事業承継15

いつもご覧いただきありがとうございます、行政書士のS.Kです。

今回はM&Aを利用した事業承継を進める際に重要となるデュ-デリジェンスについてご説明します。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」
オーナー企業のための事業承継vol8「後継者の適性・選定のポイント」
オーナー企業のための事業承継vol9「種類株式を使った事業承継?」
オーナー企業のための事業承継vol10「贈与税の注意点って?」
オーナー企業のための事業承継vol11「代表者の個人保証・担保提供の問題って?」
オーナー企業のための事業承継vol12「生命保険を利用した資金対策」
オーナー企業のための事業承継vol13「MBOという手法の活用」
オーナー企業のための事業承継vol14「M&Aによる第三者への事業承継」
オーナー企業のための事業承継vol15「M&A時のデュ-デリジェンスの意義とポイント」


◉デュ-デリジェンスとは


デュ-デリジェンスとは、M&A実施に先立って行なわれる買収対象事業に対する調査を言います。要は、売買目的物の「品定め」をすることをデュ-デリジェンスと言います。M&Aの売買対象となるのは、事業という抽象的なものです。そのため、一体いくらの価値があるのかは一見しては価格を決めることができません。
そこで買収対象となる事業の状態をくわしく調査することが必要となります。これがデュ-デリジェンスです。なお、デュ-デリジェンスは事業の買い手が行うのが基本です。


◉デュ-デリジェンスの対象


では、デュ-デリジェンスは具体的にどのような事項について行い、または行われるべきなのでしょうか。一言で言えば、企業価値に影響を及ぼす事項が調査の対象となるということができます。具体的に言えば、財務・法務・税務・許認可・コンプライアンス・労務・知的財産・環境などについて調査することとなります。
この調査を怠ってしまった場合には、企業価値を正しく図ることができずに交渉が難航したり、適正な価格でのM&Aが実行されないこととなってしまいます。デュ-デリジェンスの対象は、上記のように極めて多彩な事項に及び、すべて重要ですが、企業の事業承継の際に特に注意したい調査項目としてあえて2点ほど挙げてみたいと思います。

◯財務デュ-デリジェンス
企業の事業承継をするにあたっては対象事業がどの程度の財務力・収益力を持っているかの調査は不可欠です。収益力が低い場合にはM&Aを実施しないということも視野に入れる必要もあるかもしれません。また、現時点における収益力が低くても、技術力・のれん・知的財産などで事業を承継することに意義があり、将来的に収益力を生むことがある可能性もあります。その場合には現在の財務状況を前提としつつも将来の可能性を考慮して承継価格を決定するなどの考慮が必要となります。

なお、財務デュ-デリジェンスでは、主として以下のような方法によって調査を行います。
即ち、①財務諸表等財務的観点からの分析は公認会計士やコンサルタント会社②簿外債務、偶発債務の有無や発生可能性については、弁護士や行政書士③未払税務などについては税理士④その他財務・経理担当者からのヒアリングなどにより会社の財務状況を把握することとなります。
その結果、不要な遊休資産の存在や簿外債務の存在、不公平な条件での取引関係の存在などが判明した場合には可能な限り事前に処理してもらってからM&Aを実施することとなります。

なお、非上場企業の場合には、遊休資産の保持や一見して不公平な条件での取引関係が存在することがあります。これは、具体的な事情を取り除いて見た場合には不公平に見えても、経営者様個人の事情や人的なつながりやから、事情がある場合もあるので、一概に優良か不良かを判断できないケースもあります。