◉過去の投資成果は運の産物かもしれない


ところが、同じ確率の成果であっても、「株式投資」になった途端、「確実な投資法がある」とか「投資の天才だ」という話になるわけです。勿論、全ての天才投資家がマグレだと言いたいわけではありません。社会科学的にも説得力のある投資方法を編み出し、実際に驚異的な成果を挙げた人もいる事でしょう。

しかし、第三者から見た場合、「本当の投資の天才」と「単なる強運な投資家」の区別は極めてつきにくいというのが本稿のポイントで、高い成果を出した人が実行した手法だからと言って、それに再現性があるかどうかは別の話であるわけです。つまり、その「天才」投資家が実行した投資方法には何の確実性が無くとも、たまたま成果だけが出た「偶然の産物」であるという場合は確率論的に考えても十分に有り得るのです。

と言いますのは、株主数は日本だけでも実数で700万人(日本証券業協会『平成12年度 証券貯蓄に関する全国調査』)も存在し、今はもっと増えているでしょうから、仮にそれらの投資家全員が「コインを振った結果だけで同様の投資を行う」場合でも、2分の1もの確率で、24ヶ月連続で株価の変化を的中させる人が出てくるのです。

勿論、世界にはもっと多くの投資家がいるわけですから、「天文学的な数値の投資成果を偶然出した投資家」というのも少なからず存在すると考えられるわけです。




◉安定志向ならインデックスファンド


では、様々な投資信託若しくは投資家向けの書籍などの中で「本物の天才」を見つける方法はあるでしょうか。残念ながら、現時点ではそのような方法は無いでしょう。

ある投資信託の過去の運用成績が数年に渡って好成績を挙げているとして、その投資方針や成果の理由について「尤もらしい説明」が書かれてあったとしても、それが科学的に見て正しいかどうかは分からず、その運用成績が将来に渡っても続く保証もありません。

寧ろ、多くの投資信託は長期に渡って良いパフォーマンスを維持出来ていないという事が多くの実証で明らかになっていて、ごく少ないアクティブ運用ファンド(市場平均を上回る事を目的に運用されるファンド)のみに投資資金を割り当てるのは、リスキーな行為であると言えます。(この辺りの実証研究は、ロングセラーであり続けているバートン・マルキールの『ウォール街のランダム・ウォーカー』(邦訳版:日本経済新聞出版社)で多く紹介されています。)

それに比較すれば、パッシブ運用(株式指数などに連動する事を目的とした運用)であるインデックスファンド等に投資する方が一般的に高利回りであるというのが多くの研究で共通する結論です。

産業革命以降、世界経済は過去200年以上に渡り、部分的に恐慌はあるものの成長を続けているので、経済に対して広く投資出来るインデックスファンドからは安定したリターンを得られやすいでしょう。無論、その世界経済成長も将来に渡って続く保証はありませんが、過去200年に渡る経済成長の実績についての経済成長論の発達の度合いは、一投資手法の有効性よりかは遥かに研究が進んでいて、より正しいとは言えるのではないでしょうか。

ZUUonline編集部