遅延」、そして1平方キロメートル当たり100万台の接続機器数に耐え得る「同時接続性」だ。
こうした強みを持つ5Gが実用化されれば、2時間の映画を3秒でダウンロードでき、遠隔地からロボットをほぼリアルタイムで操作でき、さらには身の回りのあらゆる機器をインターネットに接続できるといわれている。
5Gは、自動車業界の革新も下支えする。「自動運転化」だ。AI(人工知能)に運転を任せる自動運転では、クラウド側との常時の高速通信が欠かせない。5G抜きでは車の自動運転化を語ることはできないのだ。
5G競争のトップに立つ中国、基地局は40万ヵ所に
そんな5Gをいち早く実用化しようと、各国がインフラ整備などを急いでいる。5Gの実用化・標準化には基地局などのインフラ整備が必須で、国を挙げての取り組みが求められる。そんな中、基地局の設置競争でも中国は世界のトップに立っているといわれている。
新型コロナウイルス問題の終わりが見えず、国によっては状況が一層悪化する中、多くの国が5Gどころではなくなりつつあるが、中国は国家主導で着々とインフラ整備を進めている。
中国の工業情報化部の7月下旬の発表によれば、中国の国有通信企業である「中国移動」(チャイナモバイル)など3社が整備した5Gの基地局数は、すでに40万ヵ所に上る。今後、基地局の建設はさらに加速するとみられており、中国の主要都市を中心に5G網が張り巡らされる日はすでにそう遠くない。
また工業情報化部の発表では、5Gネットワーク接続許可を取得しているスマートフォン機種は約200種類に上り、出荷台数も8600万台以上となっていることも明らかになった。工業情報化部の幹部は2020年内の1億台突破に自信を見せている。
前述の3社は5G機器に対して2020年内に250億ドル(約2兆6000億円)以上の投資を行うことを発表しており、出荷台数が今後も順調に増えることが確実視されている。
5Gのユースケース蓄積、他国への展開も今後加速か
中国国内でいち早く5Gを実用化させることは、中国にさまざまな恩恵をもたらす。5Gを活用したユースケースが蓄積されることで、5Gを活用したビジネスの知見が世界に先駆けて積み重ねられていき、この分野で他国の企業をリードすると見られている。
例えば医療において、遠隔医療は今後有望とされる市場の一つだが、中国の医療各社が通信会社とタッグを組んで遠隔医療技術を早期に進化させれば、国外へのサービス展開も容易になっていく。
また自動車では、すでに中国国内では5Gを活用した自動運転車の実証実験や無人搬送ロボットの導入テストが自動車メーカーやIT企業を中心に積極的に行われている。国内で確立した自動運転タクシーや無人搬送サービスをいずれ他国で展開することも十分に考えられる。
5Gがいち早く実用化されれば、スマートシティの分野でも中国は他国をリードすることができる。「同時接続性」という強みを持つ5Gは、あらゆるモノをインターネットで接続することを目指すスマートシティにおいてはコアテクノロジーとなる。
医療や自動車、スマートシティだけではなく、5Gを活用したエンターテインメントやゲームなどのコンテンツにおいても、中国のプレゼンスはかなり高いものになっていきそうだ。
投資家にとって中国市場は今よりさらに注目すべき存在に
5Gは確実に中国にさらなる成長をもたらす。関連ビジネスに取り組む各社の事業規模が拡大し、業績の向上に弾みがつけば、中国の株式市場の時価総額もさらに高まっていく。投資家にとっても中国市場はより一層注目すべき存在になっていくだろう。
5Gで他国を置き去りにすることを狙う中国の未来は明るい。国有通信各社の基地局の建設や関連ビジネスを展開する通信業種以外の各社の動きに、今後も注目したいところだ。
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