本記事は、美濃部哲也氏の著書『仕事の研究』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

重要視されるリスキリングとそのあり方

思考,時系列,クリエイティブ
(画像=PIXTA)

専門性を身に付けるために、今、注目されているのが「リスキリング」です。人材サービスのビズリーチ社が2021年10月~11月に経営者や人事担当者を対象に行ったリスキリング等に関する調査では、「リスキリングにすでに取り組んでいる企業」は約2割、「今後取り組む予定、もしくは、取り組むか検討中」の企業は約4割となっています。

また、同社が会員に対して2021年10月に行った調査では、「将来的に新たにスキルを身に付ける必要があると感じるか?」という問いに対して、9割以上がその必要性を感じていると回答しています。

昨今、一般的に「リスキリング」といえば、DXの専門知識を身に付けるためのスキル研修などが主流です。DX関連の知識は、これからビジネスを行っていく上で手段として必要不可欠なものですが、それだけでは不十分です。DXの知識と同時並行で、「自分らしい専門性」をスキルとして磨いていくことがとても重要です。

1990年に仕事でパソコンを使いこなす人が少なかった時代に、PCスキル習得の研修などが活況でしたが、結局のところ、PCスキルを身に付けて作業効率を上げることはできても、それだけで何かを生み出すことができなかったことと同じです。

日本でもベストセラーとなった『ライフシフト』(リンダ・グラットン著)では、徐々にずらしながら自分の得意分野を増やしていくことで、変化や新しいステージに移行する能力の大切さが説かれています。自分自身の経験を振り返って、「得意かもしれない」「好きかもしれない」ということを起点に新しいことに挑戦していくことで、結果的にスキルを積み重ね、自分の専門性を磨いていくことにつながる仕事をしていくことが重要です。

予測不可能な時代に大切なスキル

DXの知見を身に付けながら、自分の専門性を磨いていくことがとても大切なのですが、特に、ゼロベース思考で理想を想像し、それをカタチにしていく力がこれからますます求められていきます。

イノベーションの変化が激しい時代には、どのような企業でもこれまでの経験や強みだけでは生き延びることは困難です。今までの事実や成功体験をもとにしたロジカルシンキングに頼るだけでは限界があります。これまで通りの発想や思考、そして方法では、新しい未来を切り開くことはできません。

デジタルの力を最大限に活かすためにも、理想を想像してカタチにするスキル。つまり、ビジネス自体をクリエイティブにするスキルが最も重要なものの一つになります。そのための創意工夫の思考回路と行動習慣を身に付けることができれば、自分自身の生活の中で、読むこと、見ること、聞くことのすべてのインプットが何かを生み出すための材料になっていきます。

ビジネスをクリエイティブにする11のプロセス

創意工夫によってビジネスをクリエイティブにしていく11のプロセスを次に記載しました。それぞれの専門性が連携・連動しながら化学反応を起こし、ゴールイメージに近づいていくためのプロセスを言語化しています。

(1)一次情報による記憶の引き出しを頼る

一次情報の中でも「観察情報」を最も大切にしながら、記憶の引き出しを頼りに何通りもロジカルシンキングを行う。

(2)直観を頼る

何通りものロジカルシンキングの共通項やつながりから生まれる直観を頼る。

(3)世界で一番大切な、たったひとり

その直観から来る、この先の展開が明るくなるために射止めたい最も大切な「たったひとり」を決める。

(4)まだ言葉になっていない欲求、インサイト

その「たったひとり」の心の中にある、まだ言葉になっていないニーズを探り当てる。

(5)伸びしろを決める

インサイトをもとに、自社や商品・サービスの中にある伸びしろを決める。

(6)共感の連鎖が生まれるポジショニング

その伸びしろが生かされ、その「たったひとり」から絶大な共感を得て、かつ「共感の連鎖」が生まれるようなポジショニングマップ(4象限のマップ)をつくる。

(7)翻訳して意味をつくる

そのポジショニングマップに基づいて、伸びしろを核にした翻訳をする。この「翻訳」がいわゆるコンセプト。

(8)コンセプトワードにする

伸びしろを翻訳することで生まれた「意味」を「コンセプトワード」にする。

(9)誰とやるかを決める

ゴールにたどり着くことを想像しながら、役職や部門、社内外など、すべての壁を取り払い、仕事相手や役割分担を決めていく。

(10)打ち出し角度が精緻なロケットの発射台

そのコンセプトを「ロケットの発射台」という位置づけで、サービスに磨きをかけたり、象徴的なサービスの拡充をしたり、クリエイティブ表現を開発していく。

(11)たったひとりの心を射抜く

頭で理解できることを優先しないで、「直観的に心が動かされる」という感覚を優先する。

仕事の研究
美濃部哲也(みのべ・てつや)
(株)エムアンドアイ 代表取締役/XTech(株)パートナー。1993年電通入社。2000年より(株)サイバーエージェント常務取締役、(株)テイクアンドギヴ・ニーズ取締役、タビオ(株)執行役員、(株)ストライプインターナショナル執行役員、(株)ベクトル執行役員、ソウルドアウト(株)取締役CMOなどを歴任。テイクアンドギヴ・ニーズ社では売上高53億円から464億円までの急成長期を取締役営業統括本部長として牽引。タビオ社では靴下屋のリブランディングによって、出店加速と同社の顧客基盤を強化。ストライプインターナショナル社ではKOE事業を立ち上げ。ソウルドアウト社のコーポレートブランディング遂行、デジタルホールディングス社のコーポレートブランディング遂行、PR TIMES社のミッション策定など、経営と事業とブランディングに一本の筋を通すことで会社の成長に伴走。現在は、事業主側の経営視点で、アドバイザリー業務、マーケティング・ブランディングのアドバイザリー業務、ブランディング活動のプロデュースを行う。経営とマーケティングを繋ぎ、経営の情報参謀機能を果たし、ステークホルダーとの間に共感と共創関係が生まれるブランディングを創造。事業会社で、カンヌライオンズ、スパイクス・アジア、ACC、広告電通賞など、受賞多数。

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