新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの増加により、賃貸需要も都心から郊外へと向かいつつあると言われている。不動産投資の現場において、既にそうした動きは出ているのだろうか。

年収2,000万を超える「新富裕層」に向けて不動産を活用した資産形成の提案を行っているプラン・ドゥのオーナーコンサルティングチームの中原氏が解説する。

中原 駿
監修者・中原 駿(ナカハラ シュン)
株式会社プラン・ドゥ。オーナーコンサルティングチーム。 一橋大学社会学部卒。2019年新卒でプラン・ドゥに入社以来、オーナー様の資産コンサルティング業務に従事。

【取得資格】
宅地建物取引士,賃貸不動産経営管理士

資産形成手段として郊外物件は有力な選択肢

不動産投資
(画像=プラン・ドゥ提供)

あくまで一人ひとりの投資家の皆様方とお話しさせていただく中で感じることではあるのですが、「最初は都心部でしか考えていなかった」という人から、「もう少し郊外まで物件の選択肢を広げたい」というお話しをいただくことが増えています。また、不動産業者の中でも23区外の2億〜5億ぐらいの物件への関心が高まっている側面があると思います。

「都心のワンルーム・家賃15万円」という物件でも、これまでは法人や外資系勤務の方々の需要がありましたが、解約されているという話も耳にするようになりました。景気動向に敏感であるが故に、今後退去や家賃の下落といったリスクが高まっている都心よりも、家賃が安定している郊外に関心を持つ人たちも出てくると思います。弊社の物件でも現在、家賃4〜5万円といった郊外の低価格帯の物件では賃料が上昇傾向にあります。

こうした動きを見ていると郊外需要全体でみると今後は高まっていくと思いますし、新富裕層の資産形成手段として郊外物件は有力な選択肢の一つになると思います。

東京が緊急事態宣言下にあった4〜6月にかけては、我々も投資家の方々と面談することもできませんでした。金融機関の方々ともお話しできない影響もあり、かなり物件の動きは悪くなっていました。一方で、テレワークになって可処分時間が増えた投資家の方からは、「逆に物件の検討をする時間が確保できるようになりました」「物件が側なので見に行きます」といったお声をいただくこともありました。

そのため、緊急事態宣言が解除された7月以降に一気に具体的な買付や融資の話しが進んでいったイメージがあります。つまり、実際の動きという意味では4、5、6月は弱かったものの投資家の方々のニーズは大きく衰えていなかったという印象です。

「駅近」という要素もクリティカルなものではなくなる?

今年の5〜6月ぐらいに、神奈川県の橋本駅から徒歩16分というファミリータイプの弊社管理物件でも、相場より高い賃料で空室が短期間で3つ埋まるということがありました。

申し込みの理由を見てみると、「リノベーションによって設備が新しくなっているから」「街の雰囲気が好きだから」「部屋の数や広さ」といったように、駅からの近さなどよりも住環境を重視する傾向が見て取れます。

こうした事例をみると、これまでの不動産投資では非常に重要な条件であった「駅近」という要素も、今後は絶対的なものではなくなっていく可能性があります。そもそも駅近が人気だった大きな理由に、通勤利便性の高さがありますが、働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大の影響で通勤の必要性が揺らぎつつあります。

長期的にみると、これまでのような「週5日出社」を義務付ける会社が減っていく可能性も高く、それに伴って「家賃が都心よりも安く、落ち着いた住環境である郊外のほうがいい」と考える人が増加していくと考えられます。

そうなった場合に、遮音性や耐久性・耐震性といったRC造のメリットは、「住みやすさ・安心」という側面で注目度が上がっていくでしょう。そうなれば、郊外の一棟RCのニーズはさらに高まっていくのではないでしょうか。