日本と海外のキャリアの大きな違いですが、海外では日本の様な職種転換を伴う転勤制度はほとんどありません。また、別業界・別職種への転職活動は日本以上にシビアです(キャリアがリセットされるため、収入もリセットされてしまいます)。
その様な違いの結果、海外では日本よりも一つの職業を極める「プロフェッショナル」という考え方が一般的です。そしてジェネラリスト志向が強かった日本でも、時代の変化に合わせてプロフェッショナルとして活躍したいと考える方が増えているように感じます。

今回は、世界で活躍するプロフェッショナルの条件と題しまして、シンガポールでのプライベートバンカーの採用活動の経験を通じて思うことや、1人のプロフェッショナルとして私自身が重要だと感じている「日々のルーティーン」についてお伝えさせて頂きます。

【参考:直近のシンガポールプライベートバンカーシリーズ】

格差社会の加速と外国人&富裕層の独壇場?〜円安と資産インフレが作る日本の未来〜
富裕層を魅了するシンガポール~教育問題・言論の自由…その魅力の裏に潜む影~
大事なのはお酒とゴルフ?〜もしアジアの大富豪からホームパーティーに呼ばれたら〜
桁外れの大富豪!アジアの大物達の金銭感覚ってどんななの?
プライベートバンク×インベストメントバンク?~アジアンバンカーのダイナミズム~
アジアの富裕層ビジネスにおいて必要とされる2つの信頼関係〜PBビジネスの魅力を感じる瞬間とは?〜


◉シンガポールでの採用活動


ここ数年、この時期は毎年1、2月に出たボーナスや現状の処遇に不満のある優秀な人材を獲得すべく積極的に採用活動を行っています。シンガポールはもちろん、日本、マレーシア、インドネシア、インド、バーレーンと国籍は問いません。
日々1〜2人の候補者と直接、もしくはビデオ会議にて面接を行っています。

さて、まず現在どのような人材の採用を対象にしているかですが、シニアで実績があり年俸で1億円かかるような人材は、活躍しなかった際のリスクが大きすぎます。また実際に上手く活躍できないケースも多々あるため、最近は対象にしていません。
我々が主に採用の対象としているのは、30歳前後でここからのキャリアを真剣に考えておりハングリー精神は旺盛なバンカー達です。その様な人材は外した際のコスト(年俸で1000万円前後)もそれほど大きくはありません。それでいて、5人に1人くらい定着して貰えれば組織として充分に見合います。


◉プライベートバンカーの採用基準


さて、では何を基準に採用をしているのかですが、実は余り細かい基準は定めていません。
しかし、当たり前ですが、第一印象は極めて重要視しています。プライベートバンカーですので、余りにも品のない印象を与えられるとなかなか話を聞く気にはなれません。真っ当にお客様とコミュニケーションが取れるとは思えないのです。

また総じて、私が一番大事にしている基準は、トレーディングメンタリティーがあるかないかです。以前にも触れましたが、私が勤める銀行はいわゆる商業系の銀行ではなく、投資銀行系の銀行のため、常にマーケットを見ながらお客様と対話すること求められます。
日々のマーケットの動きを自分自身の視点で捉えつつ、トレーディングアイディアを生み出すことの繰り返しが要求されるポジションです。

参考: 商業銀行系プライベートバンクVS投資銀行系プライベートバンク~PBビジネスの魅力を感じる瞬間とは?~

残念ながら、これがしっかりとできるバンカーはそれほど多くはいません。これは非常に難しい話で、若い内から教育を受けていないとお客様に自分のアイデアをぶつけ共有していくということをできるようにはなりません。
自分でアイデアを作り出すということと、お客様にそのアイデアを実行して貰うという2つの異なるプロセスを、高いレベルで行えるようになるにはかなりの時間と努力が必要です。その上でビジネス以外の面での付き合いも行っていかなければなりません。

また、そもそも論ですが、そういった人材が簡単に採用できるということはまずありません。
その為、基本的な素養を見極めながら、後は教育によって成長する余地があるかどうか、話を聞き入れて貰える素直さがあるかどうかも重要になります。

他に本人の意欲というか人間性も見ています。
日本と違って、転職ということが当たり前な環境です。大事なキャリアアップの一環ですので、彼ら彼女らの一番の旬な時期にたくさんのサラリーを稼いで貰えるような環境を用意し、実際に我々のプラットフォームを使って飛躍をしたいと切に願っているギラギラ人達を採用したいと思っています。
どんなに間違ったとしても、「サラリーは二の次でやり甲斐が第一です」などと言おうものなら採用されるチャンスはまずありません(そのように発言をされる方はまずいらっしゃいませんが)。