不動産投資を検討する上で考えるべきポイントの一つに「出口戦略」がある。物件の購入時点で、どの程度「出口戦略」を意識すべきなのだろうか。
年収2,000万を超える「新富裕層」に向けて不動産を活用した資産形成の提案を行っているプラン・ドゥのオーナーコンサルティングチームのシニアマネージャーを務める河合氏が解説する。
2011年新卒でプラン・ドゥに入社以来、中古RC造一棟モノの収益マンションに特化し、オーナー様の資産コンサルティングを始め、賃貸募集や、管理まで幅広く業務を経験。
【取得資格】
宅地建物取引士、上級相続支援コンサルタント、賃貸不動産経営管理士、マンション管理士、競売不動産取扱主任者など
物件選びを間違わなければ出口戦略も立てやすい
5年後、10年後の市場環境がどうなっているかはわかりませんが、私たちはしっかりとした建物で立地の良い物件であれば、価値が大幅に下がる可能性は高くないと考えています。
建物については、現在の法定耐用年数に対する考え方が今後は変わっていくと考えています。現在の法定耐用年数は47年となっており、金融機関側は「築30年の物件であれば、47-30で17年」といった計算をベースにして融資期間を決めることも多いです。
しかし、こうした法定耐用年数の考え方は変化しつつあり、それに伴って融資基準も変わっていく可能性が高いと考えられます。構造による一律の基準ではなく、管理状態や修繕状況に応じた建物価値が問われていくと考えられます。
それでも建物の経年劣化は避けられないため、土地の資産性についてもしっかりと考える必要があります。なので、建物を解体して更地にした場合の値段などについてもシミュレーションをした上でご提案することも多くなっています。
更地にした場合も「半分にした場合」「何等分化にした場合」「もう一回アパートを建てた場合」など様々なケースが想定されますし、立地についても整形地、両面道路、地域がもつブランドといった要素があります。これらの要素を総合的に判断してご提案することが多いですね。
売却のタイミングを自由に判断できることが長期投資の強み
個別の案件によるところも多いのですが、私の場合は、購入から10年程度のシミュレーションは提出するようにしています。現在の市況を基準に、10年後ぐらいキャッシュフローと含み益(純資産増価額)を検討していきます。
これは不動産投資の本質であり、見えづらい部分でもあるのですが、借り入れをして購入している物件は、返済をして毎年借入分を減らすことによって将来的な価値も増加しています。借金を完済すれば利益を生み出す物件だけが残り、家賃収入すべて利益になる。これらを踏まえて、10年くらいの返済シミュレーションをしていくと、その時の残債と土地の価格、IRR(内部収益率)がわかります。
株式投資の場合、株を保有している企業の10年後の売上や利益を知ることは困難です。それと比較して、収益物件から得られる家賃収入は大きくブレません。その上で資産性、収益性の高い物件を選ぶことができればシミュレーションの精度はさらに高くできるでしょう。
また、不動産投資には、約30年という長期間にわたってお金を借りることができるというメリットがあります。そして、完済後も物件を持ち続けるという選択肢もあります。そう考えると、購入当初から「5年後に売る」といった明確な出口戦略を定める必要がないとも考えられます。
5年後どころか数ヶ月先の経済状況すらも、正確に予測することは困難です。30年の間の好きなタイミングで売却できるにもかかわらず、わざわざ「●年後に売る」と決めてしまう理由はないでしょう。毎年「今は売り時なのか?」と検討する必要はあるかもしれませんが、最初に確定する必要はありません。
むしろ「5年後に売るつもりだったが、市況が悪いから持ち続けておこう」「まだ購入して10年経っていないけれど、今売ったほうがよさそう」「突然、お金が必要になったので売ろう」といったように売却のタイミングを自由に判断できる点が、長期投資の強みでもあります。そのため、売却のイメージを持つことや毎年の市場把握などは重要ですが、「必ず○年後に売る」というこだわりを持つ必要はないでしょう。