事業承継13

こんにちは、企業の事業承継に取り組む行政書士のS.Kです。
今回は企業の事業承継の手法として利用できるMBOと呼ばれる手法について流れを中心にご説明していきたいと思います。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」
オーナー企業のための事業承継vol8「後継者の適性・選定のポイント」
オーナー企業のための事業承継vol9「種類株式を使った事業承継?」
オーナー企業のための事業承継vol10「贈与税の注意点って?」
オーナー企業のための事業承継vol11「代表者の個人保証・担保提供の問題って?」
オーナー企業のための事業承継vol12「生命保険を利用した資金対策」


◉MBOとは。意義と事業承継での使用


MBOとは、英語の「Management Buy-out」(マネージメント・バイ・アウト)という言葉の略称です。要は、会社の株式を役員に譲渡して、会社経営権を移転させることで事業を会社の役員に引き継がせることをいいます。
なお、株式を会社の役員ではなく、従業員に移転させる方法を「employeeBuy-out」、略称としてEBOといいます。役員と従業員が共同して株式を購入する場合には、MEBOということになります。

これらMBO、EBO、EBMO(以下では、MBOに代表させて説明いたします)は本来的には、会社の不採算部門を切り離し、独立させる手法として用いられます。しかし、企業の事業承継のためにもMBOは積極的に利用することが可能です。
つまり、役員などの会社内部の者に株式を移転し、支配権を移転させることによって会社の事業は自然と承継することになるためです。

企業の事業承継は、事業を承継する後継者が①経営者の親族の場合(親族内承継)②親族以外の会社内部の者の場合(企業内承継)③会社外部の第三者である場合(M&A)の3パターンがあるとされますが、MBOを利用した事業承継は、②の企業内承継に該当することとなります。


◉事業承継でMBOを利用する意義


企業の事業承継は、日本独特の「家業」という意識から、親族内承継を検討される経営者様が多い傾向があります。
しかし、事業を承継させるのは、経営者様の親族でなければならないというルールは存在しません。ルールが存在しないだけではなく、企業内の適任の人物に事業承継をさせることは大きな意義があるということができます。即ち、事業は経営者様が起こされたり、先代様から承継するなどされてから発展を遂げ現在に至ったものです。
このような事業には、事業内で形成された技術、取引先などの人脈、雇用機会の提供など社会に残すべき大きな価値があります。家業という意識自体を否定するつもりはありませんが、現在、社会に残っている事業は「家」業という個人的なものにとどまらない社会の財産ということができます。

また、会社内で経営陣や従業員の中には、事業を率いていくリーダーシップ・統率力に優れた人物がいることも多々あります。このような有能な人物は、会社内部のことをよく知っており、人望もあるのですから、このような人に事業を任せることは、経営者様が磨いてこられた事業をさらに発展させるために適任と言える場合も十分にありえます。
さらに、MBOを実施すれば、企業の事業承継の対価を受け取ることができるため、経営者様の経営引退後の生活資金とすることも可能です。この対価は、経営者様が作ってこられた事業の正当な対価なのですから、堂々と受け取り、事業の発展を楽しみながら見ていくことは経営者様のひとつの権利ということができると言えます。

このようにして、社内の有能な人物に事業を売却した上、経営者様が引退されるというMBOは大きなメリットがある手法であると言うことができます。